探偵注文所

八雲 銀次郎

文字の大きさ
上 下
107 / 281
ファイルⅥ-ⅱ:癒しの森

#2

しおりを挟む
 探偵には本来、受けた依頼に対しての調査や工作を行う調査員の他に、依頼人の問い合わせや打ち合わせを行ったり、調査結果の報告や時にはアフターフォローを行う相談員が居るらしい。
 私が電車の中で出会った、柏木楓さんや社長である宮間さんもそれに該当するが、彼らは調査員も兼任している為、最低限の事しかできない。
 そんな中、芥子さんは本業でカウンセラーもやっており、アフターフォローを主体に行う、ホームズ専門のカウンセラーでもあるらしい。
 
 そんな彼女が鼻歌交じりに用意してくれた紅茶は、香りがとても華やかで、とても心が安らいだ。
 丁度コーヒー豆を挽き終わった頃、日下部さんが、犬二頭を引き連れ、このログハウスに戻ってきた。
 犬たちは、水が入っている皿に伏せ、静かに水分補給を始めた。
 日下部さんは、奥の方にある冷蔵庫を開け、牛乳の様な白い飲料が入ったペットボトルを取り出した。
 それを三口ほど飲んだ後、芝生の庭に面した大きな窓から外に出て行った。
 犬たちは疲れているのか、それを追わず、各々寛ぎ始めた。

 すると笹井さんが、それを待っていましたと言わんばかりに、彼らを撫でまわし始めた。
 「この子たちは狼犬のジャックとリリィ。基本吠えたり噛みついたりしないから、安心して。」
 笹井さんが、そう教えてくれた。個人的には、猫派なのだが犬も嫌いではない。
 笹井さんが撫でていないもう一頭の方に、恐る恐るしゃがみ込んだ。
 すると、急に立ち上がり、尻尾を振ってきた。
 「そっちがリリィ。女の子なんだけど、女の子大好き。」
 手を差し出し、彼女の頭に手を置くと、嬉しそうに舌を出した。
 毛並みは流石に猫には敵わないが、それでも、もふもふの塊には変わりはない。
 気が付けば、何度も撫でまわしていた。

 「狼犬なんて、珍しいでしょ?」
 芥子さんのその声を聞くまで、夢中になっていた。私だけでなく、笹井さんも…。
 「か、可愛いですね!この子達!」
 はっとし、取り敢えずそう取り繕った。
 狼犬。読んで字の如く、狼と犬の雑種だ。犬にはそれ程詳しい訳では無いが、ネットや動物動画などで、何度か見たり、耳にしたりしていた。
 だから、それくらいの事は知っている。
 「アメリカ・ツンドラ・シェパードっていう狼とシェパードを混ぜた犬種。しかも、狼の血が75%流れてる、“ハイパーセント”って言われる、ちょっと特殊な種でもあるの。」
 芥子さんがそう言うと、私の隣に座り、リリィの顔や耳、爪先や尻尾の端まで満遍なく触り、毛並を梳かした。
 それが、お気に入りらしく、私が撫でた時よりも更に、嬉しそうな表情をした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

【毎日20時更新】アンメリー・オデッセイ

ユーレカ書房
ミステリー
からくり職人のドルトン氏が、何者かに殺害された。ドルトン氏の弟子のエドワードは、親方が生前大切にしていた本棚からとある本を見つける。表紙を宝石で飾り立てて中は手書きという、なにやらいわくありげなその本には、著名な作家アンソニー・ティリパットがドルトン氏とエドワードの父に宛てた中書きが記されていた。 【時と歯車の誠実な友、ウィリアム・ドルトンとアルフレッド・コーディに。 A・T】 なぜこんな本が店に置いてあったのか? 不思議に思うエドワードだったが、彼はすでにおかしな本とふたつの時計台を巡る危険な陰謀と冒険に巻き込まれていた……。 【登場人物】 エドワード・コーディ・・・・からくり職人見習い。十五歳。両親はすでに亡く、親方のドルトン氏とともに暮らしていた。ドルトン氏の死と不思議な本との関わりを探るうちに、とある陰謀の渦中に巻き込まれて町を出ることに。 ドルトン氏・・・・・・・・・エドワードの親方。優れた職人だったが、職人組合の会合に出かけた帰りに何者かによって射殺されてしまう。 マードック船長・・・・・・・商船〈アンメリー号〉の船長。町から逃げ出したエドワードを船にかくまい、船員として雇う。 アーシア・リンドローブ・・・マードック船長の親戚の少女。古書店を開くという夢を持っており、謎の本を持て余していたエドワードを助ける。 アンソニー・ティリパット・・著名な作家。エドワードが見つけた『セオとブラン・ダムのおはなし』の作者。実は、地方領主を務めてきたレイクフィールド家の元当主。故人。 クレイハー氏・・・・・・・・ティリパット氏の甥。とある目的のため、『セオとブラン・ダムのおはなし』を探している。

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

四次元残響の檻(おり)

葉羽
ミステリー
音響学の権威である変わり者の学者、阿座河燐太郎(あざかわ りんたろう)博士が、古びた洋館を改装した音響研究所の地下実験室で謎の死を遂げた。密室状態の実験室から博士の身体は消失し、物証は一切残されていない。警察は超常現象として捜査を打ち切ろうとするが、事件の報を聞きつけた神藤葉羽は、そこに論理的なトリックが隠されていると確信する。葉羽は、幼馴染の望月彩由美と共に、奇妙な音響装置が残された地下実験室を訪れる。そこで葉羽は、博士が四次元空間と共鳴現象を利用した前代未聞の殺人トリックを仕掛けた可能性に気づく。しかし、謎を解き明かそうとする葉羽と彩由美の周囲で、不可解な現象が次々と発生し、二人は見えない恐怖に追い詰められていく。四次元残響が引き起こす恐怖と、天才高校生・葉羽の推理が交錯する中、事件は想像を絶する結末へと向かっていく。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

処理中です...