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調査ファイル1:素行調査
#4
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秋山が電話に出たのは7コール目だった。
『もしもし、秋山です。』
「京子です、頼みたいことって何?」
『あぁ、これから会って話したいんだが、今どこに居る?』
「どこって、事務所だけど。」
『事務所か…。アミ以外、誰か居るのか?』
「ミヤマさんとリューさんとリョータ君が居るけど…。」
『そのメンバーなら大丈夫か…。今からそっち行くから、他の3人にも待ってもらってくれ。』
そういうと、電話は一方的に切られた…。
「アキ、なんて言ってました?」
後ろでパソコンを弄っていたはずの日下部が、いつの間にか私の隣に座り、アイスコーヒーを飲んでいた。
「なんか、今から事務所に来るから、みんなにも待っていてくれって。」
「だとすると、面倒なこと押し付けられそうだな…。」
日下部の自宅のあるマンションを張って30分ほど経った頃、ようやっと、対象である日下部竜司が出てきた。いつもと変わらない服装ではあるが、背中にリュックを背負っている。
日下部とは、長い付き合いではあるが、奴はリュックやバッグを身に着けるような人ではない。理由としては、手が塞がったり、動きにくくなるから…。だから、持ち物は財布や携帯と車のカギ程度…。どれも服のポケットに収まるものだ。
だから、リュックを背負っているところなど、見たことない…。
その違和感に、ミカも気が付いたようだ。
「今、リューさん出てきました、これから追跡を開始します。珍しくリュック背負ってます。」
『了解、そっちは任せる。』
「了解です。行きますよ、タケ。」
「…了解。」
俺と美歌は、日下部の50メートルほど離れて尾行を開始した。
今日も昨日と変わらず、暑い…。追跡調査は慣れているとはいえ、暑い日の外行動は歩いていても、体力を消耗する…。この俺ですら、音を上げそうなのに、ミカは真剣な面持ちで、行動していた。俺はインカム用のマイクの電源を切った。
「なんだって、今回はそんなに真剣なんですか?」
「…黙って下さい。リューさんに気付かれますよ…。」
「少しくらい駄弁っても問題ないよ。むしろ二人組なのに何も話さないで歩くってのも、逆に不自然だ。」
観念したのか、彼女もマイクの電源を切った。
「……別に…ただ、気になって…。」
「気になるって、あの2人の関係が?」
「…まぁ…。」
「なるほどね…。俺から聞いておいてあれだけど、あまり深く聞かないことにするよ。」
「ありがとう。そうしてもらえると、調査に集中できるから。」
その時だった。日下部が左手の人差し指を2回、反時計回りに回した。
「悪い、ミカ。急に腹痛が…。ちょっとの間追っててもらっていいか…。」
「良いけど、先に行っといてよ…。」
「悪い、直ぐ追いつくから…。」
俺は、美歌と別れた。
『もしもし、秋山です。』
「京子です、頼みたいことって何?」
『あぁ、これから会って話したいんだが、今どこに居る?』
「どこって、事務所だけど。」
『事務所か…。アミ以外、誰か居るのか?』
「ミヤマさんとリューさんとリョータ君が居るけど…。」
『そのメンバーなら大丈夫か…。今からそっち行くから、他の3人にも待ってもらってくれ。』
そういうと、電話は一方的に切られた…。
「アキ、なんて言ってました?」
後ろでパソコンを弄っていたはずの日下部が、いつの間にか私の隣に座り、アイスコーヒーを飲んでいた。
「なんか、今から事務所に来るから、みんなにも待っていてくれって。」
「だとすると、面倒なこと押し付けられそうだな…。」
日下部の自宅のあるマンションを張って30分ほど経った頃、ようやっと、対象である日下部竜司が出てきた。いつもと変わらない服装ではあるが、背中にリュックを背負っている。
日下部とは、長い付き合いではあるが、奴はリュックやバッグを身に着けるような人ではない。理由としては、手が塞がったり、動きにくくなるから…。だから、持ち物は財布や携帯と車のカギ程度…。どれも服のポケットに収まるものだ。
だから、リュックを背負っているところなど、見たことない…。
その違和感に、ミカも気が付いたようだ。
「今、リューさん出てきました、これから追跡を開始します。珍しくリュック背負ってます。」
『了解、そっちは任せる。』
「了解です。行きますよ、タケ。」
「…了解。」
俺と美歌は、日下部の50メートルほど離れて尾行を開始した。
今日も昨日と変わらず、暑い…。追跡調査は慣れているとはいえ、暑い日の外行動は歩いていても、体力を消耗する…。この俺ですら、音を上げそうなのに、ミカは真剣な面持ちで、行動していた。俺はインカム用のマイクの電源を切った。
「なんだって、今回はそんなに真剣なんですか?」
「…黙って下さい。リューさんに気付かれますよ…。」
「少しくらい駄弁っても問題ないよ。むしろ二人組なのに何も話さないで歩くってのも、逆に不自然だ。」
観念したのか、彼女もマイクの電源を切った。
「……別に…ただ、気になって…。」
「気になるって、あの2人の関係が?」
「…まぁ…。」
「なるほどね…。俺から聞いておいてあれだけど、あまり深く聞かないことにするよ。」
「ありがとう。そうしてもらえると、調査に集中できるから。」
その時だった。日下部が左手の人差し指を2回、反時計回りに回した。
「悪い、ミカ。急に腹痛が…。ちょっとの間追っててもらっていいか…。」
「良いけど、先に行っといてよ…。」
「悪い、直ぐ追いつくから…。」
俺は、美歌と別れた。
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