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ファイルⅦ:工藤刑事の報告書
#9
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彼らの言う、『ザッキー』『ザキさん』と言う人が、どういう人物なのかは、分からない。
だが、話を聞く限りでは、彼ら一人一人に何かしらの、恩がある人物なのは、確かだ…。
尊敬する人もいれば、憧れる人もいる。
そんな人物が、何故、彼らの元を去ってしまったのか…。
聞きたいのは山々だが、彼らにも守秘義務と言うものがあるのだろう…。
そればかりは、私が軽々しく踏み込んではいけない気がしてならなかった。
「でも、不思議ですね…。」
実採さんが、そう呟いた。
「不思議?」
「天木ちゃんですよ。少し前までは、彼が居なくなったショックで、かなり落ち込んでいた時期もあったのに、最近は、そんな事一切なくなったんですよね…。」
そう言えば、初めて、彼女と会った時、宮間さんに同じ様な事を言われた…。
悔やんでても、仕方がないと吹っ切ったのか、それとも、何かのきっかけがあったのか…。
読心術を使っても、そこが分からないとなると、結構深い問題がありそうだ…。
少し考え込んでいると、実採さんが、何かに気が付いた様だ。
「これ、まだ持ってたんだ…。」
そう言って、チェストの上に置かれていた、青色のヘアゴムを手に取った。
余程大事にしているのか、汚れもなく、綺麗な状態のままだ…。
「これ、して初めてザキさんと会った時に貰ったものらしいの。余程気に入ったのか、よく付けていたし、自慢していた時もあったのよ。」
天木さんにもそんな時期が、あったのかと、少し微笑ましく感じた。
しかし…。
「天木さんって、ずっとストレートのままですよね?」
そう、私が初めて会った時から、多少伸びてはいるものの、髪型自体に、大きく変化はない。
また、髪留めやヘアゴムで、纏めている様な癖も見当たらない為、長い間、ずっとそのままなのだろう…。
だから、ヘアゴムを使っている姿を想像する事しかできない…。
「そうね…。かれこれ、5年程かな…。」
「どうして、使わなくなっちゃったんですかね…。結構似合っていると思うんですけど…。」
すると、実採さんがクスッと笑った。
「工藤さん、本気で言ってます?」
少し、小ばかにしたような、その言葉は、グサッと、胸に突き刺さった。
「女の子が髪型変えるときは、彼の好みが変わった時ですよ。」
これは、私が女性として、終わっているのか、それともそんな経験ないが為の、戒めなのかは、分からないが、少し悔しい…。
「じょ、冗談の決まっているじゃないですか。あはは。」
言い訳が彼女に通じないと、思い出したのは、更にクスクスと笑われた時だった…。
だが、話を聞く限りでは、彼ら一人一人に何かしらの、恩がある人物なのは、確かだ…。
尊敬する人もいれば、憧れる人もいる。
そんな人物が、何故、彼らの元を去ってしまったのか…。
聞きたいのは山々だが、彼らにも守秘義務と言うものがあるのだろう…。
そればかりは、私が軽々しく踏み込んではいけない気がしてならなかった。
「でも、不思議ですね…。」
実採さんが、そう呟いた。
「不思議?」
「天木ちゃんですよ。少し前までは、彼が居なくなったショックで、かなり落ち込んでいた時期もあったのに、最近は、そんな事一切なくなったんですよね…。」
そう言えば、初めて、彼女と会った時、宮間さんに同じ様な事を言われた…。
悔やんでても、仕方がないと吹っ切ったのか、それとも、何かのきっかけがあったのか…。
読心術を使っても、そこが分からないとなると、結構深い問題がありそうだ…。
少し考え込んでいると、実採さんが、何かに気が付いた様だ。
「これ、まだ持ってたんだ…。」
そう言って、チェストの上に置かれていた、青色のヘアゴムを手に取った。
余程大事にしているのか、汚れもなく、綺麗な状態のままだ…。
「これ、して初めてザキさんと会った時に貰ったものらしいの。余程気に入ったのか、よく付けていたし、自慢していた時もあったのよ。」
天木さんにもそんな時期が、あったのかと、少し微笑ましく感じた。
しかし…。
「天木さんって、ずっとストレートのままですよね?」
そう、私が初めて会った時から、多少伸びてはいるものの、髪型自体に、大きく変化はない。
また、髪留めやヘアゴムで、纏めている様な癖も見当たらない為、長い間、ずっとそのままなのだろう…。
だから、ヘアゴムを使っている姿を想像する事しかできない…。
「そうね…。かれこれ、5年程かな…。」
「どうして、使わなくなっちゃったんですかね…。結構似合っていると思うんですけど…。」
すると、実採さんがクスッと笑った。
「工藤さん、本気で言ってます?」
少し、小ばかにしたような、その言葉は、グサッと、胸に突き刺さった。
「女の子が髪型変えるときは、彼の好みが変わった時ですよ。」
これは、私が女性として、終わっているのか、それともそんな経験ないが為の、戒めなのかは、分からないが、少し悔しい…。
「じょ、冗談の決まっているじゃないですか。あはは。」
言い訳が彼女に通じないと、思い出したのは、更にクスクスと笑われた時だった…。
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