40 / 72
廃洋館
#20
しおりを挟む
一体、何時からそこに置かれていたのかは、不明だが、腐敗している見た目でもなければ、臭いもしない。
むしろ、艶があり、最近の物と言っても、誰も、疑いようがないほど、綺麗な髪だ…。
「俺は、そう言うオカルト系には、余り詳しくないが、何かの儀式に使われていたのは、確かなようだな…。」
寺井さんが恐る恐る、紫の布ごと、持ち上げた。
長さや質感からして、先ず、女性の物で、間違いなさそうだ…。女性の私でも、ずっと見ていると、嫉妬してしまいそうな程、綺麗な、髪だ。
「一体、誰の髪なんでしょう…。」
大谷が、そう呟いた…。その時、本を、棚の上に広げて置いた。そのページに描かれていた、もう一つの模様に、見覚えがあった。
「こ、これ、私、見覚えがあります!」
私が指で示した模様は、二等辺三角形の底辺が、無い、矢印の様な、山折り線が、三つ縦に描かれたものだった。
「これ、一階の階段下の、倉庫の中で見ました!」
「本当か!」
寺井さんが、いち早く反応した。
「確か、あそこには、血の付いた、ナイフが、落ちてましたね…。」
「もう一度、行ってみるか。」
私たちは、本を持ち出し、書斎を後にした。そして、階段を降り、もう一度、階段下の倉庫の扉の前に着いた。
「開けるぞ。」
寺井さんの声を、合図に、扉を開けた。中は、先ほどと変わらず、掃除用具などが、置かれていた。だが、唯一、変っていたことがあった。
「このバケツ、さっきは、床に置かれていましたよね?」
先ほど、ナイフが出てきたのは、床に置かれていた、ブリキのバケツの陰からだった。だが、そのバケツは、なぜか、物をひっかける為に、もうけられたであろう、釘にぶら下がっていた。
そして、ナイフも無くなっていた…。
「妙だな…。俺たち以外には、誰も…。」
寺井さんが、言葉を詰まらせた。私も、その瞬間、気が付いてしまった…。
私は、慌てて、スマホを取り出した。画面に映し出された、時刻と日付には、特別な変化は無いが、“圏外”の表記が、上の方に、映し出されていた。
ここは、幾ら森の中と言えど、スマホの電波が、届かない訳では無い。現に、ロケが始まる直前、私は、スマホで、ゲームをしていたから。建物内部に入ったからと言えど、電波が急に、圏外になる事なんて、考えられない…。
「どうして…。」
大谷が、そう呟いた。
それに応える様に、寺井さんが、口を開いた。
「40年前に、スマホの電波なんて、存在するか?」
「え?」
「俺たちは、この館に入った瞬間に、事件があった、日に送り込まれたんじゃないか?」
むしろ、艶があり、最近の物と言っても、誰も、疑いようがないほど、綺麗な髪だ…。
「俺は、そう言うオカルト系には、余り詳しくないが、何かの儀式に使われていたのは、確かなようだな…。」
寺井さんが恐る恐る、紫の布ごと、持ち上げた。
長さや質感からして、先ず、女性の物で、間違いなさそうだ…。女性の私でも、ずっと見ていると、嫉妬してしまいそうな程、綺麗な、髪だ。
「一体、誰の髪なんでしょう…。」
大谷が、そう呟いた…。その時、本を、棚の上に広げて置いた。そのページに描かれていた、もう一つの模様に、見覚えがあった。
「こ、これ、私、見覚えがあります!」
私が指で示した模様は、二等辺三角形の底辺が、無い、矢印の様な、山折り線が、三つ縦に描かれたものだった。
「これ、一階の階段下の、倉庫の中で見ました!」
「本当か!」
寺井さんが、いち早く反応した。
「確か、あそこには、血の付いた、ナイフが、落ちてましたね…。」
「もう一度、行ってみるか。」
私たちは、本を持ち出し、書斎を後にした。そして、階段を降り、もう一度、階段下の倉庫の扉の前に着いた。
「開けるぞ。」
寺井さんの声を、合図に、扉を開けた。中は、先ほどと変わらず、掃除用具などが、置かれていた。だが、唯一、変っていたことがあった。
「このバケツ、さっきは、床に置かれていましたよね?」
先ほど、ナイフが出てきたのは、床に置かれていた、ブリキのバケツの陰からだった。だが、そのバケツは、なぜか、物をひっかける為に、もうけられたであろう、釘にぶら下がっていた。
そして、ナイフも無くなっていた…。
「妙だな…。俺たち以外には、誰も…。」
寺井さんが、言葉を詰まらせた。私も、その瞬間、気が付いてしまった…。
私は、慌てて、スマホを取り出した。画面に映し出された、時刻と日付には、特別な変化は無いが、“圏外”の表記が、上の方に、映し出されていた。
ここは、幾ら森の中と言えど、スマホの電波が、届かない訳では無い。現に、ロケが始まる直前、私は、スマホで、ゲームをしていたから。建物内部に入ったからと言えど、電波が急に、圏外になる事なんて、考えられない…。
「どうして…。」
大谷が、そう呟いた。
それに応える様に、寺井さんが、口を開いた。
「40年前に、スマホの電波なんて、存在するか?」
「え?」
「俺たちは、この館に入った瞬間に、事件があった、日に送り込まれたんじゃないか?」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
AstiMaitrise
椎奈ゆい
ホラー
少女が立ち向かうのは呪いか、大衆か、支配者か______
”学校の西門を通った者は祟りに遭う”
20年前の事件をきっかけに始まった祟りの噂。壇ノ浦学園では西門を通るのを固く禁じる”掟”の元、生徒会が厳しく取り締まっていた。
そんな中、転校生の平等院霊否は偶然にも掟を破ってしまう。
祟りの真相と学園の謎を解き明かすべく、霊否たちの戦いが始まる———!
#彼女を探して・・・
杉 孝子
ホラー
佳苗はある日、SNSで不気味なハッシュタグ『#彼女を探して』という投稿を偶然見かける。それは、特定の人物を探していると思われたが、少し不気味な雰囲気を醸し出していた。日が経つにつれて、そのタグの投稿が急増しSNS上では都市伝説の話も出始めていた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる