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第三十六話 朝比奈 秋護③
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「来るな!!止まれ!!近づくな!!」
怒鳴り散らしていると、急に手のひらが熱くなったと思ったら、何かが手から抜けて行ったのが分かった。
そう思った瞬間に、隣にいる船から爆音が轟いた。
秋護は驚いて、音のあったほうに視線を向けた。その時、上げていた手は別の方向に向いていて、また手から何かが抜けて行った感覚がしたと思ったら、今度は逆方向にある船から爆音がした。
また、驚いて逆方向に顔を向ける。すると、秋護の乗っている船の両隣の船が燃え始めたのだ。
そのことに驚いていると、また手から何かが抜けて行くのを感じた。
今度は何があったのか、その目で見てしまった。
なんと、秋護の手のひらから炎が飛び出て、船の前方に飛んでいったのだ。そして、爆音とともに、自分の乗っている船も燃え始めたのだった。
(えぇぇーー?手から火出たぞ?船、燃えてる……。燃えてる!!!)
意図せず、自分の手から出た炎のせいで船が燃えているのを見て血の気が引いた。
それから、どの位周りを威嚇するように怒鳴り続けたのだろうか、気がつくと直ぐ近くで秋護に向かって話しかける声が聞こえた。
「おい、落ち着け。向こうさんは、敵意はないと言っている」
「これが落ち着けるか!!って、え!?」
恐怖でパニックになっている自分と違って、落ち着いた声音で、落ち着けと言われて思わす、落ち着けるかと突っ込んだところで、話しかけてきたのが知っている言葉、日本語だと気が付いた。
相手は、秋護の戸惑いを気にする風もなく優しげではあるが、淡々とした口調で話し続けた。
「だから落ち着け、ここはお前のいた世界とは違う場所だ。うっかりで、お前を呼びだしてしまったらしい」
「うっかりだって!?」
説明の中に驚愕の事実がさらっと混ざっていて思わず突っ込んだ。
「そうだ、聞いた話によると、妖精に由来する装飾品を誤って月の光に浴びせてしまったところ、お前が現れたそうだ。因みに、帰る方法は知らないそうだ」
「なんだよそれ……」
さらに、ここが異世界で帰る方法もないと言われ、秋護は力なく項垂れた。
項垂れる秋護だったが、次の問いかけに顔を思い切りよく上げた。
「それと、先ほどの爆発だがお前の意思で行ったのか?」
「俺は悪くないぞ!知らない言葉で話すマッチョ達に囲まれた時に身の危険を感じてだな……、気が付いたら手から炎が出てああなった。他意はないぞ!!」
秋護は、必死に自分の置かれていた状況を説明した。知らない場所で、知らない言葉を話す男たちに囲まれて、くっ殺展開まで想像し、どれだけ自分が恐ろしい思いをしたかを気持ちに込めて。
相手にそれが伝わったのかは分からないが、多少優しげな声音で相手は言った。
「分かった、攻撃する意思はなかったと伝える。それと、お前の要望はあるか?」
「要望?」
「ああ、お前は誘拐されたも同然。生活の保障とかいろいろあるだろう?」
そう言われて、確かにこれは誘拐に近い状態だと考え、帰る方法がないならここで生活する必要があると考え思わず口にしてしまった。
「そうだな、金は必要だな」
「分かった。金だな」
相手は、秋護の言葉をそのまま受け取ったようで、簡潔に返事をした。
秋護は、相手にここはどこなのか、自分はどうしたらいいのか聞きたいことは山ほどあったが、声を掛けても返事がなかった。
さっきのやり取りは、自分の妄想だったのかと思い始めたが、気がつくとあれほど周りにいた男達が居なくなっていた。
一人だけ、先程話しかけてきた男だけその場に残っていた。
その男は、何も言わずそっと近づいてきた、秋護に布と毛布と、水とパンを置いてその場を離れて行った。
秋護は、何故布を?と思ったが、先ほど急に土砂降りの雨が降って身体が濡れたことを思い出した。
手にある布を見て、これで拭けということかと理解した秋護は水気を布で拭ってから毛布を被って、水とパンを口にした。
そして、丸一日以上何も口にしていなかったことを思い出したとたんに、腹の虫が騒ぎ出した。
秋護は、一気にもらった水とパンを頬張ったのだった。
空腹状態が解消されると、急に眠気が押し寄せてきた。
満腹感で、なんだかどうでもよくなりそのまま眠気の誘惑に逆らわずに、毛布にくるまって眠りについた。
そして、次に気がつくとどこかの港に停まっていた。
昨日、話しかけてきた男だろうと思われる人物が近寄ってきた。
その人物を、日の光の下で見た秋護は目を見張った。
明るい輝くような金髪に、まるで海のような青い瞳のイケメンな青年だったのだ。
そのイケメンの青年は、言葉が通じないということを理解したうえで、ジェスチャーで何かを伝えようとしていた。
右手の人差し指を、遠くに見える建物に向けた。そして、その指を秋護と自分に向けた。
(もしかして、あそこにある立派そうな建物に俺も来いってことか?)
