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第二十四話 里帰り
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アズサとウルシュカームは、3年の長期休暇で初めてリンドブルム侯爵邸に里帰りすることになっていた。
これまでの二年間は、長期休暇中も学園に残り、二人でのんびりしていたが、その年は、何故かウルシュカームが実家に戻ることを言い出したのだ。
アズサは、首を傾げつつも異論はなく一緒に領地に戻ることになったのだ。
馬車に揺られて、1週間ほどで領地に戻った二人を侯爵夫妻はとても喜んで迎え入れてくれた。
アズサは、侯爵夫人に勧められるまま、帰宅後すぐに旅の疲れをいやすべく風呂場に案内されていた。
そんなアズサは、ウルシュカームと別れ際にいつものように言ったのだ。
「シュカ?お前も入るなら待ってるけど?」
それを聞いた、侯爵夫妻と執事と侍女たちは騒めき出していたが、それに気付かないアズサは可愛い笑顔で続けて言ったのだ。
「どうする?俺はお前と一緒に入りたいけど……」
「俺もだよ!!すぐに話は終わるから先に入ってて」
「おう、先に入ってるな」
そう言って勝手知ったるなんとやらで、風呂場に向かうアズサを見送る侯爵夫妻と使用人たちは、ウルシュカームをジト目で見ていたが、それを気にした風もなくウルシュカームは、言ったのだ。
「そう言うことなので、見合いはしない。俺はアズサが好きで心から愛してる。アズサはまだ、俺の気持ちに、はっきり気が付いていないみたいだけど、脈ありだと思ってる。だから、俺はアズサと結婚する。今回はこれを直接父上と母上に言うために来た。じゃ、俺も風呂に行く」
そう言って、その場を後にしようとするウルシュカームに、侯爵は慌てて引き留めるように言ったのだ。
「まてまて!!お前の気持ちは十分知ってる!!出会ってすぐにアズサを好きになったのも知ってる!!だがな……」
「アズサを幸せにして見せる。父上には悪いが、養子をとってその子に後を継がせることになるが……」
「それはいい。俺はそれでもいいって実は前から思ってた」
「なら、どうして今回見合い話なんか持ち出したんだ?」
不可解そうに侯爵を睨みつけるウルシュカームだったが、なんとなく侯爵の気持ちも分かっていたので、姿勢を正して、侯爵夫人に言ったのだ。
「母上。すみません。俺はアズサを愛しています。孫の顔をお見せすることは叶いません。どうか、この親不孝者をお許しください」
そう言って、侯爵夫人に深々と頭を下げるウルシュカームに侯爵夫人は、柔らかい微笑みを浮かべて言ったのだ。
「うふふ。いつの間にかこんなに大きくなって。わたくしもあなたの気持ちに気付いていました。というか、屋敷の人間はアズサちゃん以外みんなあなたの気持ち知っていたわよ。うふふ」
「はぁ。それも知っています。でも、アズサのそういうところも含めて好きなんです」
「そう?でも、男性同士で子が出来ないと言っても、結婚までは夜の営みは控えなさいね。あなたたちはまだ学生なのですから。うふふ」
「控えるもなにも……」
「あら?アズサちゃん、もしかしてまだおぼこなの?」
「母上!!」
「だって……、男の子でも処女っていうのかしら?貴方はどう思う?」
そう言われた侯爵は額に大量の汗を浮かべてあたふたとしていたが、それを見た侯爵夫人はおかしそうに笑っていた。
「うふふ。貴方のそういう初心なところ大好きよ?」
そう言って、侯爵の耳元に唇を寄せて、囁くように言ったのだ。
「うふふ。二人目を頑張ってもよろしいのよ?ふぅぅ」
そう言われて、耳に息を吹きかけられた侯爵は、顔を赤く染めておろおろとし出したが、そんな二人のいつものやり取りに呆れた顔をしたウルシュカームは、自分は顔は父親に似たが性格は母親に似たと思いながらも、アズサの待つ風呂場に向かったのだった。
風呂場では旅の疲れをいやしただけの二人は、そろって湯上りの格好でリビングに現れた。
アズサは、侯爵邸でいつも着ていた浴衣姿で、ウルシュカームは、シャツとズボン姿だった。
家族団欒の場は、アズサとウルシュカームが密着して座り、イチャイチャを繰り返し、それに対抗するかのように、侯爵夫人が侯爵を甘やかすようにイチャイチャするという、使用人にとって目のやり場に困る状況が広がっていた。
アズサを足の間に座らせて、背後から抱きしめながら、アズサのために用意された菓子をアズサに食べさせていたウルシュカームは、蕩けそうなというか、とろとろに蕩け切った表情をしていた。
息子のそんな表情を見た侯爵夫妻は、ふとアズサの表情を見て表情を明るくさせていた。
騎士学校に入る前も、こうして仲良くというかイチャイチャしていたアズサとウルシュカームだったが、アズサの表情に前と違う色があったことに気が付いたのだ。
以前は、子供同士のじゃれつきの延長線上のような表情だったが、今のアズサは少し違っていた。
頬を染めて、黒い黒曜石のような瞳を熱に潤ませていたのだ。
そして、アズサを抱きしめるように絡めるウルシュカームの両手を、愛おし気に触れていたのだ。
そんなアズサの変化を見た侯爵夫妻は目で会話をしていた。
(貴方、これは何かあったわね)
(ああ、アズサも、もしかしてウルシュカームのことを?)
(う~ん。ちょっと試してみましょうか?)
(えっ?おい!)
そんな侯爵夫妻の会話も知らずに、体を寄せて楽し気にしている二人に、侯爵夫人は言ったのだ。
「はぁ。二人ともこんなに大きくなって、そろそろお嫁さんを貰ってもいい頃合いね。ウルシュカームには、たくさんお見合いの話も来てるし。アズサちゃんもお嫁さん欲しいでしょ?」
突然の侯爵夫人の言葉に慌てたのはウルシュカームの方だった。
「は、母上?何を突然。それにその話は!」
慌ててそう言うウルシュカームに、侯爵夫人は片目を瞑ってから何かを探るように言ったのだ。
それに気が付いたウルシュカームは、信頼する母親の行動を見守ることに決めたのだ。
「ねぇ、アズサちゃん?もしウルシュカームが結婚したら、あなたはどうする?」
これまでの二年間は、長期休暇中も学園に残り、二人でのんびりしていたが、その年は、何故かウルシュカームが実家に戻ることを言い出したのだ。
アズサは、首を傾げつつも異論はなく一緒に領地に戻ることになったのだ。
馬車に揺られて、1週間ほどで領地に戻った二人を侯爵夫妻はとても喜んで迎え入れてくれた。
アズサは、侯爵夫人に勧められるまま、帰宅後すぐに旅の疲れをいやすべく風呂場に案内されていた。
そんなアズサは、ウルシュカームと別れ際にいつものように言ったのだ。
「シュカ?お前も入るなら待ってるけど?」
それを聞いた、侯爵夫妻と執事と侍女たちは騒めき出していたが、それに気付かないアズサは可愛い笑顔で続けて言ったのだ。
「どうする?俺はお前と一緒に入りたいけど……」
「俺もだよ!!すぐに話は終わるから先に入ってて」
「おう、先に入ってるな」
そう言って勝手知ったるなんとやらで、風呂場に向かうアズサを見送る侯爵夫妻と使用人たちは、ウルシュカームをジト目で見ていたが、それを気にした風もなくウルシュカームは、言ったのだ。
「そう言うことなので、見合いはしない。俺はアズサが好きで心から愛してる。アズサはまだ、俺の気持ちに、はっきり気が付いていないみたいだけど、脈ありだと思ってる。だから、俺はアズサと結婚する。今回はこれを直接父上と母上に言うために来た。じゃ、俺も風呂に行く」
そう言って、その場を後にしようとするウルシュカームに、侯爵は慌てて引き留めるように言ったのだ。
「まてまて!!お前の気持ちは十分知ってる!!出会ってすぐにアズサを好きになったのも知ってる!!だがな……」
「アズサを幸せにして見せる。父上には悪いが、養子をとってその子に後を継がせることになるが……」
「それはいい。俺はそれでもいいって実は前から思ってた」
「なら、どうして今回見合い話なんか持ち出したんだ?」
