探偵注文所

八雲 銀次郎

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ファイルⅦ:工藤刑事の報告書

#1

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 この世には、晴天の霹靂という言葉がある。人生、突然何があるか分からない物で、衝撃的な出来事を意味する。
 今の私も、それに値した。

 「一課に異動ですか?」
 昼、前園警部にいきなり呼び出され、のこのこ着いていったら、この話だ…。
 「悪いね、一人産休に入る人が居るらしくてね。それで、工藤君が代役に抜擢されたわけさ。」
 「ちょっと待って下さい!異動する件は、一万歩譲って、理解しましたが、何で私なんですか!」
 思わず、大声を出してしまった。
 警察とはいえ、多少の部署移動は、甚だ珍しくもないが、何故私が選ばれたのか…。
 同じ刑事部でも、殺人事件などを取り扱う一課と窃盗事件を扱う三課とは、仕事量も勤務形態も、まるで違ってくる…。
 「せっかく、最近生活スタイルを確立できつつあったのに…。」
 「今のは、『セリフ』では無かったと思うが…。
 正直言うと、「女性刑事」ってのは、ある意味貴重な存在だ。
 それを失うってのは、正直、かなりの痛手だ。そこで、勤務態度も検挙率もそれなりに優秀な君が抜擢された訳だ。」
 それは喜んで良いのか、それとも悲しむべきか…。凄い悩ましいところだ…。
 「それに、最近よくホームズの諸君とつるんでるらしいじゃないか。
 彼らは、警察でこそないものの、見過ごすことのできない程の力を持ってる。
これは、上層部の一部の連中も認めている程だ。」
 「確かに、色々手伝ってもらったり手伝わされたりはしましたがつるむって程では…。」
 
 彼らの力や能力は、申し分ない。これが同じ刑事だったらと思うと、この世から、未解決事件なんてなくなるんじゃないかと思うほどだ。
 ただ、言い換えれば、それ程、注意しなければならない人たちでもある。
 もし彼らの正義感が反転した場合、完全犯罪はおろか、迷宮入りの事件になりうる可能性があるのだ…。
 「彼らの存在は大きい…。だからこそ、手元に置いておきたいということだ。
 君にはもう少し、彼等とのパイプになってて欲しいというのが、上層部の意見でもある…。」
 「え?私も有名なんですか?」
 「当然だ。」
 何故だろう、急に胃が痛みだした…。久々の登場だというのに、まさかこんな扱いをされるとは、思っても居なかった…。
 ましてや、警察上部の人間に名前が知れ渡っているという事は、余り派手な事は出来ない…。
 いや、もっぱらするつもりなんて、ないのだが…。
 「明日から引継ぎとか色々してもらうから、今日は机の上、整理しておいて。クッキーの食べかすとか…。」
 最後の一言は、セクハラかパワハラで訴えてやろうかと思った…。
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