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番外編
【IF】シエテルート2nd 3-b-1
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▷a追いかける
▶b追いかけない
▷c玄関の扉に八つ当たりする
シエテは、悩んだ結果二人を追いかけなかった。
追いかけたところで、どうしようもなかった。
シーナの幸せを考えるなら、身を引くべきなのだ。
それから、二人がどうなったのか知るのが怖かったシエテは、騎士団の訓練にのめり込んだ。
それを見た第一班の班長が、苦笑いしながらシエテに言ったのだ。
「おいおい、そこまで自分を虐めて、お前はマゾなのか?少しは休め、息抜きしろ」
そう言って、無理やりシエテに休暇を言い渡したのだ。
班長命令では拒否は出来ないと、シエテは渋々休暇を取った。
だが、家にいても何もすることがなかった。
言い渡された休暇は、5日もあったのだ。
毎日、家でだらだらしていても、頭の中はあの二人のことで一杯でまったく休まらなかった。
シエテは、気分転換をしようと思いたち、何気なく商店街に足を運んだ。
しかし、商店街で今一番会いたくなかった人物を見かけてしまったことで、出かけたことを後悔した。
だが、前方に見える会いたくなかった人物、クリストフの様子は明らかにおかしかった。
まるで、生きた屍のような有様だった。
そんな事を考えていると、前方にいたクリストフがシエテに気が付いたのだ。
クリストフは、土気色の顔色と、死んだ魚のような目でシエテに声を掛けた。
「おっす……。シエテ、ひさしぶり……」
クリストフのあまりにも酷い有様に驚いたシエテは、思わず聞いていた。
「……、どうした?ひどい顔だな……」
シエテが聞くと、クリストフは悲しそうに表情を歪めてぽつぽつと話しだした。
「実は……、あの日シーナちゃんに……、思い切って告白したんだ。そしたら…………」
そこまで言って、クリストフは言い淀んだ。
シエテは、続く言葉が気になってクリストフを急かすように問いかけた。
「そしたら、どうしたっていうんだ?」
「そしたら……、シーナちゃん……、す、好きな人がいるって…………」
クリストフの言葉を聞いたシエテは、まさかの展開に目を見張った。
まさか、シーナに好きな男がいるとは全く気が付いていなかったからだ。
クリストフは、その後もぐずぐずと泣き言を続けていたが、シエテはそれどころではなかった。シーナの想い人が一体誰なのか、全く心当たりがなかったのだ。
シーナの交友関係は全て把握しているシエテだったが、シーナが惚れそうな男など全くもって思い浮かばなかった。
気がつけば、シエテの足はシーナのいる実家に向かっていた。
実家の扉の前に来て、初めて無意識に来ていたことに気が付いたシエテは、引き返そうとしたがグダグダ悩んでいると、後ろから義母が声を掛けてきた。
「まぁまぁ、シエテ。もう、貴方ったら全然帰ってこないんだもの。さぁさぁ、入って入って~」
そう言って、シエテを家に押し込んだのだ。
しかし、忘れ物を取りに来ただけの義母は直ぐに庭園に戻っていった。
だが、庭園に戻る前にシエテに言ったのだ。
「ゆっくりしていってね~。それと、シーナ、最近元気がないのよ~、お願い。元気付けてあげて~」
釘を刺すように言われてしまっては、すぐに帰ることなど出来ないと、シエテは諦めて家に入った。
義母によると、シーナは部屋にいるという事だったので、様子を見に行くことにした。
扉をノックしても返事がなかった。
悪いとは思ったが、部屋に入ることにしたシエテは、そっと扉を開けた。
部屋に入ると、シーナがベッドでうたた寝をしていた。寝顔をもっとよく見たいと思ってしまったシエテは、無意識にすよすよと眠るシーナに近づいていた。
手を伸ばせば触れられるくらいの距離まで来た時に、シーナが小さく寝言を言った。
「・き……。い・ない、で…………。ご・・なさ・。す・なの……。い・・とな・に……、にー・のこ・・きに…………」
切れ切れに聞こえる言葉は、内容が全く理解できなかったが、シーナの辛そうな気持ちだけはしっかりと伝わった。
なんとかシーナの悲しみを減らせればと、シエテは眠るシーナの栗色の髪を優しく梳いてから、頭をなでた。
シエテが、頭をなでていると少しだけシーナの表情が嬉しそうなものになった気がして、シエテは嬉しくなった。
何度もシーナの頭を優しく撫でていると、瞼を震わせてからシーナが目を覚ました。
しかし、まだ寝ぼけているようで、少し舌足らずな様子でシエテに話しかけてきた。
「あれ?にーに?なんで?かえってきてくれたの?」
▶b追いかけない
▷c玄関の扉に八つ当たりする
シエテは、悩んだ結果二人を追いかけなかった。
追いかけたところで、どうしようもなかった。
シーナの幸せを考えるなら、身を引くべきなのだ。
それから、二人がどうなったのか知るのが怖かったシエテは、騎士団の訓練にのめり込んだ。
それを見た第一班の班長が、苦笑いしながらシエテに言ったのだ。
「おいおい、そこまで自分を虐めて、お前はマゾなのか?少しは休め、息抜きしろ」
そう言って、無理やりシエテに休暇を言い渡したのだ。
班長命令では拒否は出来ないと、シエテは渋々休暇を取った。
だが、家にいても何もすることがなかった。
言い渡された休暇は、5日もあったのだ。
毎日、家でだらだらしていても、頭の中はあの二人のことで一杯でまったく休まらなかった。
シエテは、気分転換をしようと思いたち、何気なく商店街に足を運んだ。
しかし、商店街で今一番会いたくなかった人物を見かけてしまったことで、出かけたことを後悔した。
だが、前方に見える会いたくなかった人物、クリストフの様子は明らかにおかしかった。
まるで、生きた屍のような有様だった。
そんな事を考えていると、前方にいたクリストフがシエテに気が付いたのだ。
クリストフは、土気色の顔色と、死んだ魚のような目でシエテに声を掛けた。
「おっす……。シエテ、ひさしぶり……」
クリストフのあまりにも酷い有様に驚いたシエテは、思わず聞いていた。
「……、どうした?ひどい顔だな……」
シエテが聞くと、クリストフは悲しそうに表情を歪めてぽつぽつと話しだした。
「実は……、あの日シーナちゃんに……、思い切って告白したんだ。そしたら…………」
そこまで言って、クリストフは言い淀んだ。
シエテは、続く言葉が気になってクリストフを急かすように問いかけた。
「そしたら、どうしたっていうんだ?」
「そしたら……、シーナちゃん……、す、好きな人がいるって…………」
クリストフの言葉を聞いたシエテは、まさかの展開に目を見張った。
まさか、シーナに好きな男がいるとは全く気が付いていなかったからだ。
クリストフは、その後もぐずぐずと泣き言を続けていたが、シエテはそれどころではなかった。シーナの想い人が一体誰なのか、全く心当たりがなかったのだ。
シーナの交友関係は全て把握しているシエテだったが、シーナが惚れそうな男など全くもって思い浮かばなかった。
気がつけば、シエテの足はシーナのいる実家に向かっていた。
実家の扉の前に来て、初めて無意識に来ていたことに気が付いたシエテは、引き返そうとしたがグダグダ悩んでいると、後ろから義母が声を掛けてきた。
「まぁまぁ、シエテ。もう、貴方ったら全然帰ってこないんだもの。さぁさぁ、入って入って~」
そう言って、シエテを家に押し込んだのだ。
しかし、忘れ物を取りに来ただけの義母は直ぐに庭園に戻っていった。
だが、庭園に戻る前にシエテに言ったのだ。
「ゆっくりしていってね~。それと、シーナ、最近元気がないのよ~、お願い。元気付けてあげて~」
釘を刺すように言われてしまっては、すぐに帰ることなど出来ないと、シエテは諦めて家に入った。
義母によると、シーナは部屋にいるという事だったので、様子を見に行くことにした。
扉をノックしても返事がなかった。
悪いとは思ったが、部屋に入ることにしたシエテは、そっと扉を開けた。
部屋に入ると、シーナがベッドでうたた寝をしていた。寝顔をもっとよく見たいと思ってしまったシエテは、無意識にすよすよと眠るシーナに近づいていた。
手を伸ばせば触れられるくらいの距離まで来た時に、シーナが小さく寝言を言った。
「・き……。い・ない、で…………。ご・・なさ・。す・なの……。い・・とな・に……、にー・のこ・・きに…………」
切れ切れに聞こえる言葉は、内容が全く理解できなかったが、シーナの辛そうな気持ちだけはしっかりと伝わった。
なんとかシーナの悲しみを減らせればと、シエテは眠るシーナの栗色の髪を優しく梳いてから、頭をなでた。
シエテが、頭をなでていると少しだけシーナの表情が嬉しそうなものになった気がして、シエテは嬉しくなった。
何度もシーナの頭を優しく撫でていると、瞼を震わせてからシーナが目を覚ました。
しかし、まだ寝ぼけているようで、少し舌足らずな様子でシエテに話しかけてきた。
「あれ?にーに?なんで?かえってきてくれたの?」
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