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第二部

第一章 第二の人生は生きたいように生きる 2

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 翌日から、シエテによる戦闘訓練が始まった。
 といっても、最初に行われたのは基礎体力増強メニューだった。
 毎日の長距離走と筋力トレーニングがメインの内容だった。
 自分に兄ほどの体力がないことは重々承知していたシーナは地道な体力トレーニングを真面目にこなしていた。
 
 半年ほど体力トレーニングだけの日々を送っていたが、ある程度の体力がついたと判断したシエテから新しく2つのメニューが追加された。
 一つは、木刀での素振りだった。
 シエテいわく、いくつかの剣術の型を反復練習した後に、実際に打ち合いをするということだった。
 もう一つは弓だった。
 ただし、実際に弓矢は使わずに、弓の弦を引き絞るだけのメニューだった。ただ、最初は全く弓を引くことが出来ず、シエテから弓を完全に引ききった状態を保つことができるまで弓矢を使用することは禁止されたのだった。
 
 木刀での素振りは2ヶ月ほど経ったところで打ち合い稽古に移行した。
 その際、シエテから剣での戦いについての駆け引きも同時に教えられた。
 シーナはそれを吸収していき、訓練をはじめて一年ほどで剣術はお墨付きをもらえた。
 弓は、筋力が付くまでに時間はかかったが、弓を引けるようになったあとは直ぐに要点を得て狙った的に当てられるようになった。
 弓も、一年ほどでお墨付きとなった。
 シーナは訓練をする上で体を動かすことが大好きとなりお墨付きをもらっても満足せずに、その他にも槍や格闘術、更には簡単な魔術も習得するに至った。
 
 シーナは、シエテから訓練を受けている時に、何度も既視感に襲われる事があった。
 それは、シーナに訓練を付けるシエテの剣技や足運びの独特な癖が、夢で見た騎士に似ていると思うことが度々あったのだ。それを不思議に思ったのだ。
 そして、一度気になるとそれをスッキリさせたいと考えたシーナは、夢の中で見た騎士、カーシュのことを考えた。
 そして、ここでありえない仮説が閃いてしまったのだ。

(まさか……。でも、私もそうなるとありえないということになるし……。考えても仕方ない。ここはストレートに聞こう!!)

 自分の立てた仮説が合っているのか確かめるため、シーナは訓練の休憩中に、シエテの目を見つめて言った。
 自分のことをじっと見つめる可愛い妹の姿にデレッとした表情になったシエテを見て一瞬、カーシュと同一人物なのか疑わしい気持ちになりつつも、違うなら違うで、スッキリすると考えてすっぱりストレートに聞いた。
 ただ、釘を刺すことは忘れずにだが。

「嘘を言ったら口利かないからね!!」

「ん?なんだ?お兄ちゃんに聞きたいことがあるのか?シーたんの質問になら何でも答えちゃうよ!!」

「にーにって、もしかしてカーシュなの?」

「…………」

 思いも寄らない質問をされたシエテは、最初は無言になり、その後なにかに葛藤する様子を見せてから、大量の冷汗を流しつつ、目を泳がせた。
 何も言わなければ、嘘にはならないとの判断だったようだ。
 しかし、シーナはさらなる追撃を与えた。

「何も言わないで誤魔化すのは最上級の罪だよ。もう、にーにとは呼ばないし、家族の縁を切るからね!!」

 それを言われたシエテは、高速で地面に這いつくばり叫んだ。
 それは見事な程の低姿勢だった。

「お兄ちゃんは、カーシュだよ!!お願いだから嫌いにならないで!!シーたんの事が好きすぎて、家族の縁を切られたらお兄ちゃん生きていけないよ!!!!姫も大切だったけど、今はシーたんが一番だよ!!シーたんが大好きなんだよーーーーー!!!」

 そう、シーナに告げたあと最後にはわんわん泣き出した。

 シーナはそんなシエテの頭を優しく撫でて言った。

「別ににーにを嫌いにならないよ。それに、ただ気になって聞いただけ。イシュミールに代わって言いたいことがあるの。イシュミールを守ってくれて、大切にしてくれてありがとう」

 それを聞いたシエテは更に号泣した。それはもう、まぶたが赤く腫れ上がるほど。
 
 ただし、シエテの号泣は嬉し泣き半分と残念な自分を呪ったもの半分となった。
 
「そっか、やっぱりそうなんだ。カーシュはあんなに格好良かったのに、どうしてにーにはこんなに残念な感じになっちゃんだんだろうね?」

 自分が前世の自分よりも残念な存在になっていたことは否定できないが、大切な妹にもそう思われていたことを知り泣きたくなったと言うか、マジ泣きしたシエテだったのだった。
 
 お互いに前世の記憶を持っていることを知ってからも、特にそのことを話すことはなく、今この時を大切にしていた。
 そう、庭師の両親のもとに生まれた仲良しの、いや、仲が良すぎる双子の兄妹として。
 
 
 その後、シーナは庭師の両親の手伝いをする傍ら、一番上達した弓を生かして猟師業を趣味とするようになっていた。
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