108 / 113
番外編
【IF】クリストフルート 6-a
しおりを挟む
▶a強引に荷物を奪う
▷b無理強いは良くないのでここは引こう
その時の俺は、美少女と少しでも一緒に居たいという思いから、少し……、いや、かなり強引になっていたところがあったと思う。
遠慮している美少女を逃さないようにと、強引に荷物を奪うようにしたのだ。
美少女は、俺が強引な行動に出るとは思っていなかったようで、荷物を奪われる瞬間にとっさに反応していたのだ。
そして、俺と美少女の間で荷物の奪い合いのような展開に発展していた。
「遠慮しなくていいから」
「いえいえ、本当に結構ですから」
そんなやり取りをしていると、周囲の人間たちは俺たちを避けるようにしながらも成り行きを見守っていた。
そんな俺と美少女との攻防は、一人の男の介入で終止符が打たれたのだった。
「おい……。クリフ……、お前」
その声は、地を這うようなオドロオドロシイ声に俺には聞こえた。
俺は、その声のした方を恐る恐る振り返った。
そこに居たのは、鬼の形相をしたシエテだった。
シエテは、呆気にとられている俺に構わずに、渾身の回し蹴りを俺に食らわせたのだ。
俺はと言うと、もろに食らった回し蹴りによって、後方に吹き飛んでいた。
地面を転がった俺を、ゴミでも見るような目で見たシエテは言い放った。
「お前のこと親友だと一瞬でも思ったのは気の迷いだったようだ。お前が、か弱い女の子から荷物を強引に奪う様な男だったとはな」
「ちっ!違う!!」
「何が違う?現に、お前はさっきまで、シーたんの荷物を強引に奪おうとしていたじゃないか?何が違うというんだ?」
シエテの言葉に、俺は二重の意味で驚愕した。
確かに、傍から見れば俺は女の子から強引に荷物を奪おうとした悪党に見えることだろう。
というか、今シエテはシーたんと言ったか?まさかと思い、恐る恐る美少女の方に視線を向けながらシエテに言った。
「シエテ……、まさか、あの子がお前の妹なのか?」
俺の言葉に、シエテは光の消え失せた目で俺を見た後に言った。
「ああ、そうだが?だが、強盗がそれを知ってどうするんだ?」
「強盗?えっ、違うから!!俺は、荷物を抱える女の子助けようと思って、荷物持ちをしようと」
「は?俺には、嫌がるシーたんの荷物を強引に奪おうとしていたように見えたが?」
「そっ、それは……」
シエテの言葉に、俺は反論できずにいた。
だって、遠慮する妹ちゃんの荷物を強引に奪おうとしたのは事実なんだから。
黙った俺に、シエテは冷たく言い放った。
「認めるんだな。それじゃ、強盗未遂ってことでお前を詰め所に連れて行くから」
「!!」
まさかの展開に俺は言葉が出なかった。
そんな俺に、妹ちゃんは言ってくれたのだ。
「待って!にーに!!その人は強盗なんかじゃないから!私がオレンジを落として、それを見かねて荷物を家まで持ってくれるって言ってくれたんだよ。でも、大丈夫だって私が断っただけなの」
妹ちゃんが、俺は無罪なのだと言って庇ってくれたことに俺は胸が熱くなった。
まさか、この展開で庇ってくれるだなんて、俺は思っていなかったから。
しかし、妹ラブなシエテにはそんな思いは届かなかった。
「そっか、シーたんは優しいね。でも、罪は罪だよ」
そう言って、イライラした様子のシエテは有無を言わさずに俺を騎士団の詰め所に突き出したのだ。
俺はと言うと、詰め所で騎士の人に事情を説明した。妹ちゃんも一緒になって俺の無罪を訴えてくれたのだ。
俺は、罪には問われなかったが、周囲に迷惑をかけたということを反省するようにと詰め所にある謹慎部屋で一日過ごすことになった。
一日明けて、俺が詰め所を出て家に帰ると、呆れた様子の姉ちゃんが出迎えてくれた。
そして、一通の手紙を渡された。
それを見た俺は、無言で手の中の手紙をクシャクシャに握りつぶしていた。
その手紙にはこうあったのだ。
【クリフへ
昨日はすまなかった。少しいらつくことがって、お前に当たっていた。お前に合わせる顔がないといいたいところだが、仕事の都合でディアロ領から出ることになった。本当にすまなかった。お前に会うことは恐らくもう無いだろう。今までありがとう】
そう書いてあった。
それから、すぐにシエテの家に向かったが、シエテの両親からすでにシエテと妹ちゃんの二人はディアロ領から出た後だと聞かされた。
