探偵注文所

八雲 銀次郎

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ファイルⅧ:二つの事件

#4

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 助手席から降りてきたのは、スーツを着た男性だった。
 私は、一度だけ会ったことがある。あれは、ショッピングモールでの、幼女誘拐事件があった時だ。
 あの時は、特に何か話した訳でも、声を掛けた訳でもない。
そのため、彼の事をよく知らない…。分かっている事は、日下部班である事と、『裏・ラストホームズ』である事のみ…。
 「クドーさん。お久しぶりです。」
 そう爽やかに挨拶した後、敬礼をしてくれた。悪い人ではなさそうだ…。
 「お、お久しぶりです…。日下部さん、こちらは…。」
 「大竹義信。ウチの技術開発担当。みんな持っている、腕時計型通信機や情報機器等の開発・改造している。」
 「はぁ…。」
 裏・ラストホームズは、それぞれ科学分野に対する、専門的知識を持ち合わせた、別の意味での天才集団だ。エリートと言った方が良いのかもしれない…。
 その中の一人である彼が、技術開発をメインにやっている…。
 科学の根本を担っていると言っても過言ではないのかもしれない…。
 「早いところ、やっちゃいますね。」
 大竹さんは、そう言うと、分厚い、ノート型のパソコンを取り出し、何やら打ち込み始めた。
 その直後だった。
 『スタジオ、聞こえますか?応答お願いします。』
 『映像落ちたぞ!』
 等々、報道陣の方が何やら騒がしくなってきた…。
 「何かやったんですか?」
 「通信を妨害しただけです。」
 爽やかに、そう言って退けた。
 「それって、違法…。」
 「クドーさんが思っている様な、害悪な物ではありません。
 単純に、彼等が通信で使う周波数と、同じ周波数を発する物を、起動させただけです。」
 そう言うと、6輪車の後部座席のドアを開けた。
 そこには、電子レンジの様なものが積まれてあった。
 「電子レンジを使っている時、スマホがネットに繋がりにくくなりますよね?それを利用しただけです。
 ちなみに、各局の周波数帯は、ざわっちが知ってたので、聞きだしました。」
 なるほど…。それで納得してしまって、いいのだろうか…。
 だが…。
 「まだ、メディアの人は居ますよ…。」
 私は、人差し指を立て、空を示した。
 そこには、大手テレビ局のヘリが、旋回している…。
 そのお陰で、こちらの情報は、全国に筒抜けだ…。
 流石に、あの高さの場所に、電子レンジの周波数は、流石に届かないだろう…。
 「だったら、今度は物理的に行きますか。」
 そう言うと、ラジコン用のリモコンの様なものを取り出した。
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