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第三部
第六章 巡り巡って 6
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カインは、シエテが指差した手袋に視線を向けた後に、ゆっくりとした動作でその手袋を拾い上げた。
そして、はっきりとした声でシエテに宣言したのだ。
「分かった。ただし、俺が勝ったら好きにさせてもらうからな」
そう言ったカインに対して、シエテは頷いてみせたのだった。
シエテは、カインには悪いが勝つ自信があった。未だに成長途中ではあったが、カインとの体格差は、影響が出るほどの開きはなかった。
それに加え、記憶の中にあるカインはそこまで剣術に熱心ではなかったのだ。
人並み程度には出来るが、騎士団で頭角を現していたカーシュには見劣りするくらいのものだった。
シエテは、生まれ変わってから日々、研鑽し業を磨いてきていた。
獣だけではなく魔物も狩り、実践も積んでいたのだ。
負ける理由は無かった。
はずだった。
カインが使用人に言って用意させた真剣を構えた瞬間に分かったのだ。
記憶にあるカインだと侮ってはいけないと。
剣を構えた状態で最初はお互いに出方を見ていた。
睨み合ったまま、動かない時間が続いた。しかし、その読み合いはカインの先制によって終止符が打たれた。
正眼の構えから、一瞬のフェイントを交えつつ敢えて空けていた脇に打ち込んできたのだ。
シエテは、それを易易と剣で受け止めた。
そのまま、受け止めた剣を流して、懐が空いたカインに詰め寄り下段からの切り上げを仕掛けたが、カインはそれをバックステップで見事にかわしていた。
シエテは、それを舌打ちしつつ流れるような動作で上段にある剣を手元に引き戻した。
もし、カインが脇が空いたと思い仕掛けようものなら、それをカウンターで返す自信があったが、カインは打ち込んでは来なかった。
その後は、激しい打ち合いの連続だった。
真剣どうしがぶつかり合い激しい火花が闇夜に散った。
静まり返った中、剣がぶつかり合う「カーン」「キーン」「カキンッ!」「ガキンッ!」という、音だけが鳴り響いていた。
互いに肩で息をし、乱れた呼吸を整えながらも永遠に続くかと思われた打ち合いは終わりに近づいていた。
それは一瞬の隙きだった。
先ほどまで降っていた雨の影響で、地面は所々に水たまりができていた。
鍔迫り合いをしていた両者だったが、カインの力に押されたシエテが半歩後退したのだ。
しかし、ほんの少し下がったその場所は、水たまりだった。
ほんの少しだけだが、水たまりの所為で足先が滑ったのだ。
カインは見逃さなかった。一瞬できたほんの少しの隙きをついたのだ。カインは、瞬時に力の限りシエテの剣を上に向かって弾いたのだ。
シエテは、不味いと思ったが時既に遅く、カインの力で頭上に上体が流されていたところを狙われたのだ。
体を横に捻り仰け反るようにして、避けようとしたが間に合わなかった。
上段から、中断に向かっての切り払いの動作でシエテの肩に剣の腹が当てられたのだった。
カインは、肩で息をしながらシエテに降参するように言った。
「はぁ、はぁ。降参しろ……。これが、腹ではなく刃だったらお前は肩からざっくり斬られていたぞ」
そう言ってきたカインを睨みつけた後に、盛大なため息を吐いたシエテは降参したというように持っていた剣を手放したのだった。
「分かった。今回は俺の負けだ。領主様の好きにすればいい」
シエテの言葉を聞いたカインは、許可を得たと喜びの表情を見せた。
しかし、シエテはさらに続けて言った。
「ただし、俺も好きにさせてもらう」
そう言って、その場を離れていった。
カインは、シエテの言葉を聞いて異議を申し立てた。
「おい!話が違うぞ!待て!!」
「俺は、何も言っていない。ただ、領主様が「好きにさせてもらう」と言った言葉に頷いただけだ。別に許すとは一言も言っていない」
確かにシエテは、カインが勝った場合好きにするということに頷いたが、二人の関係を許すとは一言も言っていなかったのだ。
言質をきちんと取れていなかったカインの甘さに付け込んだシエテの方が一枚上手だったと言える。
言い争いながら二人が向かった先にはシーナがいた。
シーナは、二人が争う間も一人口付けについて真剣に悩んでいた。
結ばれるための口付けとは一体どんなものなのかと色々と考えていたのだ。
今まで生きていた中で、口付けというとシエテや両親に頬や額にキスをすることはあったが、この場所では無いとそれ以外の場所を考えた。
イシュミールは、カインから手の甲や指先に口付けをされていたが、これも違うと考えた。
カインの言う、口付けはきっと二人が結ばれるための特別な行為なのだから、簡単にできてしまえるような場所ではないと結論を出したが、他に口付けをするような場所に心当たりがなかった。
(二人が結ばれるための特別な口付け……。おでことかほっぺたは除外して、手もなんだか違うと思う。だって、イシュミールが読んでた本に出てきた騎士様とか、王子様とかは、お姫様の手にしてたし。う~ん、何処だろう?そう言えば、イシュミールの読んでた本に、王子様とお姫様は優しい口付けを交わしあって幸せになったとか書いてあったけど、それって具体的にどんなものなの?もっと詳しく書いてくれないと困るよ……)
そんな事を考えながら一人唸っているうちに、カインとシエテの決闘はいつの間にか始まり、終わっていたのだった。
そんなシーナの元に、言い合いを続けながらシエテとカインはやって来たのだ。
そして、はっきりとした声でシエテに宣言したのだ。
「分かった。ただし、俺が勝ったら好きにさせてもらうからな」
そう言ったカインに対して、シエテは頷いてみせたのだった。
シエテは、カインには悪いが勝つ自信があった。未だに成長途中ではあったが、カインとの体格差は、影響が出るほどの開きはなかった。
それに加え、記憶の中にあるカインはそこまで剣術に熱心ではなかったのだ。
人並み程度には出来るが、騎士団で頭角を現していたカーシュには見劣りするくらいのものだった。
シエテは、生まれ変わってから日々、研鑽し業を磨いてきていた。
獣だけではなく魔物も狩り、実践も積んでいたのだ。
負ける理由は無かった。
はずだった。
カインが使用人に言って用意させた真剣を構えた瞬間に分かったのだ。
記憶にあるカインだと侮ってはいけないと。
剣を構えた状態で最初はお互いに出方を見ていた。
睨み合ったまま、動かない時間が続いた。しかし、その読み合いはカインの先制によって終止符が打たれた。
正眼の構えから、一瞬のフェイントを交えつつ敢えて空けていた脇に打ち込んできたのだ。
シエテは、それを易易と剣で受け止めた。
そのまま、受け止めた剣を流して、懐が空いたカインに詰め寄り下段からの切り上げを仕掛けたが、カインはそれをバックステップで見事にかわしていた。
シエテは、それを舌打ちしつつ流れるような動作で上段にある剣を手元に引き戻した。
もし、カインが脇が空いたと思い仕掛けようものなら、それをカウンターで返す自信があったが、カインは打ち込んでは来なかった。
その後は、激しい打ち合いの連続だった。
真剣どうしがぶつかり合い激しい火花が闇夜に散った。
静まり返った中、剣がぶつかり合う「カーン」「キーン」「カキンッ!」「ガキンッ!」という、音だけが鳴り響いていた。
互いに肩で息をし、乱れた呼吸を整えながらも永遠に続くかと思われた打ち合いは終わりに近づいていた。
それは一瞬の隙きだった。
先ほどまで降っていた雨の影響で、地面は所々に水たまりができていた。
鍔迫り合いをしていた両者だったが、カインの力に押されたシエテが半歩後退したのだ。
しかし、ほんの少し下がったその場所は、水たまりだった。
ほんの少しだけだが、水たまりの所為で足先が滑ったのだ。
カインは見逃さなかった。一瞬できたほんの少しの隙きをついたのだ。カインは、瞬時に力の限りシエテの剣を上に向かって弾いたのだ。
シエテは、不味いと思ったが時既に遅く、カインの力で頭上に上体が流されていたところを狙われたのだ。
体を横に捻り仰け反るようにして、避けようとしたが間に合わなかった。
上段から、中断に向かっての切り払いの動作でシエテの肩に剣の腹が当てられたのだった。
カインは、肩で息をしながらシエテに降参するように言った。
「はぁ、はぁ。降参しろ……。これが、腹ではなく刃だったらお前は肩からざっくり斬られていたぞ」
そう言ってきたカインを睨みつけた後に、盛大なため息を吐いたシエテは降参したというように持っていた剣を手放したのだった。
「分かった。今回は俺の負けだ。領主様の好きにすればいい」
シエテの言葉を聞いたカインは、許可を得たと喜びの表情を見せた。
しかし、シエテはさらに続けて言った。
「ただし、俺も好きにさせてもらう」
そう言って、その場を離れていった。
カインは、シエテの言葉を聞いて異議を申し立てた。
「おい!話が違うぞ!待て!!」
「俺は、何も言っていない。ただ、領主様が「好きにさせてもらう」と言った言葉に頷いただけだ。別に許すとは一言も言っていない」
確かにシエテは、カインが勝った場合好きにするということに頷いたが、二人の関係を許すとは一言も言っていなかったのだ。
言質をきちんと取れていなかったカインの甘さに付け込んだシエテの方が一枚上手だったと言える。
言い争いながら二人が向かった先にはシーナがいた。
シーナは、二人が争う間も一人口付けについて真剣に悩んでいた。
結ばれるための口付けとは一体どんなものなのかと色々と考えていたのだ。
今まで生きていた中で、口付けというとシエテや両親に頬や額にキスをすることはあったが、この場所では無いとそれ以外の場所を考えた。
イシュミールは、カインから手の甲や指先に口付けをされていたが、これも違うと考えた。
カインの言う、口付けはきっと二人が結ばれるための特別な行為なのだから、簡単にできてしまえるような場所ではないと結論を出したが、他に口付けをするような場所に心当たりがなかった。
(二人が結ばれるための特別な口付け……。おでことかほっぺたは除外して、手もなんだか違うと思う。だって、イシュミールが読んでた本に出てきた騎士様とか、王子様とかは、お姫様の手にしてたし。う~ん、何処だろう?そう言えば、イシュミールの読んでた本に、王子様とお姫様は優しい口付けを交わしあって幸せになったとか書いてあったけど、それって具体的にどんなものなの?もっと詳しく書いてくれないと困るよ……)
そんな事を考えながら一人唸っているうちに、カインとシエテの決闘はいつの間にか始まり、終わっていたのだった。
そんなシーナの元に、言い合いを続けながらシエテとカインはやって来たのだ。
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