更に、居場所を聞いたがシエテの両親は聞かされていなかったようで、のほほんとした口調で言ったのだ。
「う~ん。シエテからはシーナと二人で旅に出るとだけしか……。シエテからは、定期的に手紙を書くと聞いたから、そのうち分かると思うから、その時教えるよ」
という、返答にクリストフは肩を落としてシエテの家を後にした。
以後、本当にシエテと会うことはなくクリストフは突然の別れにもやもやとした思いを抱えて暮らしたのだった。
そして、ふとした瞬間に思ったのだ。
もしあの時、店から出なければ……、もしあの時、強引に荷物を奪おうとしなければ、何かが変わっていたのかも知れないと。
【IF】クリストフルート 別れEND 完
▷b無理強いは良くないのでここは引こう
その時の俺は、美少女と少しでも一緒に居たいという思いから、少し……、いや、かなり強引になっていたところがあったと思う。
遠慮している美少女を逃さないようにと、強引に荷物を奪うようにしたのだ。
美少女は、俺が強引な行動に出るとは思っていなかったようで、荷物を奪われる瞬間にとっさに反応していたのだ。
そして、俺と美少女の間で荷物の奪い合いのような展開に発展していた。
「遠慮しなくていいから」
「いえいえ、本当に結構ですから」
そんなやり取りをしていると、周囲の人間たちは俺たちを避けるようにしながらも成り行きを見守っていた。
そんな俺と美少女との攻防は、一人の男の介入で終止符が打たれたのだった。
「おい……。クリフ……、お前」
その声は、地を這うようなオドロオドロシイ声に俺には聞こえた。
俺は、その声のした方を恐る恐る振り返った。
そこに居たのは、鬼の形相をしたシエテだった。
シエテは、呆気にとられている俺に構わずに、渾身の回し蹴りを俺に食らわせたのだ。
俺はと言うと、もろに食らった回し蹴りによって、後方に吹き飛んでいた。
地面を転がった俺を、ゴミでも見るような目で見たシエテは言い放った。
「お前のこと親友だと一瞬でも思ったのは気の迷いだったようだ。お前が、か弱い女の子から荷物を強引に奪う様な男だったとはな」
「ちっ!違う!!」
「何が違う?現に、お前はさっきまで、シーたんの荷物を強引に奪おうとしていたじゃないか?何が違うというんだ?」
シエテの言葉に、俺は二重の意味で驚愕した。
確かに、傍から見れば俺は女の子から強引に荷物を奪おうとした悪党に見えることだろう。
というか、今シエテはシーたんと言ったか?まさかと思い、恐る恐る美少女の方に視線を向けながらシエテに言った。
「シエテ……、まさか、あの子がお前の妹なのか?」
俺の言葉に、シエテは光の消え失せた目で俺を見た後に言った。
「ああ、そうだが?だが、強盗がそれを知ってどうするんだ?」
「強盗?えっ、違うから!!俺は、荷物を抱える女の子助けようと思って、荷物持ちをしようと」
「は?俺には、嫌がるシーたんの荷物を強引に奪おうとしていたように見えたが?」
「そっ、それは……」
シエテの言葉に、俺は反論できずにいた。
だって、遠慮する妹ちゃんの荷物を強引に奪おうとしたのは事実なんだから。
黙った俺に、シエテは冷たく言い放った。
「認めるんだな。それじゃ、強盗未遂ってことでお前を詰め所に連れて行くから」
「!!」
まさかの展開に俺は言葉が出なかった。
そんな俺に、妹ちゃんは言ってくれたのだ。
「待って!にーに!!その人は強盗なんかじゃないから!私がオレンジを落として、それを見かねて荷物を家まで持ってくれるって言ってくれたんだよ。でも、大丈夫だって私が断っただけなの」
妹ちゃんが、俺は無罪なのだと言って庇ってくれたことに俺は胸が熱くなった。
まさか、この展開で庇ってくれるだなんて、俺は思っていなかったから。
しかし、妹ラブなシエテにはそんな思いは届かなかった。
「そっか、シーたんは優しいね。でも、罪は罪だよ」
そう言って、イライラした様子のシエテは有無を言わさずに俺を騎士団の詰め所に突き出したのだ。
俺はと言うと、詰め所で騎士の人に事情を説明した。妹ちゃんも一緒になって俺の無罪を訴えてくれたのだ。
俺は、罪には問われなかったが、周囲に迷惑をかけたということを反省するようにと詰め所にある謹慎部屋で一日過ごすことになった。
