探偵注文所

八雲 銀次郎

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ファイルⅥ:詐欺捜査

#6

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 真田さんと思わしき人物が、病院に入って行くのが見て取れた。
 「これだけでは、真田ちゃんが電話をした人と、同一人物とは断定できませんね…。」
 「どん詰まりだな…。」
 奥の手がないわけではないが、この程度の案件で、それを使うのは、忍びない…。
 どうにか、詐欺が嘘だと言うのが、立証できれば、自然と動機も見えてくるはずなのだが、今はそのヒントすらない…。
 「どーしますか。」
 美歌が少々飽きた様に、声を上げた。
 「この娘の学校、行ってみるか。」
 「学校名聞き忘れましたよ…。」
 「大丈夫、覚えている人居るから。」
 そう言って、柏木に電話を掛けた。

 昨日、真田さんが、俺たちに話しかけて来た時、彼女は制服を着ていた。
 だが、生憎俺は制服の知識は皆無で、ましてや、どこにでもある様な、夏用のセーラータイプだった。
 『な、何?』
 少し焦った様な声だった。そして、確実に口をもごもごさせている…。
 更に、ハンズフリーにしていたため、美歌にも丸聞こえだった。
 「班長…何食べてるんですか?」
 『ミ、ミカちゃん⁉』
 驚いた様な声が、車内に響いた。どうやら、マカロンなる物を食べていたらしい。
 そんな事より、真田さんの学校を割り出してもらわないと…。
 『確か、『西之宮高校』だと思ったけど…。事務所の最寄り駅で降りたんだから、間違いない。』
 「了解、それと、アマキさん居ます?居たら変わって欲しい。」
 『生憎今コンビニ行ってる…。戻ってきたら、電話させた方が良い?』
 「いないなら良いです。ありがとうございます…。」
 そう言って、電話を切った。
 「『西之宮』って、結構優秀なんだね…。」
 美歌曰く、公立校ではあるが、それなりに偏差値が高く、進学率は毎年90%を超えているらしい。
 「取り敢えず行ってみるか…。」
 アクセルを踏み、病院の駐車場を後にした。
 
 「リューさんって、なんで他の班長達と話すとき、敬語なんですか?」
 信号待ちをしていた時、不意に美歌かそんな疑問を投げつけられた。
 「同じラストホームズですし、私たちと接するときみたいに、砕けた感じの方が良いと思いますけど…。」
 天木同様、この娘も意外と鋭い…。いや、こういう仕事している以上、それが一番良いのだが…。
 「あの3人は、やっぱり俺の目から見ても、別格だ。頭脳じゃ絶対に勝てない…。」
 「でも、身体能力とか、機械的技術で言えば、他の三人以上ですよね?」
 そうかもしれないが、やはり班長と名乗る以上、そう言うところは流石の俺でも、気にする。
 ただ、俺も昔、班長を決める基準を、字野崎と宮間に聞いた。
 その時は、『誰かが補える様に』と答えていた。
 結局、俺はそれに適任だったのか、不明だ。
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