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番外編
【IF】クリストフルート 6-b-2
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俺は、心の底からの絶叫で目を覚ました。
嫌な夢を見た。全身にびっしょりと汗をかいていた俺は、今見た悪夢を振り払うべく自分が寝ていたベッドの左側を手探りで探った。
いつもは、側にある柔らかな温もりはそこにはなかった。
隣りにあるはずの温もりがないことに気がついた俺は、慌ててベッドから飛び起きた。
寝室に、探し求める人の姿がないことから部屋を出て、家中を探したが俺の探し求める人は何処にもいなかった。
そこで俺は全身から血が引くのを感じた。
まさか、全てが夢だったのかと。
全て俺の妄想だったのかと。
あまりのショックに俺は膝をついて呆然としていた。
すると、玄関の扉が開き誰かが家に入ってくる気配とにぎやかな話し声が聞こえてきた。
リビングで呆然としていた俺は、こちらに向かってくる話し声と足音に顔を上げた。
すると、丁度リビングに入ってきた彼女と目が合い、俺はとっさに彼女に抱きついていた。
「シーナ!!何処に行ってたんだ!!」
突然抱きついてきた俺に驚きつつも、優しく背中を撫でながら彼女は優しい声音で俺に言った。
「あらあら?どうしたの?」
「嫌な夢を見た……。起きたら君がいなくて……」
「嫌な夢?」
「君と初めてあった日の出来事……」
「くすくす。あの日のことね。貴方ったら、私と兄さんが話しているところを見て、兄さんにヤキモチ焼いて拗ねちゃったのよね~。ふふふ。そういうところ、とっても可愛くて好きよ?」
昔のことを思い出したのか、シーナは俺の腕の中でクスクスと楽しそうに笑いだしていた。
ムッとしつつも、シーナが腕の中で笑っている姿が可愛くて仕方なかった俺は、思わず彼女の唇を奪っていた。
触れるだけの優しいキスを彼女にすると、シーナは慌てたように身を捩ってキスを拒んだ。
俺はキスを拒まれるとは思っていなかったから、ムキになって嫌がるシーナにキスを繰り返していると切れ切れにシーナが言った言葉で我に返った。
「だ……、だめ……。みっ、みてる……か、ら!!」
我に返った俺は、じっと見つめてくる複数の視線に冷や汗が止まらなかった。
しかし、そんな俺の心情を知ってか知らずか……、いや、知っていて面白がっているツワモノもいたが……。
「あ~、またママにチュッチュしてる~~」
「駄目よ。あんな破廉恥なケダモノを見たら、あなたもケダモノになっちゃうわ。ここは、騎士団に通報すべき場面よ」
「あは!そうしたら父さんがものすごい鬼のような顔で駆けつけてきて、叔父さん牢屋行き決定だね。あは!」
「えっ!!パパ捕まっちゃうの?牢屋行なの?どうしようお姉ちゃん!!」
「大丈夫よ。駄目な父親がいなくなった分、私がママとあなたを守るから」
「そっか、お姉ちゃんがいるからパパは牢屋でも大丈夫だね!!」
「あは!叔父さんがいなくても、僕がシーナさんと君たち姉弟を守るから安心して。と、言うことだからシーナさん、あんな駄目な男とはすぐに別れて僕と結婚して下さい」
「あんたが新しいパパなんて絶対に駄目。許さないから」
「ふ~ん。どうして?あは!もしかして僕のこと好きなの?」
「ばっ!!ばっかじゃないの!!死ね!!今すぐ死ね!!!」
「あは!照れ隠し?かっわいい~」
「あれ?お姉ちゃんは、お兄ちゃんのこと大好きなんじゃないの?」
「~~~~~!!!」
最初は俺の話だったはずが、いつの間にか子供たちのじゃれ合いに変わっていた。
いつものじゃれ合いだったので、子供たちを放置していまだに腕の中で俺から離れようとするシーナに小声で言った。
「悪い……。ついお前が可愛くて」
俺がそう言うと、可愛らしく頬を膨らませた表情でシーナは上目遣いに俺に言ったんだ。
「もう、いつもそうやって……」
「可愛いシーナが悪いんだよ。それに、俺に黙って出かけて心配するだろ?」
「だって、クリフ疲れてたみたいだから」
「疲れてたのは事実だけど、シーナと一緒にいたほうが早く疲れが取れるから大丈夫」
「ふふふ。クリフはいつもそうだね」
「だって、初めてあった日から俺の幸せはシーナと過ごすことだからな」
そう、あの日シーナと出会った日から、俺は必死に、それはもう死にものぐるいでシエテの妨害を掻い潜りシーナと恋人同士になり、やっとの思いで結婚したのだ。
いまだに、シエテは邪魔しに来るけどそれでも前よりはだいぶマシで、今はシーナと二人の子供たちと幸せに暮らしている。
いくつもの選択肢の中から俺自身が掴み取った未来は、最高で幸せ過ぎる。
だけど、今が最高なんかじゃない。シーナと一緒に過ごす未来は更に幸せで溢れていると俺は確信することが出来るんだ。
だって、俺の嫁は世界一可愛いからな!!!
