探偵注文所

八雲 銀次郎

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ファイルⅧ:二つの事件

#1

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 その日は、朝から蒸し暑かった。街を行きかう人々の大半は、半袖を着たり、袖口をまくり上げ、何とか暑さに適応しようとしていた。
 それでも、ギラギラと都会の街並みを、照らす太陽は、容赦はしない。
 ただそれは、自然の摂理だ。これだけは、どうすることもできない。
 しかし、この世には、もう一つだけ、どうにもできないことが、存在する。
 それが、「理不尽」と言うものだ。
 抗おうとしても、自分の力では、どうしようもできない…。
 そして今日も、その「理不尽」が、突然現れる。
 
 不審に思ったのは、表情とその裏にある、感情だった。
 どれだけ、顔や言葉で人を巧みに騙せても、己の感情まで、完全に支配しきることはできない。
 まぁ、それを隠すために、嘘を吐くのだが…。
 今回は、それを暴くため、駅を抜けたあたりから、奴を着けて行った。

 「おはよう~。」
 私が、いつもの様に事務所に入ると、既に日下部と柏木が到着していた。
 「アマキちゃん遅いよ。もう、九時過ぎたんだけど。」
 「ごめん、ちょっと寝すぎた。」
 今日は、月一にある、各班の班長が集う、報告会なるものがあった。
 報告会と言えば、硬いイメージもあるが、ただ単に、稼働率が高いメンバーや比較的多い以来の共有などを行うだけだ。
 だから、終始硬いムードで、会議をするわけではないし、時間も1時間程度だ。
 私としては、公認でサボれるから、嫌いではない…。
 「寝すぎたって…。毎回じゃない。そろそろ、モーニングコールで起こしてあげようか?」
 「それは要らない…。って、まだツッチー来てないんだから、問題ないでしょ?」
 土屋が遅れているなんて、珍しい。彼は、時間にはそれ程煩くないが、約束事で、遅刻することは、まずない。
 事務所に集合するときは、必ず早めに来て、いつものソファで、寝ているはずだ。
 だが、今日は居ない…。
 「さっきから、メール送っては居るんですが、既読すらないです…。」
 そう答えたのは、宮間だった。
 メールに関しても、返信自体遅れる事は、あっても、既読にならない事は、ほとんどない…。
 となると…。
 「どっかで寝過ごしてるんじゃ…。」
 「アマキちゃんじゃないんだから、そんなこと、ないと思うけど。」
 今の柏木の言葉は、グサッと突き刺さった。
 何も、そこまで、言う事はないだろう…。
 カウンターに腰を掛け、宮間にコーヒーを注文した時、背後からスマホの画面が、現れた。
 「とんでもない事、起きてます。」
 日下部が差し出した、スマホの画面に映し出されたのは、ニュースアプリの内容だった。
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