不可解そうに侯爵を睨みつけるウルシュカームだったが、なんとなく侯爵の気持ちも分かっていたので、姿勢を正して、侯爵夫人に言ったのだ。
「母上。すみません。俺はアズサを愛しています。孫の顔をお見せすることは叶いません。どうか、この親不孝者をお許しください」
そう言って、侯爵夫人に深々と頭を下げるウルシュカームに侯爵夫人は、柔らかい微笑みを浮かべて言ったのだ。
「うふふ。いつの間にかこんなに大きくなって。わたくしもあなたの気持ちに気付いていました。というか、屋敷の人間はアズサちゃん以外みんなあなたの気持ち知っていたわよ。うふふ」
「はぁ。それも知っています。でも、アズサのそういうところも含めて好きなんです」
「そう?でも、男性同士で子が出来ないと言っても、結婚までは夜の営みは控えなさいね。あなたたちはまだ学生なのですから。うふふ」
「控えるもなにも……」
「あら?アズサちゃん、もしかしてまだおぼこなの?」
「母上!!」
「だって……、男の子でも処女っていうのかしら?貴方はどう思う?」
そう言われた侯爵は額に大量の汗を浮かべてあたふたとしていたが、それを見た侯爵夫人はおかしそうに笑っていた。
「うふふ。貴方のそういう初心なところ大好きよ?」
そう言って、侯爵の耳元に唇を寄せて、囁くように言ったのだ。
「うふふ。二人目を頑張ってもよろしいのよ?ふぅぅ」
そう言われて、耳に息を吹きかけられた侯爵は、顔を赤く染めておろおろとし出したが、そんな二人のいつものやり取りに呆れた顔をしたウルシュカームは、自分は顔は父親に似たが性格は母親に似たと思いながらも、アズサの待つ風呂場に向かったのだった。
風呂場では旅の疲れをいやしただけの二人は、そろって湯上りの格好でリビングに現れた。
アズサは、侯爵邸でいつも着ていた浴衣姿で、ウルシュカームは、シャツとズボン姿だった。
家族団欒の場は、アズサとウルシュカームが密着して座り、イチャイチャを繰り返し、それに対抗するかのように、侯爵夫人が侯爵を甘やかすようにイチャイチャするという、使用人にとって目のやり場に困る状況が広がっていた。
アズサを足の間に座らせて、背後から抱きしめながら、アズサのために用意された菓子をアズサに食べさせていたウルシュカームは、蕩けそうなというか、とろとろに蕩け切った表情をしていた。
息子のそんな表情を見た侯爵夫妻は、ふとアズサの表情を見て表情を明るくさせていた。
騎士学校に入る前も、こうして仲良くというかイチャイチャしていたアズサとウルシュカームだったが、アズサの表情に前と違う色があったことに気が付いたのだ。
以前は、子供同士のじゃれつきの延長線上のような表情だったが、今のアズサは少し違っていた。
頬を染めて、黒い黒曜石のような瞳を熱に潤ませていたのだ。
そして、アズサを抱きしめるように絡めるウルシュカームの両手を、愛おし気に触れていたのだ。
そんなアズサの変化を見た侯爵夫妻は目で会話をしていた。
(貴方、これは何かあったわね)
(ああ、アズサも、もしかしてウルシュカームのことを?)
(う~ん。ちょっと試してみましょうか?)
(えっ?おい!)
そんな侯爵夫妻の会話も知らずに、体を寄せて楽し気にしている二人に、侯爵夫人は言ったのだ。
「はぁ。二人ともこんなに大きくなって、そろそろお嫁さんを貰ってもいい頃合いね。ウルシュカームには、たくさんお見合いの話も来てるし。アズサちゃんもお嫁さん欲しいでしょ?」
突然の侯爵夫人の言葉に慌てたのはウルシュカームの方だった。
「は、母上?何を突然。それにその話は!」
慌ててそう言うウルシュカームに、侯爵夫人は片目を瞑ってから何かを探るように言ったのだ。
それに気が付いたウルシュカームは、信頼する母親の行動を見守ることに決めたのだ。
「ねぇ、アズサちゃん?もしウルシュカームが結婚したら、あなたはどうする?」
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