95 / 281
ファイルⅥ:詐欺捜査
#10
しおりを挟む
向かった先は、倉庫だった。広さは10畳程度で、貸出用の端末や管理用の資料が保管されている。10畳とは言いつつ、物が多いため、二、三人入れば立つところが無くなる。
宮城上司はその一角にある、大きめのロッカーの様な物を一台、弄り始めた。
すると、奇麗な青色のLEDが所々から光りだし、数十基ものファンが雄叫びを上げた。
ロッカーの中を見ると、大小様々な細長い筐体が無数に差し込まれていた。更に、それを覆い隠す様に、ケーブル群が所々のポート、ハブと繋がれており、目で追うのは困難だ。
「これ、ブレードサーバですか?何だってこんなものがここに?」
サーバーには大きく分けて3種類存在し、ブレードサーバはその内の一つだ。
しかし、ウチの大部分のサービス及び、システムを維持しているのは、ラックサーバーで賄われている。そのため、このビル内に、ブレードサーバなる物があるのが、凄く珍しい。
「『最終兵器』と言えば、カッコいいんだろうけど、ただの負の遺産です。」
宮城上司が言うには、10年近く前に今あるサーバをこれに切り替えて運用する予定だったが、初期費用が思った以上に高かったことと、テスト運用で幾つか不備が見つかり、結局お蔵入りになったらしい。
「これは、その時、テストで使っていた物の一台です。不備とは言え、普通に使う分には問題ありません。」
そう言いながら、入り口近くのラテラルから、ノートパソコンを三台取り出し、サーバに接続した。
「時間がありません、笹井さんとお二方のどちらかは、手伝って下さい。」
私と同時期に入社した、七瀬という男性が残り、もう一人は宮城上司から、ある物を預かり、部屋を出て行った。
このブレードサーバとノートパソコンは、今まで電源も入っておらず、ずっと眠っていた。と言う事は、RAMスクレーパーに感染していない。
「私と七瀬君はサーバを保持しつつ、まだ感染しきっていない他サーバの発見と保護。
笹井さんは、根源を発見し駆除、お願いします。貴女ら、出来ますよね?」
指示された以上、やるしかない…。
その後、何とか発見と駆除に成功した。『AKIRA』というファイルに紛れていたのだ。それを、ちゃんと調査し、初期段階で駆除できていれば、こんな事態に見舞われなかった。
しかし、何故か、私が調査を怠ったこととして、上層部には報告されていた。宮城上司や七瀬たちも反論し、『AKIRA』ファイルの所有者だった、天木等にファイルがどう言う物か説明され、何とか疑いは解けた。
それでも、こんな所に居ては、自分は成長できないと思い、辞職した。辞表を叩きつけた直後、篠崎さんから運が悪かっただけ、と慰められたのがきっかけで、今に至る…。
他人の上に立つ者は、下に居る人の力を遠ざけてはならない。私がそこに勤めていた時に、学んだことだった。
日下部とは、一緒に仕事をすることは、殆どないが、彼は、私の知る本当の『上司』だと思っている。
当然、天木や柏木、宮間等もそうなのだが、日下部は、他人を『心配』でき、それでいて、身体を張って、守ってくれる事も多々ある。
班は違えど、彼が居れば安心できる。結局は、それで充分だと思っている。
「私は、リューさんの事、別格だとは思った事ありません。アマキさんも、カシワギさんも…。
少なくとも、私の中では、リューさんは、劣等を感じる様な必要はないと思います。」
宮城上司はその一角にある、大きめのロッカーの様な物を一台、弄り始めた。
すると、奇麗な青色のLEDが所々から光りだし、数十基ものファンが雄叫びを上げた。
ロッカーの中を見ると、大小様々な細長い筐体が無数に差し込まれていた。更に、それを覆い隠す様に、ケーブル群が所々のポート、ハブと繋がれており、目で追うのは困難だ。
「これ、ブレードサーバですか?何だってこんなものがここに?」
サーバーには大きく分けて3種類存在し、ブレードサーバはその内の一つだ。
しかし、ウチの大部分のサービス及び、システムを維持しているのは、ラックサーバーで賄われている。そのため、このビル内に、ブレードサーバなる物があるのが、凄く珍しい。
「『最終兵器』と言えば、カッコいいんだろうけど、ただの負の遺産です。」
宮城上司が言うには、10年近く前に今あるサーバをこれに切り替えて運用する予定だったが、初期費用が思った以上に高かったことと、テスト運用で幾つか不備が見つかり、結局お蔵入りになったらしい。
「これは、その時、テストで使っていた物の一台です。不備とは言え、普通に使う分には問題ありません。」
そう言いながら、入り口近くのラテラルから、ノートパソコンを三台取り出し、サーバに接続した。
「時間がありません、笹井さんとお二方のどちらかは、手伝って下さい。」
私と同時期に入社した、七瀬という男性が残り、もう一人は宮城上司から、ある物を預かり、部屋を出て行った。
このブレードサーバとノートパソコンは、今まで電源も入っておらず、ずっと眠っていた。と言う事は、RAMスクレーパーに感染していない。
「私と七瀬君はサーバを保持しつつ、まだ感染しきっていない他サーバの発見と保護。
笹井さんは、根源を発見し駆除、お願いします。貴女ら、出来ますよね?」
指示された以上、やるしかない…。
その後、何とか発見と駆除に成功した。『AKIRA』というファイルに紛れていたのだ。それを、ちゃんと調査し、初期段階で駆除できていれば、こんな事態に見舞われなかった。
しかし、何故か、私が調査を怠ったこととして、上層部には報告されていた。宮城上司や七瀬たちも反論し、『AKIRA』ファイルの所有者だった、天木等にファイルがどう言う物か説明され、何とか疑いは解けた。
それでも、こんな所に居ては、自分は成長できないと思い、辞職した。辞表を叩きつけた直後、篠崎さんから運が悪かっただけ、と慰められたのがきっかけで、今に至る…。
他人の上に立つ者は、下に居る人の力を遠ざけてはならない。私がそこに勤めていた時に、学んだことだった。
日下部とは、一緒に仕事をすることは、殆どないが、彼は、私の知る本当の『上司』だと思っている。
当然、天木や柏木、宮間等もそうなのだが、日下部は、他人を『心配』でき、それでいて、身体を張って、守ってくれる事も多々ある。
班は違えど、彼が居れば安心できる。結局は、それで充分だと思っている。
「私は、リューさんの事、別格だとは思った事ありません。アマキさんも、カシワギさんも…。
少なくとも、私の中では、リューさんは、劣等を感じる様な必要はないと思います。」
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