【IF】クリストフルート HAPPYEND 完
嫌な夢を見た。全身にびっしょりと汗をかいていた俺は、今見た悪夢を振り払うべく自分が寝ていたベッドの左側を手探りで探った。
いつもは、側にある柔らかな温もりはそこにはなかった。
隣りにあるはずの温もりがないことに気がついた俺は、慌ててベッドから飛び起きた。
寝室に、探し求める人の姿がないことから部屋を出て、家中を探したが俺の探し求める人は何処にもいなかった。
そこで俺は全身から血が引くのを感じた。
まさか、全てが夢だったのかと。
全て俺の妄想だったのかと。
あまりのショックに俺は膝をついて呆然としていた。
すると、玄関の扉が開き誰かが家に入ってくる気配とにぎやかな話し声が聞こえてきた。
リビングで呆然としていた俺は、こちらに向かってくる話し声と足音に顔を上げた。
すると、丁度リビングに入ってきた彼女と目が合い、俺はとっさに彼女に抱きついていた。
「シーナ!!何処に行ってたんだ!!」
突然抱きついてきた俺に驚きつつも、優しく背中を撫でながら彼女は優しい声音で俺に言った。
「あらあら?どうしたの?」
「嫌な夢を見た……。起きたら君がいなくて……」
「嫌な夢?」
「君と初めてあった日の出来事……」
「くすくす。あの日のことね。貴方ったら、私と兄さんが話しているところを見て、兄さんにヤキモチ焼いて拗ねちゃったのよね~。ふふふ。そういうところ、とっても可愛くて好きよ?」
昔のことを思い出したのか、シーナは俺の腕の中でクスクスと楽しそうに笑いだしていた。
ムッとしつつも、シーナが腕の中で笑っている姿が可愛くて仕方なかった俺は、思わず彼女の唇を奪っていた。
触れるだけの優しいキスを彼女にすると、シーナは慌てたように身を捩ってキスを拒んだ。
俺はキスを拒まれるとは思っていなかったから、ムキになって嫌がるシーナにキスを繰り返していると切れ切れにシーナが言った言葉で我に返った。
「だ……、だめ……。みっ、みてる……か、ら!!」
我に返った俺は、じっと見つめてくる複数の視線に冷や汗が止まらなかった。
しかし、そんな俺の心情を知ってか知らずか……、いや、知っていて面白がっているツワモノもいたが……。
「あ~、またママにチュッチュしてる~~」
「駄目よ。あんな破廉恥なケダモノを見たら、あなたもケダモノになっちゃうわ。ここは、騎士団に通報すべき場面よ」
「あは!そうしたら父さんがものすごい鬼のような顔で駆けつけてきて、叔父さん牢屋行き決定だね。あは!」
「えっ!!パパ捕まっちゃうの?牢屋行なの?どうしようお姉ちゃん!!」
「大丈夫よ。駄目な父親がいなくなった分、私がママとあなたを守るから」
「そっか、お姉ちゃんがいるからパパは牢屋でも大丈夫だね!!」
「あは!叔父さんがいなくても、僕がシーナさんと君たち姉弟を守るから安心して。と、言うことだからシーナさん、あんな駄目な男とはすぐに別れて僕と結婚して下さい」
「あんたが新しいパパなんて絶対に駄目。許さないから」
「ふ~ん。どうして?あは!もしかして僕のこと好きなの?」
「ばっ!!ばっかじゃないの!!死ね!!今すぐ死ね!!!」
「あは!照れ隠し?かっわいい~」
「あれ?お姉ちゃんは、お兄ちゃんのこと大好きなんじゃないの?」
「~~~~~!!!」
最初は俺の話だったはずが、いつの間にか子供たちのじゃれ合いに変わっていた。
いつものじゃれ合いだったので、子供たちを放置していまだに腕の中で俺から離れようとするシーナに小声で言った。
「悪い……。ついお前が可愛くて」
俺がそう言うと、可愛らしく頬を膨らませた表情でシーナは上目遣いに俺に言ったんだ。
「もう、いつもそうやって……」
「可愛いシーナが悪いんだよ。それに、俺に黙って出かけて心配するだろ?」
「だって、クリフ疲れてたみたいだから」
「疲れてたのは事実だけど、シーナと一緒にいたほうが早く疲れが取れるから大丈夫」
「ふふふ。クリフはいつもそうだね」
「だって、初めてあった日から俺の幸せはシーナと過ごすことだからな」
そう、あの日シーナと出会った日から、俺は必死に、それはもう死にものぐるいでシエテの妨害を掻い潜りシーナと恋人同士になり、やっとの思いで結婚したのだ。
いまだに、シエテは邪魔しに来るけどそれでも前よりはだいぶマシで、今はシーナと二人の子供たちと幸せに暮らしている。
いくつもの選択肢の中から俺自身が掴み取った未来は、最高で幸せ過ぎる。
だけど、今が最高なんかじゃない。シーナと一緒に過ごす未来は更に幸せで溢れていると俺は確信することが出来るんだ。
だって、俺の嫁は世界一可愛いからな!!!
【IF】クリストフルート HAPPYEND 完
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