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ファイルⅢ:行方不明調査
#23
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七年前、天木が黒沢たちに拉致され、軟禁された事案。その時、天木に解かせるはずのパスワード。それが、失敗したから、復讐と言う意味で、『青木涼子』と言う、名前と背丈が似ている、少女を誘拐した。だが、それも失敗し、そっくりな、青木雅を誘拐してしまった。
そう思っていた。
「あなた方がやろうとしていた事は、罪の擦り付け。」
パスワードの解析。確かに天木程の頭脳があれば、簡単に解く事が出来るだろう。
だが、それは、専門的な知識や技術を持つ者にやらせても、結果は同じだろう。
天木にやらせたかった、理由は一つ。ファイルを彼女が開いた、その事実が欲しかった。
「アマキちゃんがそのファイルを開けば、自動で動く、ウイルス的なものを仕組んでたんでしょ?
で、今回は、それに含まれていたであろう、ツールを復元、そして、中身を偶然にもゲットできたの。」
流石に、時間はかかったが、ウチの美歌を舐めないで頂きたい。
元とは言え、前職はホワイトハッカー。その道の類なら、天木よりも知識があり、技術は日下部のそれを凌駕する。
一番最初に、その罠に感づいたのは、天木だった。それも、七年前既に。
だから、彼女はパソコンに触れることは、しなかった。
「青木涼子と言うのは、相手金融会社の総務部長の愛人との間にできた、隠し子。同じく、青木雅さんも。」
当然、そうなれば虐待だの、よからぬ噂も立つ。まぁ、立てたのは、彼等だろうが…。
その青木涼子を使って、実の父親に復讐と言う名の、シナリオで罪を擦り付ける事が、可能となる。
「でも、安心したよ。貴方が、天木涼子と日下部竜司を知らなくて。」
「どういうことだ?」
「貴方が捕まえてる、その娘、天木涼子じゃないよ。」
そう柏木が言い終えた後、秋山が抑えていた、ヤラの手が離れ、勢いよく、吹き飛んだ。
「切り札は、最初に切った方が負け。貴方が今まで相手していたのは、ホームズで一番強い人よ。」
「流石にフラフラではありますがね…。」
先ほどまで、そこで倒れていた、日下部の姿はなく、代わりに亮太が立っていた。
そのまま、ヤラまで近づいて行き、片手で彼の胸倉を掴み、持ち上げた。
「手負いのリューさん真似るの、美味かっただろ。」
「可笑しい…。さっきまで、完全にリュウだった…。」
「目に見えてた物が、全て真実とは限らない。」
「他人を騙すのと、変装は得意でね。」
亮太が、ヤラを投げ飛ばし、得意気に話した。
すると、コツコツと、空間内に靴音が響き渡る。先程突っ込んできた、六輪車の方からだ。
逆光で、よく見えないが、頭に包帯を巻いている。
「悪い、遅くなった。」
今度こそ、本物の日下部だった。
「ヤラ、手負いで悪いが、本気で行くぞ。」
そう呟いた瞬間、視界から、彼の姿が消えた。
いや、一瞬の内に、間合いに入り、ヤラの腹部に、蹴り込んでいた。
見ているだけでも、痛かった。その勢いのまま、ヤラは後ろに後退る。
「まずは、一本。」
「そうだ、これだ…。リュウ!十年ぶりに、潰してやる。」
そう思っていた。
「あなた方がやろうとしていた事は、罪の擦り付け。」
パスワードの解析。確かに天木程の頭脳があれば、簡単に解く事が出来るだろう。
だが、それは、専門的な知識や技術を持つ者にやらせても、結果は同じだろう。
天木にやらせたかった、理由は一つ。ファイルを彼女が開いた、その事実が欲しかった。
「アマキちゃんがそのファイルを開けば、自動で動く、ウイルス的なものを仕組んでたんでしょ?
で、今回は、それに含まれていたであろう、ツールを復元、そして、中身を偶然にもゲットできたの。」
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だから、彼女はパソコンに触れることは、しなかった。
「青木涼子と言うのは、相手金融会社の総務部長の愛人との間にできた、隠し子。同じく、青木雅さんも。」
当然、そうなれば虐待だの、よからぬ噂も立つ。まぁ、立てたのは、彼等だろうが…。
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「でも、安心したよ。貴方が、天木涼子と日下部竜司を知らなくて。」
「どういうことだ?」
「貴方が捕まえてる、その娘、天木涼子じゃないよ。」
そう柏木が言い終えた後、秋山が抑えていた、ヤラの手が離れ、勢いよく、吹き飛んだ。
「切り札は、最初に切った方が負け。貴方が今まで相手していたのは、ホームズで一番強い人よ。」
「流石にフラフラではありますがね…。」
先ほどまで、そこで倒れていた、日下部の姿はなく、代わりに亮太が立っていた。
そのまま、ヤラまで近づいて行き、片手で彼の胸倉を掴み、持ち上げた。
「手負いのリューさん真似るの、美味かっただろ。」
「可笑しい…。さっきまで、完全にリュウだった…。」
「目に見えてた物が、全て真実とは限らない。」
「他人を騙すのと、変装は得意でね。」
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すると、コツコツと、空間内に靴音が響き渡る。先程突っ込んできた、六輪車の方からだ。
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「悪い、遅くなった。」
今度こそ、本物の日下部だった。
「ヤラ、手負いで悪いが、本気で行くぞ。」
そう呟いた瞬間、視界から、彼の姿が消えた。
いや、一瞬の内に、間合いに入り、ヤラの腹部に、蹴り込んでいた。
見ているだけでも、痛かった。その勢いのまま、ヤラは後ろに後退る。
「まずは、一本。」
「そうだ、これだ…。リュウ!十年ぶりに、潰してやる。」
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