探偵注文所

八雲 銀次郎

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ファイルⅦ:工藤刑事の報告書

#6

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 このやり取り、少し慣れない…。土屋さんと違い、私の思考に容赦なく、反応してくる。
 「エンパスは体質の様な物。私の場合、ただの読心術。直観で、人の心の中を読み取っているだけです。」
 そう、申し訳なさそうに実採さんが、答えた。
 「へ、へぇ…。」
 つまり、彼女の前では、余計な事は、考えてはいけないという事か…。
ついさっきまで、夕飯のメニューを考えていたが、今は一時中断しておこう…。
 その時、実採さんが、マスク越しだったが、少し微笑んだ様に見えた。
 それより…。
 「アマキちゃん、今日はどうしますか?」
 水を飲み、少し落ち着いたのか、先ほどより、大人しくなっていた。
 「…。」
 とは言え、酔いが完全に醒めた訳ではない。目をこすり、今にも眠りそうな様子だった。
 「今日は、仕事ももう入ってないですし、帰りますか?」
 宮間さんの問いかけに、小さく頷いた。
 ただ、この状態で、この娘を一人で帰らせるわけにもいかない…。
 「カエデさんはこれから、緊急用に残ってもらわないとですし、俺はここを離れる訳にはいきませんからね…。」

 そう言いつつ、私の方をちらちらと視線を送ってくる、柏木さんと宮間さん。その視線を、もう一人、暇そうな人物に受け流した。
 「土屋君は?ダメなの?」
 私の思考を汲み取ってくれたのか、実採さんが、そう訊ねた。
 「彼は、夜から仕事ですからね…。今寝てて貰わないと…。」
 そこまで、塞がっていると、警察としても、断るわけにはいかない…。
 「じゃ、じゃぁ私が行きます…。もともと、私の責任も、少しあるので…。」
 「流石クドーさん!クドーさんなら、そう言ってくれると、信じてたよ!」
 「いや~刑事さんが一緒だと、一番安全ですからね。」
 柏木さんと、宮間さんが、まるで示し合わせた様に、二人で頷き合っていた。
 「じゃぁ、私も一緒に行きます。」
 そう声を出したのは、実採さんだった。
 確かに、実採さんに着いてきてもらうのが、一番、心強いが、彼女の前で、平然としていられるかが、問題だ…。
 「実採さん、良いんですか?」
 そう心配そうに訊ねたのは、宮間さんだった。私の時は、心配の『し』の字すらなかったのに…。
 「今日は、調子も良いですし、少しの散歩と思えば、問題ないですよ。」
 そう言うと、自分の胸を二、三度撫でた。
 「貴女が、そう言うのなら止めませんが、無理はしないで下さいね。今は、日中で車通りも多いですから…。」
 まるで、出かける子どもを注意する親の様な言葉だ…。
 裏・ラストホームズ。癖が強いのは、間違いないのかもしれない。
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