戸惑っていると、痛くはないが強い力で手を掴まれ、そのまま連れられるようにして船を降ろされた。
そして、船のすぐ横に停められていた馬車に押し込まれて、慌てている間に馬車は出発してしまった。
秋護は、訳も分からず押し込められるようにして乗せられた馬車の中で震えあがった。
(やばい、やばい、やばい!!!俺、どうなっちゃうの!!何をされちゃうの?)
一人、馬車の中で悶々としていると、馬車が停まった。
秋護は、イケメン青年にまた手を引かれてどこかに連れていたれた。
周囲を見る余裕もなく、ただ手を引かれるままどこかの部屋に通された。
すると、イケメン青年は秋護の掴んでいた手を離して、この部屋を指差してからその手を秋護に向けた。
今度のジェスチャーは何を言いたいのかさっぱり理解できなかった。
(どうしろって言うんだよ!!この部屋にいろってことなのか?全然わかんねえよ!!)
だんだんどうしたらいいのか分からす、イライラが募っていった秋護は、不貞寝することに決めて部屋の奥に見える立派なベッドにもぐりこみ籠城することにした。
しばらくすると、イケメン青年は部屋から出ていった。
秋護は、昨日は毛布があったとはいえ、床に寝たため久々のベッドの心地よさに眠気が押し寄せてきた。
それに逆らうこともできず、意識が遠くなっていった。
◆◇◆◇
誰かの怒鳴るような声で秋護は目を覚ました。
何を言っているのかは全く分からないが、ものすごく怒っているのが分かるほどだ。
(やばいやばいやばい、なんかすげー怒ってる?)
一人震えあがっていた秋護だったが、何を話しているのか分からない以上どうすることもできなかった。
その後も、話声は聞こえてきたが、じっとしていると秋護に向かって話しかける可愛らしい声が聞こえた。しかも日本語で。
「こんにちは、ボクは―――」
「日本語だーーーー!!」
昨日ぶりの日本語に、思わずベッドから飛び出してその人物に抱きつこうとしたが、その人はそれをひらりと避けてかわした。
秋護は、勢いよく床にダイブした。
眼鏡を直しつつ、顔を上げていると再度日本語で話しかけられた。
「すみません。思わずよけてしまいました。大丈夫ですか?」
秋護は、声の主を見上げた。そこには、燃える様な赤い髪をショートカットにし、長いまつげに縁取られた少しつり上がり気味の茶色の大きな瞳の美少女が秋護を心配そうに見つめていたのだった。
(ここが天国か!!)
怒鳴り散らしていると、急に手のひらが熱くなったと思ったら、何かが手から抜けて行ったのが分かった。
そう思った瞬間に、隣にいる船から爆音が轟いた。
秋護は驚いて、音のあったほうに視線を向けた。その時、上げていた手は別の方向に向いていて、また手から何かが抜けて行った感覚がしたと思ったら、今度は逆方向にある船から爆音がした。
また、驚いて逆方向に顔を向ける。すると、秋護の乗っている船の両隣の船が燃え始めたのだ。
そのことに驚いていると、また手から何かが抜けて行くのを感じた。
今度は何があったのか、その目で見てしまった。
なんと、秋護の手のひらから炎が飛び出て、船の前方に飛んでいったのだ。そして、爆音とともに、自分の乗っている船も燃え始めたのだった。
(えぇぇーー?手から火出たぞ?船、燃えてる……。燃えてる!!!)
