探偵注文所

八雲 銀次郎

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ファイルⅦ:工藤刑事の報告書

#2

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 机を片付け、その日私は、早めに帰宅させられた。
仕方なく、私はいつもの場所に向かった。勤務先である警視庁から、そう遠くないため、昼はよくここを利用していた。
 今回も今回とて、いつもの様に、愚痴やら話を聞いて貰うため、ここを訪ねたのだ…。
 ビルに入り、階段を降り、最初の踊り場を曲がろうとした時、危うく天木さんとぶつかりそうになった。
 何やら急いでいるらしく、慌てた様子だ。
 「あ、今から行こうと思って…。」
 「ご、ごめんクドー!急いでるから!」 
 そう言うと、彼女は去ってしまった…。あそこまで焦っている彼女は、見た事無かった…。それ程重大な仕事が入ってしまったのか…。
 私は再び階段を降り、地下二階まで来た。窓が無いため、相変わらずの薄暗さだったが、一か所だけ、ネオンが光る看板が……ない。
 「あれ?」
 いつもの扉の前に来たのだが、看板は光っていない。基本的に、『年中無休』だと聞いたのだが…。
 いや、先ほど天木さんが出てきた為、やっていない訳では無い筈だ。
 念のため、扉を開けようとした時、内側の方から、先に開けられ、思わず、小さい悲鳴を上げた。
 「あれ?クドーさん?」
 中から出てきたのは、前髪で、右目が隠れた、バーテンダー風の男。
 「宮間さん…今日って、もしかして終わっちゃいました?」
 「終わったっていうよりは、休憩。昼飯食べてないんで。クドーさんは?」
 「私もお昼まだだったので…。」
 「じゃぁご一緒しません?どうせ、何か愚痴りに来たんでしょう?」
 なんだろう…。凄く、申し訳ない…。

 ホームズが入っているビルから、少し歩くと、大手チェーンのファミレスがあり、そこに入った。
 「で?何かあったんですか?」
 お互い注文し終えたタイミングで、そう訊ねられた…。
 私は、さっきあった人事異動の件を話した。それ以上の事は、口が裂けても言えなかった…。
 「じゃぁ、クドーさん明日から捜一に、行くんですね。いいじゃないですか、本格的な刑事みたいで。」
 まぁ、刑事の花形ではあるものの、より一層忙しくなることは、間違いないのだ…。
 実際、日本では認知しているものだけでも、毎年、1000件近い殺人事件が起きている。
 それに加え、捜査一課は、強盗・誘拐と言った、凶悪犯罪を取り扱う。それも、昼夜問わず…。
 窃盗事件専門の三課とは、訳が違う…。
 そんなことを、宮間さんにぶちまけた。
 「まぁ、警察になった以上、それは仕方ないと思います。
 法律がある以上、犯罪者が居なくなることはありません。」
 「分かっては居ますが、急に異動は流石にあんまりだと思いまして…。」
 「それ程、頼りにされてるってことじゃないですか?」
 「だといいんですけどね…。」
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