一日明けて、俺が詰め所を出て家に帰ると、呆れた様子の姉ちゃんが出迎えてくれた。
そして、一通の手紙を渡された。
それを見た俺は、無言で手の中の手紙をクシャクシャに握りつぶしていた。
その手紙にはこうあったのだ。
【クリフへ
昨日はすまなかった。少しいらつくことがって、お前に当たっていた。お前に合わせる顔がないといいたいところだが、仕事の都合でディアロ領から出ることになった。本当にすまなかった。お前に会うことは恐らくもう無いだろう。今までありがとう】
そう書いてあった。
それから、すぐにシエテの家に向かったが、シエテの両親からすでにシエテと妹ちゃんの二人はディアロ領から出た後だと聞かされた。
更に、居場所を聞いたがシエテの両親は聞かされていなかったようで、のほほんとした口調で言ったのだ。
「う~ん。シエテからはシーナと二人で旅に出るとだけしか……。シエテからは、定期的に手紙を書くと聞いたから、そのうち分かると思うから、その時教えるよ」
という、返答にクリストフは肩を落としてシエテの家を後にした。
以後、本当にシエテと会うことはなくクリストフは突然の別れにもやもやとした思いを抱えて暮らしたのだった。
そして、ふとした瞬間に思ったのだ。
もしあの時、店から出なければ……、もしあの時、強引に荷物を奪おうとしなければ、何かが変わっていたのかも知れないと。
【IF】クリストフルート 別れEND 完
0
お気に入りに追加
2,609
あなたにおすすめの小説
転生令嬢、死す。
ぽんぽこ狸
恋愛
転生令嬢、死す。
聖女ファニーは暇していた。それはもう、耐えられないほど退屈であり、このままでは気が狂ってしまいそうだなんて思うほどだった。
前世から、びっくり人間と陰で呼ばれていたような、サプライズとドッキリが大好きなファニーだったが、ここ最近の退屈さと言ったら、もう堪らない。
とくに、婚約が決まってからというもの、退屈が極まっていた。
そんなファニーは、ある思い付きをして、今度、行われる身内だけの婚約パーティーでとあるドッキリを決行しようと考える。
それは、死亡ドッキリ。皆があっと驚いて、きゃあっと悲鳴を上げる様なスリルあるものにするぞ!そう、気合いを入れてファニーは、仮死魔法の開発に取り組むのだった。
五万文字ほどの短編です。さっくり書いております。個人的にミステリーといいますか、読者様にとって意外な展開で驚いてもらえるように書いたつもりです。
文章が肌に合った方は、よろしければ長編もありますのでぞいてみてくれると飛び跳ねて喜びます。
自称地味っ子公爵令嬢は婚約を破棄して欲しい?
バナナマヨネーズ
恋愛
アメジシスト王国の王太子であるカウレスの婚約者の座は長い間空席だった。
カウレスは、それはそれは麗しい美青年で婚約者が決まらないことが不思議でならないほどだ。
そんな、麗しの王太子の婚約者に、何故か自称地味でメガネなソフィエラが選ばれてしまった。
ソフィエラは、麗しの王太子の側に居るのは相応しくないと我慢していたが、とうとう我慢の限界に達していた。
意を決して、ソフィエラはカウレスに言った。
「お願いですから、わたしとの婚約を破棄して下さい!!」
意外にもカウレスはあっさりそれを受け入れた。しかし、これがソフィエラにとっての甘く苦しい地獄の始まりだったのだ。
そして、カウレスはある驚くべき条件を出したのだ。
これは、自称地味っ子な公爵令嬢が二度の恋に落ちるまでの物語。
全10話
※世界観ですが、「妹に全てを奪われた令嬢は第二の人生を満喫することにしました。」「元の世界に戻るなんて聞いてない!」「貧乏男爵令息(仮)は、お金のために自身を売ることにしました。」と同じ国が舞台です。
※時間軸は、元の世界に~より5年ほど前となっております。
※小説家になろう様にも掲載しています。
悪役令息の婚約者になりまして
どくりんご
恋愛
婚約者に出逢って一秒。
前世の記憶を思い出した。それと同時にこの世界が小説の中だということに気づいた。
その中で、目の前のこの人は悪役、つまり悪役令息だということも同時にわかった。
彼がヒロインに恋をしてしまうことを知っていても思いは止められない。
この思い、どうすれば良いの?
当て馬令息の婚約者になったので美味しいお菓子を食べながら聖女との恋を応援しようと思います!
