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ファイルⅦ:工藤刑事の報告書
#8
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失礼だと思ったが、改めて部屋を見回した。
普通の女性の部屋。というのが、率直な感想だった。
「天木ちゃんも、普通の女の子ですよ。」
実採さんが、そう応えた。
「ま、まだ、何も言ってないじゃないですか…。」
私は、天木さんの居る寝室を横目で覗き込んだ…。どうやら、眠り込んでいる様で、向こうの方を向いていた…。
ふと、キッチンのシンクに目をやると、洗いかけの食器が数個積み重なっていた。
その奥のコンロには、鍋が掛けられており、お玉がそこから伸びている。
「天木さんって、料理できるんですね…。」
「できるも何も、ウチで宮間さんと凛さん除けば、天木ちゃんが、一番料理美味いんじゃないかな?」
驚いた…。私はてっきり、彼女の正確からして、そう言う事は、苦手な物だと勝手に思っていた。
人を見た目で判断するのは、良くないというが、これは明らかに、申し訳ない…。
「小さい頃は、お菓子作りとかやってたみたいで、その序に普通の料理も覚えたんだって。」
「お菓子作りですか…。私は量るのが面倒で…。」
「そんな感じします。」
実採さんが苦笑いしながら、そう答えた。
床を見ると、埃も溜まっておらず、まめに掃除しているのも伺える…。洗濯だって、今日出勤する前に、干してきたのだろう…。
一般的な家事はできている様だ…。私と違って…。
そして、ふと思ったことがあった。
「天木さんて、どうして、あんなに頭がよくなったんですかね…。」
実採さんに聞いたところで、答えが出るとは限らないが、少し気になり、そう訊ねた。
すると、実採さんは、洗濯物を畳む手を停め、語り始めた。
「工藤さんは、“ギフテッド”って知ってますか?」
「ギフテッド?」
「先天的に、平均よりも高い知性や論理観、正義感や博愛精神を持っている人の事を、そう言います。
天木ちゃんは、多分ですが、それに該当したんだと思います。」
高い知性や正義感…。天木さんの性格、そのままではないか…。
それが行き過ぎた所為で、天木さんは、幼少期、虐めを受けてきた…。周りから理解されないというのは、これ程までに、辛く、苦しいのだ…。
「天木ちゃんは、中学の頃、女性の私たちからすれば、耳を塞ぎたくなる様な事もされてきたみたいで、初めて私と会ったときは、人間不信なって、比ではありませんでした。」
そんな彼女を、実の両親すら突き放し、知らぬ存ぜぬと主張した。
当時、私が刑事をやっていたら、直ぐ様取り押さえに行くのに…。
「そんな天木ちゃんを、じっくりゆっくり慰めてくれたのは、ザキさんですからね。惚れない訳はないですよね…。」
最後の言葉だけは少しだけ、切なそうだった。
普通の女性の部屋。というのが、率直な感想だった。
「天木ちゃんも、普通の女の子ですよ。」
実採さんが、そう応えた。
「ま、まだ、何も言ってないじゃないですか…。」
私は、天木さんの居る寝室を横目で覗き込んだ…。どうやら、眠り込んでいる様で、向こうの方を向いていた…。
ふと、キッチンのシンクに目をやると、洗いかけの食器が数個積み重なっていた。
その奥のコンロには、鍋が掛けられており、お玉がそこから伸びている。
「天木さんって、料理できるんですね…。」
「できるも何も、ウチで宮間さんと凛さん除けば、天木ちゃんが、一番料理美味いんじゃないかな?」
驚いた…。私はてっきり、彼女の正確からして、そう言う事は、苦手な物だと勝手に思っていた。
人を見た目で判断するのは、良くないというが、これは明らかに、申し訳ない…。
「小さい頃は、お菓子作りとかやってたみたいで、その序に普通の料理も覚えたんだって。」
「お菓子作りですか…。私は量るのが面倒で…。」
「そんな感じします。」
実採さんが苦笑いしながら、そう答えた。
床を見ると、埃も溜まっておらず、まめに掃除しているのも伺える…。洗濯だって、今日出勤する前に、干してきたのだろう…。
一般的な家事はできている様だ…。私と違って…。
そして、ふと思ったことがあった。
「天木さんて、どうして、あんなに頭がよくなったんですかね…。」
実採さんに聞いたところで、答えが出るとは限らないが、少し気になり、そう訊ねた。
すると、実採さんは、洗濯物を畳む手を停め、語り始めた。
「工藤さんは、“ギフテッド”って知ってますか?」
「ギフテッド?」
「先天的に、平均よりも高い知性や論理観、正義感や博愛精神を持っている人の事を、そう言います。
天木ちゃんは、多分ですが、それに該当したんだと思います。」
高い知性や正義感…。天木さんの性格、そのままではないか…。
それが行き過ぎた所為で、天木さんは、幼少期、虐めを受けてきた…。周りから理解されないというのは、これ程までに、辛く、苦しいのだ…。
「天木ちゃんは、中学の頃、女性の私たちからすれば、耳を塞ぎたくなる様な事もされてきたみたいで、初めて私と会ったときは、人間不信なって、比ではありませんでした。」
そんな彼女を、実の両親すら突き放し、知らぬ存ぜぬと主張した。
当時、私が刑事をやっていたら、直ぐ様取り押さえに行くのに…。
「そんな天木ちゃんを、じっくりゆっくり慰めてくれたのは、ザキさんですからね。惚れない訳はないですよね…。」
最後の言葉だけは少しだけ、切なそうだった。
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