聖女の如く、永遠に囚われて
white love it
ミステリー
旧貴族、秦野家の令嬢だった幸子は、すでに九十五歳という年齢だったが、その外見は若き日に絶世の美女と謳われた頃と、少しも変わっていなかった。
彼女はその不老の美しさから、地元の人間達から今も魔女として恐れられながら、同時に敬われてもいた。
ある日、彼女の世話をする少年、遠山和人のもとに、同級生の島津良子が来る。
良子の実家で、不可解な事件が起こり、その真相を幸子に探ってほしいとのことだった。
実は幸子はその不老の美しさのみならず、もう一つの点で地元の人々から恐れられ、敬われていた。
━━彼女はまぎれもなく、名探偵だった。
登場人物
遠山和人…中学三年生。ミステリー小説が好き。
遠山ゆき…中学一年生。和人の妹。
島津良子…中学三年生。和人の同級生。痩せぎみの美少女。
工藤健… 中学三年生。和人の友人にして、作家志望。
伊藤一正…フリーのプログラマー。ある事件の犯人と疑われている。
島津守… 良子の父親。
島津佐奈…良子の母親。
島津孝之…良子の祖父。守の父親。
島津香菜…良子の祖母。守の母親。
進藤凛… 家を改装した喫茶店の女店主。
桂恵… 整形外科医。伊藤一正の同級生だった。
秦野幸子…絶世の美女にして名探偵。九十五歳だが、ほとんど老化しておらず、今も若い頃の美しさを保っている。
リモート刑事 笹本翔
雨垂 一滴
ミステリー
『リモート刑事 笹本翔』は、過去のトラウマと戦う一人の刑事が、リモート捜査で事件を解決していく、刑事ドラマです。
主人公の笹本翔は、かつて警察組織の中でトップクラスの捜査官でしたが、ある事件で仲間を失い、自身も重傷を負ったことで、外出恐怖症(アゴラフォビア)に陥り、現場に出ることができなくなってしまいます。
それでも、彼の卓越した分析力と冷静な判断力は衰えず、リモートで捜査指示を出しながら、次々と難事件を解決していきます。
物語の鍵を握るのは、翔の若き相棒・竹内優斗。熱血漢で行動力に満ちた優斗と、過去の傷を抱えながらも冷静に捜査を指揮する翔。二人の対照的なキャラクターが織りなすバディストーリーです。
翔は果たして過去のトラウマを克服し、再び現場に立つことができるのか?
翔と優斗が数々の難事件に挑戦します!

パラダイス・ロスト
真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。
※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。

失せ物探し・一ノ瀬至遠のカノウ性~謎解きアイテムはインスタント付喪神~
わいとえぬ
ミステリー
「君の声を聴かせて」――異能の失せ物探しが、今日も依頼人たちの謎を解く。依頼された失せ物も、本人すら意識していない隠された謎も全部、全部。
カノウコウコは焦っていた。推しの動画配信者のファングッズ購入に必要なパスワードが分からないからだ。落ち着ける場所としてお気に入りのカフェへ向かうも、そこは一ノ瀬相談事務所という場所に様変わりしていた。
カノウは、そこで失せ物探しを営む白髪の美青年・一ノ瀬至遠(いちのせ・しおん)と出会う。至遠は無機物の意識を励起し、インスタント付喪神とすることで無機物たちの声を聴く異能を持つという。カノウは半信半疑ながらも、その場でスマートフォンに至遠の異能をかけてもらいパスワードを解いてもらう。が、至遠たちは一年ほど前から付喪神たちが謎を仕掛けてくる現象に悩まされており、依頼が謎解き形式となっていた。カノウはサポートの百目鬼悠玄(どうめき・ゆうげん)すすめのもと、至遠の助手となる流れになり……?
どんでん返し、あります。
あの人って…
RINA
ミステリー
探偵助手兼恋人の私、花宮咲良。探偵兼恋人七瀬和泉とある事件を追っていた。
しかし、事態を把握するにつれ疑問が次々と上がってくる。
花宮と七瀬によるホラー&ミステリー小説!
※ エントリー作品です。普段の小説とは系統が違うものになります。
ご注意下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる