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ファイルⅠ:連続ひったくり事件
#14
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「どうやって分かった。」
太田が問う。
「わかるも何も、今回の事件自体、存在しない。」
天木さんが答える。
「つまり、今回の六件のひったくり事件は起きてない。被害者も犯人も全員グルだってこと。」
「根拠は…。」
「これよ。」
柏木さんが、何枚かの写真を取り出し、ひらひらさせた。
「この事件のないと思われていた、共通点その一。このコンビニが現場近くに必ず存在すること。」
「でも、このコンビニの防犯カメラを調べたけど、犯人に繋がる様な手がかりは、何もなかった。でも、面白い物が見つかって…。」
そう言って、柏木さんがまた、別の写真を取り出す。
「これ、指紋。」
「この指紋、どこから見つかったと思う?」
天木さんが楽しそうに、太田に問いかける。
「六件目近くにあった、コンビニの週刊雑誌の背表紙。君の指紋と一致したよ。」
「この雑誌の発売日は昨日。で、これを回収できたのが、昨日の夕方。つまり、事件当時にこれを呼んで居たことになる。」
天木さんが更に畳みかける。
「でも、可笑しくない?君の指紋が、昨日出てきてるのに、君の姿はなかった…。君、透明人間なのかい?」
「もしやと思い、防犯カメラを少し、調べさせてもらった。そしたら、ハッキングされた形跡があった。それも、事件近くのウィークリー六店舗全てで。」
土屋さんも便乗する様に説明する。
「でも、いくら腕があるとはいえ、一人じゃ犯行は無理。だから、ある可能性を探ったら、ビンゴだった。第四の被害者の女子高生、田中美紀。彼女は、一か月前まで、ウィークリーでバイトしていた。彼女なら、店内のPCにUSBを差し込むくらい、容易だよね。」
「痕跡は完全に消したはずなんだがな…。」
太田が嘆くように答えた。
「だから、何とかしたって言っただろ…。」
日下部さんが半ば呆れた様に言った。
「二つ目の共通点。」
天木さんが指を二本立てる。
「全員携帯が盗られていない。連絡を取らなきゃいけないからね…。」
そう言った時だった。工場内部の至る所から、十何人かの人影が、工藤刑事たちを取り囲む様に、湧いて出てきた。
「だいぶ賑やかだね…。」
天木さんが怯えた様に呟いた…。
「ご名答。そちらのお嬢さんは相当頭が良いみたいだが、一つ大きな間違いがある。いくら軍人君の彼でも、この数は無理じゃないかな?」
太田が少し体力が戻ったのか、立ち上がりながら言った。
「確かに、この人数は多いね…。でも、ウチのリュー君をあまり舐めないでもらいたい…。」
そう言いながら、宮間さんが日下部さんの隣に並んだ。
「それに、彼しか戦えないわけじゃないですからね。」
「ミヤマさん…。」
日下部さんが心配そうに宮間さんを見た。
「君は心配性ですね…。でも、君たちを守るのも、バトラーの仕事ですよ。」
しかし、それでも太田は余裕だった。
「彼らも、結構強いよ。軍人とまではいかないけど、中には元ボディーガードとかもいるから…。」
それだけではない、鉄パイプ等の鈍器の様な物を持っている人もちらほらいる。
「武器は卑怯じゃないかい?」
流石の土屋さんも問いただす。
「ここまで来たら、最後まで抵抗するでしょ。」
太田もやる気満々の様だ。
その時、遠くからバイクの音が響いた。工藤刑事は聞いたことがあった。どうやら、ここに近づいてくる…。
「もう一人、強力な助人が来ましたね。」
「俺一人でも十分…。」
日下部さんがまたしてもぼそっと言う。
「すぐそう言うこと言う…。まぁ、君一人に任せっぱなしじゃ、チームは成立しない。さんざん言われたじゃないですか。」
間宮さんが煙草に火をつけた。
「バトラーは人前で煙草は吸わない。」
「堅い事言うなって。」
何故か楽しそうな二人だった。
バイクは日下部さんの車の脇を抜け、工場内に突っ込んできた。バイクは工藤刑事たちの周りを一周し、取り囲んでいた人たちに距離を取らせ、日下部さんと宮間さんの前に止める。ライダーはバイクから降りたが、ヘルメットはしたままだった。
彼は、そのまま太田に近づいて行く。が、鉄パイプを持った男が、彼を目掛け、振り下ろす。
刹那、鈍い音とともに、鉄パイプ男が、倒れ込む。
「一服くらいさせろよ…。」
宮間さんも日下部さん同様、ぼそりと呟く。
透かさず、工藤刑事が「なんで今吸った…。」と脳内で突っ込みを入れた。
「リューさん、ミヤマさん、助けに来ましたよ。」
