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第二章 運命の出会い(6)

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 自室に移動したジークリンデは、腕の中の志乃をそっとベッドに降ろした。
 マントから志乃を出して、改めてその姿を見つめる。
 泥や煤で汚れてしまっている肌、手入れのされていない髪は絡まり、ぼさぼさになっていた。長く伸びた爪はボロボロで、げっそりと痩せた体が痛々しかった。
 見ていると悲しくなってくる志乃の姿に泣きそうなったジークリンデだったが、泣いても志乃が元気になるわけではないと分かっていた。だから、今は志乃のためになることをしようと考える。
 まずは、汚れを何とかしてあげようと、志乃自身に清潔魔法をかける。
 次に、ボロボロの服をどうにかしようと思ったが、年下に見える志乃ではあったが、勝手に脱がすのはどうかと考えて、そのままにすることにした。
 あとは、志乃が起きた後に、ご飯を食べさせて、服を着替えさせる。
 もし、志乃が希望すれは、風呂の支度もしよう。
 そんなことを考えながら志乃をベッドに寝かせる。
 ジークリンデもその隣に横になり、志乃の頭を優しくなでる。
 志乃の寝息をこのまま聞いていたいところではあったが、ジークリンデにはいろいろとやらなければならないことがあったので、そっとベッドを抜け出す。
 
 リビングルームに移動したジークリンデは、そこで談笑していたハルバートたちに改めて状況の説明をした。
 部下たちは、志乃を巻き込み召喚したくせに酷い扱いをしていたことに憤慨した様子だった。
 ハルバートもアルエライト王国のやり方に気分を悪くしたようだった。
 
「はぁ。それなら仕方ないですね。分かりました、ジークリンデ様が保護したという少女のお世話は任せてくだ―――」

「いや、駄目だ。俺がする」

「え?」

 ハルバートの言葉を遮りながらそう言ったジークリンデは、呆れたような表情のハルバートを他所に、懐から一枚の紙を出した。
 
「ハルト、次の街に着いたらここに書いてあるものをそろえてくれ。それと、あの子が食べられるように明日の食事に粥を用意してくれるか?」

 言われたハルバートは、紙を受け取りながら返事をする。
 
「はい。かしこまりました。そうですね、たしか芋と麦があったのでそれでつくり……。んんんん????」

 受け取った紙に目を通しながら返事をしていたハルバートは、途中で奇妙な声を出して固まる。
 そして、震える声でジークリンデに確認をした。
 
「あの……。これを、私が買ってくるのですか?」

「そうだ。お前以外に誰が買ってくるんだ?」

「…………。そ、そうだ。ジークリンデ様の大切な方のものです。ジークリンデ様自ら購入されては?」

「ああ。俺だって、そうしたいさ。でも、あの子から離れたくないから仕方ない。だから、信用しているお前に任せる。俺の希望としては、白でシンプルなのもいいが、柄の付いたものもいいと思う。お前はどう思う?」

 真剣にそういうジークリンデに冷や汗を流しながらハルバートは、「あ、この人……。本気だコレ……」と内心思いながら適当に頷くことにして返事をする。
 
「分かりました。それでは、ジークリンデ様の趣味に合うような下着を選んでまいります」

「ああ、頼んだぞ」

 ハルバートの言葉を聞いた他の部下たちは、一斉に飲んでいたお茶を噴き出していた。
 そして、口元を拭いながら、女性物の下着のお使いを頼まれてしまったハルバートに同情の視線を向けながら、保護した少女が出歩けるようだったら、ジークリンデが下着を選んでいたのかと、何とも言えない表情をしていたのだった。
 
 説明は済んだし、買い物も頼んだからここにいる意味はないとばかりに、ジークリンデは、さっさと部屋に戻っていった。
 
 部屋に戻ったジークリンデは、再びベッドに横になる。
 肘をついて体を横に向けて、穏やかな寝息を立てる志乃を見つめる。
 布団を肩まで掛けてやり、とんとんと優しく叩くと志乃がふわりと微笑む。
 その僅かな微笑みを見たジークリンデは、胸が締め付けられるような思いだった。
 
「俺に君を守らせてほしい。君を大切にするから、だから、俺を信じて、俺の傍に居て欲しい」

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