探偵注文所

八雲 銀次郎

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ファイルⅦ:工藤刑事の報告書

#5

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 「お邪魔します。宮間さん、この間の書類諸々届けに来たんですけど…どういう状況?」
 そう言った入ってきたのは、私がまだ知らない、ホームズのメンバーだった。
 容姿は、何というか、『優しいお姉さん』を具現化させた様な感じだ。
 感染症予防なのか、マスクをしており、顔の殆どは、分からないが、覗いている瞳は、とても優しそうだった…。
 「実採ちゃん、丁度良いところに…。アマキちゃん、洋酒入りチョコレートで酔っ払っちゃって…。引き離すの、手伝って下さい。」
 柏木さんが説明し、その女性に助けを求めた。私も、一刻も早く、この状態から、抜け出したいが為に、全力で頷いた。
 「あらあら…。じゃぁ、天木ちゃん、こっち、おいで。」
 実採さんが、そう言うや否や、今まで、梃子でも動かなかった、天木さんが、ヨタヨタと、彼女の方へ、歩き始めた。
 そして、実採さんの腕の中に、吸い込まれる様にして、収まった。
 「はい、天木ちゃん捕まえた~。」
 「えへへ…。」
 何故だろう…。やっと、解放されて嬉しい筈なのに、少し悔しい…。
 「助かりました…。一時はどうなるかと…。えっと、実採さん、でしたっけ…。」
 「そっか、クドーさん、実採ちゃんに会うの、初めてか…。」
 一人合点がいった様に、声を上げたのは、柏木さんだった。
 実のところ、ホームズのメンバーで一度もお会いしたことがないのは、彼女を含め、残すところ、後4人だ。
 しかも、その内の3人は、裏・ラストホームズと言われる、天木さんたち以上の能力を秘めた、メンバーだ。
 彼女が、もし、メンバーなら、その中の一角だということなのか…。
 だが、とても、そうは見えない…。相沢さんとは、雲泥の差だ…。
 「ソウちゃんたちは、癖が強いだけで、悪い人たちではないですよ?」
 それは、分かっている…。だが、実採さんの様な人物を見ると………。
 え?名前を訪ねてから、私は、一度も声を発していない…。
 それなのに、今、彼女は、私の思考に対して、返答したのだ。
 それが、余りにも自然すぎた為、気が付くのが、遅れてしまった。
 「あ、自己紹介からですよね?」
 実採さんは、そう言うと、天木さんを近くの椅子に座らせ、自己紹介を始めた。
 「アマキ班所属、専門相談員の“芥子実採”です。工藤さんの話は、竜君から、色々聞いてます。」
 握手を求められた為、思わず握り返した。それに、そもそも、根本的な、解決にはなっていない…。他人の思考を読み取る…。土屋さんの、エンパスみたいなものなのだろうか…。
 「エンパスとはちょっと違うかな?」
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