朱音ゆうひ
恋愛
「わたくし、当て馬令息の婚約者では?」
伯爵令嬢コーデリアは家同士が決めた婚約者ジャスティンと出会った瞬間、前世の記憶を思い出した。
ここは小説に出てくる世界で、当て馬令息ジャスティンは聖女に片思いするキャラ。婚約者に遠慮してアプローチできないまま失恋する優しいお兄様系キャラで、前世での推しだったのだ。
「わたくし、ジャスティン様の恋を応援しますわ」
推しの幸せが自分の幸せ! あとお菓子が美味しい!
特に小説では出番がなく悪役令嬢でもなんでもない脇役以前のモブキャラ(?)コーデリアは、全力でジャスティンを応援することにした!
※ゆるゆるほんわかハートフルラブコメ。
サブキャラに軽く百合カップルが出てきたりします
他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5753hy/ )
ほらやっぱり、結局貴方は彼女を好きになるんでしょう?
望月 或
恋愛
ベラトリクス侯爵家のセイフィーラと、ライオロック王国の第一王子であるユークリットは婚約者同士だ。二人は周りが羨むほどの相思相愛な仲で、通っている学園で日々仲睦まじく過ごしていた。
ある日、セイフィーラは落馬をし、その衝撃で《前世》の記憶を取り戻す。ここはゲームの中の世界で、自分は“悪役令嬢”だということを。
転入生のヒロインにユークリットが一目惚れをしてしまい、セイフィーラは二人の仲に嫉妬してヒロインを虐め、最後は『婚約破棄』をされ修道院に送られる運命であることを――
そのことをユークリットに告げると、「絶対にその彼女に目移りなんてしない。俺がこの世で愛しているのは君だけなんだ」と真剣に言ってくれたのだが……。
その日の朝礼後、ゲームの展開通り、ヒロインのリルカが転入してくる。
――そして、セイフィーラは見てしまった。
目を見開き、頬を紅潮させながらリルカを見つめているユークリットの顔を――
※作者独自の世界設定です。ゆるめなので、突っ込みは心の中でお手柔らかに願います……。
※たまに第三者視点が入ります。(タイトルに記載)
【完結】公爵令嬢に転生したので両親の決めた相手と結婚して幸せになります!
永倉伊織
恋愛
ヘンリー・フォルティエス公爵の二女として生まれたフィオナ(14歳)は、両親が決めた相手
ルーファウス・ブルーム公爵と結婚する事になった。
だがしかし
フィオナには『昭和・平成・令和』の3つの時代を生きた日本人だった前世の記憶があった。
貴族の両親に逆らっても良い事が無いと悟ったフィオナは、前世の記憶を駆使してルーファウスとの幸せな結婚生活を模索する。
旦那様の様子がおかしいのでそろそろ離婚を切り出されるみたいです。
バナナマヨネーズ
恋愛
とある王国の北部を治める公爵夫婦は、すべての領民に愛されていた。
しかし、公爵夫人である、ギネヴィアは、旦那様であるアルトラーディの様子がおかしいことに気が付く。
最近、旦那様の様子がおかしい気がする……。
わたしの顔を見て、何か言いたそうにするけれど、結局何も言わない旦那様。
旦那様と結婚して十年の月日が経過したわ。
当時、十歳になったばかりの幼い旦那様と、見た目十歳くらいのわたし。
とある事情で荒れ果てた北部を治めることとなった旦那様を支える為、結婚と同時に北部へ住処を移した。
それから十年。
なるほど、とうとうその時が来たのね。
大丈夫よ。旦那様。ちゃんと離婚してあげますから、安心してください。
一人の女性を心から愛する旦那様(超絶妻ラブ)と幼い旦那様を立派な紳士へと育て上げた一人の女性(合法ロリ)の二人が紡ぐ、勘違いから始まり、運命的な恋に気が付き、真実の愛に至るまでの物語。
全36話
え?私、悪役令嬢だったんですか?まったく知りませんでした。
ゆずこしょう
恋愛
貴族院を歩いていると最近、遠くからひそひそ話す声が聞こえる。
ーーー「あの方が、まさか教科書を隠すなんて...」
ーーー「あの方が、ドロシー様のドレスを切り裂いたそうよ。」
ーーー「あの方が、足を引っかけたんですって。」
聞こえてくる声は今日もあの方のお話。
「あの方は今日も暇なのねぇ」そう思いながら今日も勉学、執務をこなすパトリシア・ジェード(16)
自分が噂のネタになっているなんてことは全く気付かず今日もいつも通りの生活をおくる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる