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ファイルⅠ:連続ひったくり事件
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「一件目の被害者は五十代の女性。夜八時二十五分頃。職場から帰宅していた途中でした。場所は八王子の自宅近くの公園付近で、オートバイに乗った二人組にカバンをひったくられ、その際に転倒し、全治二週間程度のけがを負っています。カバンには現金やカードの入った財布と社員証等が入っていたみたいです。」
工藤刑事が一件目の被害状況を報告した。
「その、被害者の職場ってどういうところ?」
天木さんが質問する。
「えっと、自宅付近のスーパー”エイト”です。」
「これか?」
日下部さんが呟いた後、前にある七十インチのモニターにそのスーパーの写真が映し出された。
「それです。」
「リュー印刷。」
「了解。」
「カエは何かあるか?」
土屋さんが柏木さんに振った。
「んー、このバイクの車種わかったりする?」
「車種までは分かりませんでしたが、被害女性がナンバーを記憶してました。」
工藤刑事が、ナンバーのメモを土屋さんに渡した。
「リュー、特定できそうか?」
「やってみる。」
「じゃ、頼む。」
そう言い、土屋さんが日下部さんにメモを渡した。
「ほかに聞きたい事あるか、アマキ。」
「今のところない。」
「じゃあ二件目の説明頼む。」
「二件目の現場は錦糸町駅付近で起きました。時間は早朝の四時五十分頃。被害者は三十代の男性で、当時は日課のランニングをしていたとのことです。ひったくられたのはランニングポーチという腰につけるタイプの物です。
中身は、小銭入れと免許書、スポーツ飲料入りのペットボトルだそうです。
犯行方法は休憩のため、スピードを緩めたところ、背後から忍び寄り、ロックを外してひったくり、近くに止めてあった車で駅とは真逆の方へ逃走。近くのコンビニ防犯カメラに、犯人の物と思わしき車が移っていました。」
高橋という男性刑事が二件目の捜査状況を報告した。
「これか…。」
土屋さんが写真を見て、眉を顰める。無理もない、不鮮明なうえ、半分近く見切れている。
「車種は国産メーカのワゴン車。しかもこれ、去年出たばかりの新型だね。」
ミヤマさんが柏木さんにコーラを出しながら述べた。
「これだけで分かるんですか?」
工藤刑事が質問した。
「ミヤマはこういうの強いからな!」
柏木さんが誇らしげに答える。
「ちょっとだけですよ。」
ミヤマさんが指で摘まむような仕草をした。
「リュー、調べてくれ。」
土屋さんが日下部さんに指示する。
「もうやってます。」
日下部さんが、キーボードを叩く。
「ちなみに、被害男性の職業は都内のIT企業の会社員です。」
高橋刑事が情報を追加する。
「これ、おかしくない?」
そう述べたのは、天木さんだった。
「普通、ひったくりってのは、こんなのんびりしないよ。ましてや、こんな計画的なひったくりはなかなか聞かないね。」
そう言い、資料をぺらぺらとめくる。
「それもそうだけど、共通点がないって言ってたよね?」
柏木さんが、皆に問う。
「見つけたよ、あたし。共通点。聞き込みとか捜査するのに夢中で、回り見てないでしょ。」
天木さんも不思議そうな顔をする。それもお構いなしに、柏木さんが何枚か写真を貼っていく。
大手コンビニチェーン・「ウィークリー」の写真だ。
「さっき、それぞれの現場行って撮ってきた。現場の近所には必ずこのコンビニがある。しかも、百メートル以内に。」
七十インチのモニターに映ったマップに、指で印をつけた。どうやらタッチ式らしい。
「なるほど、そして俺も見つけた。ここだ。」
土屋さんも写真を指さしながら言った。
「被害者全員携帯は無事だ。」
「確かに、これだけ被害が出てるのに、全部不自然なくらいに無事だ。」
他の刑事も賛同する。
「クドー!カエ!私も現場行きたい!」
天木さんがまたしても無邪気な笑顔で二人に懇願する。
「え?今からですか?」
工藤刑事が思わず聞き返す。
「うん!私が運転するからいいでしょ?」
「あたしは、オッケーよ!」
柏木さんはグッと親指を立てる。
「頼むよ、クドー…。」
中学生の、いや、下手したら小学生でも通じるような容姿から、そんなに切なそうに懇願されたら、流石に断れない…。
「…わかりました…。行きましょう。」
「やった!じゃあ、早速!」
そういうと、自分のカバンを掴んで、駆け寄ってきた。
「三人、気を付けて。」
日下部さんが小さくひらひらと手を振る。
「アマキ、何かわかったら逐一報告よろしく。」
「わかってるって、ツッチーたちもね。」
天木さんが土屋さんに手を振りながら答えた。
「じゃぁ行ってくる。」
そう言い残し三人は店を出て行った。
工藤刑事が一件目の被害状況を報告した。
「その、被害者の職場ってどういうところ?」
天木さんが質問する。
「えっと、自宅付近のスーパー”エイト”です。」
「これか?」
日下部さんが呟いた後、前にある七十インチのモニターにそのスーパーの写真が映し出された。
「それです。」
「リュー印刷。」
「了解。」
「カエは何かあるか?」
土屋さんが柏木さんに振った。
「んー、このバイクの車種わかったりする?」
「車種までは分かりませんでしたが、被害女性がナンバーを記憶してました。」
工藤刑事が、ナンバーのメモを土屋さんに渡した。
「リュー、特定できそうか?」
「やってみる。」
「じゃ、頼む。」
そう言い、土屋さんが日下部さんにメモを渡した。
「ほかに聞きたい事あるか、アマキ。」
「今のところない。」
「じゃあ二件目の説明頼む。」
「二件目の現場は錦糸町駅付近で起きました。時間は早朝の四時五十分頃。被害者は三十代の男性で、当時は日課のランニングをしていたとのことです。ひったくられたのはランニングポーチという腰につけるタイプの物です。
中身は、小銭入れと免許書、スポーツ飲料入りのペットボトルだそうです。
犯行方法は休憩のため、スピードを緩めたところ、背後から忍び寄り、ロックを外してひったくり、近くに止めてあった車で駅とは真逆の方へ逃走。近くのコンビニ防犯カメラに、犯人の物と思わしき車が移っていました。」
高橋という男性刑事が二件目の捜査状況を報告した。
「これか…。」
土屋さんが写真を見て、眉を顰める。無理もない、不鮮明なうえ、半分近く見切れている。
「車種は国産メーカのワゴン車。しかもこれ、去年出たばかりの新型だね。」
ミヤマさんが柏木さんにコーラを出しながら述べた。
「これだけで分かるんですか?」
工藤刑事が質問した。
「ミヤマはこういうの強いからな!」
柏木さんが誇らしげに答える。
「ちょっとだけですよ。」
ミヤマさんが指で摘まむような仕草をした。
「リュー、調べてくれ。」
土屋さんが日下部さんに指示する。
「もうやってます。」
日下部さんが、キーボードを叩く。
「ちなみに、被害男性の職業は都内のIT企業の会社員です。」
高橋刑事が情報を追加する。
「これ、おかしくない?」
そう述べたのは、天木さんだった。
「普通、ひったくりってのは、こんなのんびりしないよ。ましてや、こんな計画的なひったくりはなかなか聞かないね。」
そう言い、資料をぺらぺらとめくる。
「それもそうだけど、共通点がないって言ってたよね?」
柏木さんが、皆に問う。
「見つけたよ、あたし。共通点。聞き込みとか捜査するのに夢中で、回り見てないでしょ。」
天木さんも不思議そうな顔をする。それもお構いなしに、柏木さんが何枚か写真を貼っていく。
大手コンビニチェーン・「ウィークリー」の写真だ。
「さっき、それぞれの現場行って撮ってきた。現場の近所には必ずこのコンビニがある。しかも、百メートル以内に。」
七十インチのモニターに映ったマップに、指で印をつけた。どうやらタッチ式らしい。
「なるほど、そして俺も見つけた。ここだ。」
土屋さんも写真を指さしながら言った。
「被害者全員携帯は無事だ。」
「確かに、これだけ被害が出てるのに、全部不自然なくらいに無事だ。」
他の刑事も賛同する。
「クドー!カエ!私も現場行きたい!」
天木さんがまたしても無邪気な笑顔で二人に懇願する。
「え?今からですか?」
工藤刑事が思わず聞き返す。
「うん!私が運転するからいいでしょ?」
「あたしは、オッケーよ!」
柏木さんはグッと親指を立てる。
「頼むよ、クドー…。」
中学生の、いや、下手したら小学生でも通じるような容姿から、そんなに切なそうに懇願されたら、流石に断れない…。
「…わかりました…。行きましょう。」
「やった!じゃあ、早速!」
そういうと、自分のカバンを掴んで、駆け寄ってきた。
「三人、気を付けて。」
日下部さんが小さくひらひらと手を振る。
「アマキ、何かわかったら逐一報告よろしく。」
「わかってるって、ツッチーたちもね。」
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