探偵注文所

八雲 銀次郎

文字の大きさ
上 下
50 / 281
ファイルⅢ:行方不明調査

#7

しおりを挟む
 柏木さんに着いたのは昼前だった。思っていたよりも、数倍良い所に住んでいた…。
 マンションの入り口は完全にオートロックで、エントランスも広い。外からだと、数えるのが嫌になるほど、階層が多い。エレベーターを見ると一番上が五十階らしい。
 「すごい所住んでますね…。」
 エレベーターが下りてくる間、思わず、呟いてしまった。
 「流石に班長となると、もらえる金額も多くてね。あたしより、アマキちゃんの方が稼いでいるけどね。」
 エレベーターのドアが開き、乗り込んだ。柏木さんは三二階のボタンを押し、ドアを閉めた。
 部屋のドアを開け中に入れてくれた。
 「お邪魔します。」
 「ただいまー。」
 すると奥の方から、聞いたことのある声が響いた。
 「もう帰ったんですか?って、クドーさんまで…。」
 ぱたぱたと忙しなく走ってきたのは、身長は、天木さんと変わらないくらいの大きさだ。
 服装は上下白いスウェットに黄色いエプロンをしている。眼鏡の奥に見える瞳は左右で色が若干違う。顔は見たことないが、声で分かった。
 「ひょっとして、ミカさんですか?」
 「あ、そうか。直接会うのは初めてですね。お察しの通りです。」
 美歌さんが丁寧にお辞儀した。工藤刑事も、釣られてお辞儀した。
 「今、あたしこんなんだから、色々手伝ってもらってるの。」
 柏木さんが左腕をちらつかせながら説明した。彼女は靴を脱ぎ、スリッパも履かず、裸足のまま、部屋の中に入って行った。一方、美歌さんはスリッパを、慣れた手つきで出してくれた。
 リビングに入ると、大きめの水槽が目に入る。水草や石がきれいに並ぶ水の中を色とりどりの小魚たちが泳ぎ回っている。
 「クドーさんも何か飲みます?」
 美歌さんキッチンから顔だけ、ひょっこりと出し、訊ねてきた。柏木さんは、持っていたコンビニ袋からコーラを取り出していた。それを両足で起用に挟み、キャップを外そうとしていた。
 「あぁダメです!私がやりますから!」
 美歌さんがそれに気付いて、止めようとしたが、時既に遅し。プシュっと、爽快感ある音とともに、キャップが開いた。
 「もう…。お行儀悪いですよ…。」
 「これくらい、やらせてよ。なんでもやってもらってちゃ、悪いから。」
 なるほど、それで裸足だったのかと、一人で納得した。
 その後、紅茶を淹れてもらい、本題に入った。柏木班の活動許可が下りた話を聞いて、美歌さんもリンさんと同じ反応をしていた。
 しかし、昨日の件を聞いたあたりで、彼女なりに予想していたらしく、パソコンや必要な機器を準備してくれていたらしい。
 すると、柏木さんのスマホに着信が入った。相手は亮太さんだった。それをハンズフリーにし、テーブルの上に置いた。
 「俺は中に入るわけには行きませんので、この状態で良いですか?」
 「別に気にしないのに。」
 「できれば、気にして欲しいです。」
 「じゃぁ、一足先にお願していい?」
 「構いません。」
 「アマキちゃんを追って。今、あの娘の居場所突き止められるの、貴方しか居ないから。」
 亮太さんは『了解』とだけ言い、電話を切った。
 「天木さんを追うって?」
 工藤刑事が不思議そうな顔で柏木さんを聞いた。今追ってるのは、日下部さん達に怪我を負わせた犯人。なのに、どうして天木さんを追うのか疑問だった。
 ゆっくりと柏木さんが説明してくれた。
 「あの人は、もうとっくに動いてるよ。しかも独断で。
 それに、リュー君がどうして、ああなったのかも、知ってると思う。だから、リョータ君にお願いした。」

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

伏線回収の夏

影山姫子
ミステリー
ある年の夏。俺は15年ぶりにT県N市にある古い屋敷を訪れた。某大学の芸術学部でクラスメイトだった岡滝利奈の招きだった。かつての同級生の不審死。消えた犯人。屋敷のアトリエにナイフで刻まれた無数のXの傷。利奈はそのなぞを、ミステリー作家であるこの俺に推理してほしいというのだ。俺、利奈、桐山優也、十文字省吾、新山亜沙美、須藤真利亜の六人は、大学時代にこの屋敷で共に芸術の創作に打ち込んだ仲間だった。グループの中に犯人はいるのか? 脳裏によみがえる青春時代の熱気、裏切り、そして別れ。懐かしくも苦い思い出をたどりながら事件の真相に近づく俺に、衝撃のラストが待ち受けていた。 《あなたはすべての伏線を回収することができますか?》

身体交換

廣瀬純一
SF
男と女の身体を交換する話

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

処理中です...