探偵注文所

八雲 銀次郎

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ファイルⅤ:探し物

#4

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 食事も終え、店を出た時、まるでタイミングを見計らったように、亮太から着信が入った。今朝から、とある女子大生にまとわりついている、ストーカーの犯人の炙り出しを行っているはず。
 「どうしたの?」
 『ちょっと、来てもらって良いですか?』
 まぁ、概ね察しは付いている為、二つ返事で了承した。天木と別れ、指定された場所に向かった。
 ここから、北に二駅分移動した辺り、電車で行っても良かったが、車で移動することにした。多分その方が、後々役に立つと思う…。
 事務所が入っているビルのすぐ脇の立体駐車場。ここの一部もウチで借りており、メンバーや依頼人の車を停める他、機器や探偵グッズなどのメンテナンスも行える様になっている。
 その大きいガレージの様なところのスペースに、私の私用車を置かせてもらっていた。
 最近流行りの低燃費のミニバンだ。小回りもそれなりに利くし、馬力もそこそこある。個人的にはすごく気に入っている。
 ガソリンが、残り3分の1と言ったところだ。まぁ、ドライブする口実ができたと思えば、ラッキーだ。

 車を走らせて数分、目的のコンビニまでやってきた。思った通り、見たことがあるオートバイが一台、停まっていた。
 吸殻入れの近くで、岡本と亮太、それと”今どき”の学生と言った、私と同い年くらいの女性が一人、屯していた。
 車から降り、彼等のもとに向かった。
 「お待たせ。ストーカーさんは誰だか判明したの?」
 「はい。ですが、送られてくるメールや手紙を見る限り、結構危ない人です…。」
 それで、一時的に匿ってほしい。それだけなら、別に事務所でも良いと思うのだが、私に来て欲しいと、連絡を入れた辺り、そう言う事なのだろう…。
 「解った。取り敢えず、ガソリン詰めながら、ドライブしてくるから、任せて。
 まぁ、リョータ君とタケ君の事だから、心配ないとは思うけど、気を付けてね。」
 そう言い残し、終始おどおどしていた女の子の手を引き、助手席に押し込んだ。
 「あたし、柏木楓。女の子同士、よろしく。」
 「あ、はい。えっと、相場奈々です。」
 自己紹介も済ませ、再度車を走らせた。

 10分程走らせ、高速に乗った。特に行く当ては無かった訳ではなく、何となくで。
 「奈々ちゃんは、今日大学は?」
 「午前中だけでした。」
 「大学って、そんなルーズなんだ…。」
 知らなかった訳ではないが、最低限の義務教育しか受けられなかった、私にとっては、衝撃的だった。
 とは言え、自分の選んだ道。それを羨む権利は、私にはない。
 
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