そう言い、彼がヘルメットを取った。
「タケ!」
天木さんが岡本さんの名前を叫ぶ。
太田が問う。
「わかるも何も、今回の事件自体、存在しない。」
天木さんが答える。
「つまり、今回の六件のひったくり事件は起きてない。被害者も犯人も全員グルだってこと。」
「根拠は…。」
「これよ。」
柏木さんが、何枚かの写真を取り出し、ひらひらさせた。
「この事件のないと思われていた、共通点その一。このコンビニが現場近くに必ず存在すること。」
「でも、このコンビニの防犯カメラを調べたけど、犯人に繋がる様な手がかりは、何もなかった。でも、面白い物が見つかって…。」
そう言って、柏木さんがまた、別の写真を取り出す。
「これ、指紋。」
「この指紋、どこから見つかったと思う?」
天木さんが楽しそうに、太田に問いかける。
「六件目近くにあった、コンビニの週刊雑誌の背表紙。君の指紋と一致したよ。」
「この雑誌の発売日は昨日。で、これを回収できたのが、昨日の夕方。つまり、事件当時にこれを呼んで居たことになる。」
天木さんが更に畳みかける。
「でも、可笑しくない?君の指紋が、昨日出てきてるのに、君の姿はなかった…。君、透明人間なのかい?」
「もしやと思い、防犯カメラを少し、調べさせてもらった。そしたら、ハッキングされた形跡があった。それも、事件近くのウィークリー六店舗全てで。」
土屋さんも便乗する様に説明する。
「でも、いくら腕があるとはいえ、一人じゃ犯行は無理。だから、ある可能性を探ったら、ビンゴだった。第四の被害者の女子高生、田中美紀。彼女は、一か月前まで、ウィークリーでバイトしていた。彼女なら、店内のPCにUSBを差し込むくらい、容易だよね。」
「痕跡は完全に消したはずなんだがな…。」
太田が嘆くように答えた。
「だから、何とかしたって言っただろ…。」
日下部さんが半ば呆れた様に言った。
「二つ目の共通点。」
天木さんが指を二本立てる。
「全員携帯が盗られていない。連絡を取らなきゃいけないからね…。」
そう言った時だった。工場内部の至る所から、十何人かの人影が、工藤刑事たちを取り囲む様に、湧いて出てきた。
「だいぶ賑やかだね…。」
天木さんが怯えた様に呟いた…。
「ご名答。そちらのお嬢さんは相当頭が良いみたいだが、一つ大きな間違いがある。いくら軍人君の彼でも、この数は無理じゃないかな?」
太田が少し体力が戻ったのか、立ち上がりながら言った。
「確かに、この人数は多いね…。でも、ウチのリュー君をあまり舐めないでもらいたい…。」
そう言いながら、宮間さんが日下部さんの隣に並んだ。
「それに、彼しか戦えないわけじゃないですからね。」
「ミヤマさん…。」
日下部さんが心配そうに宮間さんを見た。
「君は心配性ですね…。でも、君たちを守るのも、バトラーの仕事ですよ。」
しかし、それでも太田は余裕だった。
「彼らも、結構強いよ。軍人とまではいかないけど、中には元ボディーガードとかもいるから…。」
それだけではない、鉄パイプ等の鈍器の様な物を持っている人もちらほらいる。
「武器は卑怯じゃないかい?」
流石の土屋さんも問いただす。
「ここまで来たら、最後まで抵抗するでしょ。」
太田もやる気満々の様だ。
その時、遠くからバイクの音が響いた。工藤刑事は聞いたことがあった。どうやら、ここに近づいてくる…。
「もう一人、強力な助人が来ましたね。」
「俺一人でも十分…。」
日下部さんがまたしてもぼそっと言う。
「すぐそう言うこと言う…。まぁ、君一人に任せっぱなしじゃ、チームは成立しない。さんざん言われたじゃないですか。」
間宮さんが煙草に火をつけた。
「バトラーは人前で煙草は吸わない。」
「堅い事言うなって。」
何故か楽しそうな二人だった。
バイクは日下部さんの車の脇を抜け、工場内に突っ込んできた。バイクは工藤刑事たちの周りを一周し、取り囲んでいた人たちに距離を取らせ、日下部さんと宮間さんの前に止める。ライダーはバイクから降りたが、ヘルメットはしたままだった。
彼は、そのまま太田に近づいて行く。が、鉄パイプを持った男が、彼を目掛け、振り下ろす。
刹那、鈍い音とともに、鉄パイプ男が、倒れ込む。
「一服くらいさせろよ…。」
宮間さんも日下部さん同様、ぼそりと呟く。
透かさず、工藤刑事が「なんで今吸った…。」と脳内で突っ込みを入れた。
「リューさん、ミヤマさん、助けに来ましたよ。」
そう言い、彼がヘルメットを取った。
「タケ!」
天木さんが岡本さんの名前を叫ぶ。
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