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ファイルⅤ:探し物
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気が付くと、大分日が傾き、辺りが夕焼け色に染まっていた。
話が少し弾み、時間の経過を忘れていた。喋ることが、楽しいと思えたのは、何気に、今日が初めてかもしれない…。
しかし、未だに、ストーカーらしき人物は、現れていない。
幾ら低燃費とは言え、エンジンをかけっぱなしという訳にもいかない。暑さを和らげるため、深く息を吐いたその時、アパートに近付く人影があった…。
見た目は『いかにも』という様な風貌で、キャップとサングラス、マスクをしている…。
服装も、黒いワイシャツとチノパンと性別すら判別付かない…。
郵便受けを物色し始めた辺りで、ストーカー犯と確定し、取り押さえることにした。
当然、相場さんには、合図するまでは中に居る様にと、指示はした。
この時点で、犯人は女性と予想は付けていたが、万が一に備えた。
車から降りようとしたとき、スマホが鳴った。相沢からだった。
『大変な事が解った。従姉のお姉さん、『川村瑞穂』は今年に入って、引っ越している。
そして何より、半年前にその出版社を寿退社している。』
「寿…退社…。」
『結婚相手は『杉本隼』。相場さんの、元カレだ。』
その瞬間だった。イヤホンの向こうから相場さんの悲鳴が聞こえた。部屋の入り口の方に、目をやると、ドアが丁度閉まる所だった。
油断した…。郵便受けを物色する、サングラスの人物に気を取られて、そっちを見ていなかった…。
急いで、アパートに駆け寄ると、サングラスの人物が、振り返り、アパートの入り口の前に、立ちはだかった。
「どいてくれない?今急いでるんだけど。」
なるべく刺激しない様に、会話を試みたが、返事がない…。
力尽くで、押しのけようとしたが、簡単に振り払われた…。
筋肉の付き方からして、多分男性。杉本隼だろう。
耳元のイヤホンでは、相場さんと別の女性の声が、聞こえている。
「杉本隼であってる?ストーカーは二人居た。いや、正確には二人で一人だった、違う?
手紙を書いたのは、川村さんだけど、全て実行していたのは、貴方だった。」
そこまで言うと、男が震えだした。なるほど、彼には、罪悪感があったのか…。
「し、仕方なかったんだよ…。そ、そうしないと、俺が…。」
震えた声でそう呟いた後、ポケットにしまっていたであろう、果物ナイフの様な物を取り出し、こちらに向けて来た。
私も仕方なく、上着の内側に隠してある、数本のデザインナイフに手を掛ける…。
男性の握る果物ナイフに敵うかと言われれば、答えは否だ…。
デザインナイフを抜く。そんな暇さえ与えてくれず、杉本はナイフを抱え、突進してきた。何とか躱したが、私のデザインナイフは地面に落ち、刃が折れた…。
算段はあるが、極限まで追い込まれている、男を制することは、不可能…。
あろうことか、二撃目を避けた時、脚を痛めた…。完全に詰んだ…。
流石の私でも、死を覚悟したその時、男の背後から、バイクの爆音が二つ、近づいて来た…。
話が少し弾み、時間の経過を忘れていた。喋ることが、楽しいと思えたのは、何気に、今日が初めてかもしれない…。
しかし、未だに、ストーカーらしき人物は、現れていない。
幾ら低燃費とは言え、エンジンをかけっぱなしという訳にもいかない。暑さを和らげるため、深く息を吐いたその時、アパートに近付く人影があった…。
見た目は『いかにも』という様な風貌で、キャップとサングラス、マスクをしている…。
服装も、黒いワイシャツとチノパンと性別すら判別付かない…。
郵便受けを物色し始めた辺りで、ストーカー犯と確定し、取り押さえることにした。
当然、相場さんには、合図するまでは中に居る様にと、指示はした。
この時点で、犯人は女性と予想は付けていたが、万が一に備えた。
車から降りようとしたとき、スマホが鳴った。相沢からだった。
『大変な事が解った。従姉のお姉さん、『川村瑞穂』は今年に入って、引っ越している。
そして何より、半年前にその出版社を寿退社している。』
「寿…退社…。」
『結婚相手は『杉本隼』。相場さんの、元カレだ。』
その瞬間だった。イヤホンの向こうから相場さんの悲鳴が聞こえた。部屋の入り口の方に、目をやると、ドアが丁度閉まる所だった。
油断した…。郵便受けを物色する、サングラスの人物に気を取られて、そっちを見ていなかった…。
急いで、アパートに駆け寄ると、サングラスの人物が、振り返り、アパートの入り口の前に、立ちはだかった。
「どいてくれない?今急いでるんだけど。」
なるべく刺激しない様に、会話を試みたが、返事がない…。
力尽くで、押しのけようとしたが、簡単に振り払われた…。
筋肉の付き方からして、多分男性。杉本隼だろう。
耳元のイヤホンでは、相場さんと別の女性の声が、聞こえている。
「杉本隼であってる?ストーカーは二人居た。いや、正確には二人で一人だった、違う?
手紙を書いたのは、川村さんだけど、全て実行していたのは、貴方だった。」
そこまで言うと、男が震えだした。なるほど、彼には、罪悪感があったのか…。
「し、仕方なかったんだよ…。そ、そうしないと、俺が…。」
震えた声でそう呟いた後、ポケットにしまっていたであろう、果物ナイフの様な物を取り出し、こちらに向けて来た。
私も仕方なく、上着の内側に隠してある、数本のデザインナイフに手を掛ける…。
男性の握る果物ナイフに敵うかと言われれば、答えは否だ…。
デザインナイフを抜く。そんな暇さえ与えてくれず、杉本はナイフを抱え、突進してきた。何とか躱したが、私のデザインナイフは地面に落ち、刃が折れた…。
算段はあるが、極限まで追い込まれている、男を制することは、不可能…。
あろうことか、二撃目を避けた時、脚を痛めた…。完全に詰んだ…。
流石の私でも、死を覚悟したその時、男の背後から、バイクの爆音が二つ、近づいて来た…。
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