意図せず、自分の手から出た炎のせいで船が燃えているのを見て血の気が引いた。
それから、どの位周りを威嚇するように怒鳴り続けたのだろうか、気がつくと直ぐ近くで秋護に向かって話しかける声が聞こえた。
「おい、落ち着け。向こうさんは、敵意はないと言っている」
「これが落ち着けるか!!って、え!?」
恐怖でパニックになっている自分と違って、落ち着いた声音で、落ち着けと言われて思わす、落ち着けるかと突っ込んだところで、話しかけてきたのが知っている言葉、日本語だと気が付いた。
相手は、秋護の戸惑いを気にする風もなく優しげではあるが、淡々とした口調で話し続けた。
「だから落ち着け、ここはお前のいた世界とは違う場所だ。うっかりで、お前を呼びだしてしまったらしい」
「うっかりだって!?」
説明の中に驚愕の事実がさらっと混ざっていて思わず突っ込んだ。
「そうだ、聞いた話によると、妖精に由来する装飾品を誤って月の光に浴びせてしまったところ、お前が現れたそうだ。因みに、帰る方法は知らないそうだ」
「なんだよそれ……」
さらに、ここが異世界で帰る方法もないと言われ、秋護は力なく項垂れた。
項垂れる秋護だったが、次の問いかけに顔を思い切りよく上げた。
「それと、先ほどの爆発だがお前の意思で行ったのか?」
「俺は悪くないぞ!知らない言葉で話すマッチョ達に囲まれた時に身の危険を感じてだな……、気が付いたら手から炎が出てああなった。他意はないぞ!!」
秋護は、必死に自分の置かれていた状況を説明した。知らない場所で、知らない言葉を話す男たちに囲まれて、くっ殺展開まで想像し、どれだけ自分が恐ろしい思いをしたかを気持ちに込めて。
相手にそれが伝わったのかは分からないが、多少優しげな声音で相手は言った。
「分かった、攻撃する意思はなかったと伝える。それと、お前の要望はあるか?」
「要望?」
「ああ、お前は誘拐されたも同然。生活の保障とかいろいろあるだろう?」
そう言われて、確かにこれは誘拐に近い状態だと考え、帰る方法がないならここで生活する必要があると考え思わず口にしてしまった。
「そうだな、金は必要だな」
「分かった。金だな」
相手は、秋護の言葉をそのまま受け取ったようで、簡潔に返事をした。
秋護は、相手にここはどこなのか、自分はどうしたらいいのか聞きたいことは山ほどあったが、声を掛けても返事がなかった。
さっきのやり取りは、自分の妄想だったのかと思い始めたが、気がつくとあれほど周りにいた男達が居なくなっていた。
一人だけ、先程話しかけてきた男だけその場に残っていた。
その男は、何も言わずそっと近づいてきた、秋護に布と毛布と、水とパンを置いてその場を離れて行った。
秋護は、何故布を?と思ったが、先ほど急に土砂降りの雨が降って身体が濡れたことを思い出した。
手にある布を見て、これで拭けということかと理解した秋護は水気を布で拭ってから毛布を被って、水とパンを口にした。
そして、丸一日以上何も口にしていなかったことを思い出したとたんに、腹の虫が騒ぎ出した。
秋護は、一気にもらった水とパンを頬張ったのだった。
空腹状態が解消されると、急に眠気が押し寄せてきた。
満腹感で、なんだかどうでもよくなりそのまま眠気の誘惑に逆らわずに、毛布にくるまって眠りについた。
そして、次に気がつくとどこかの港に停まっていた。
昨日、話しかけてきた男だろうと思われる人物が近寄ってきた。
その人物を、日の光の下で見た秋護は目を見張った。
明るい輝くような金髪に、まるで海のような青い瞳のイケメンな青年だったのだ。
そのイケメンの青年は、言葉が通じないということを理解したうえで、ジェスチャーで何かを伝えようとしていた。
右手の人差し指を、遠くに見える建物に向けた。そして、その指を秋護と自分に向けた。
(もしかして、あそこにある立派そうな建物に俺も来いってことか?)
戸惑っていると、痛くはないが強い力で手を掴まれ、そのまま連れられるようにして船を降ろされた。
そして、船のすぐ横に停められていた馬車に押し込まれて、慌てている間に馬車は出発してしまった。
秋護は、訳も分からず押し込められるようにして乗せられた馬車の中で震えあがった。
(やばい、やばい、やばい!!!俺、どうなっちゃうの!!何をされちゃうの?)
一人、馬車の中で悶々としていると、馬車が停まった。
秋護は、イケメン青年にまた手を引かれてどこかに連れていたれた。
周囲を見る余裕もなく、ただ手を引かれるままどこかの部屋に通された。
すると、イケメン青年は秋護の掴んでいた手を離して、この部屋を指差してからその手を秋護に向けた。
今度のジェスチャーは何を言いたいのかさっぱり理解できなかった。
(どうしろって言うんだよ!!この部屋にいろってことなのか?全然わかんねえよ!!)
だんだんどうしたらいいのか分からす、イライラが募っていった秋護は、不貞寝することに決めて部屋の奥に見える立派なベッドにもぐりこみ籠城することにした。
しばらくすると、イケメン青年は部屋から出ていった。
秋護は、昨日は毛布があったとはいえ、床に寝たため久々のベッドの心地よさに眠気が押し寄せてきた。
それに逆らうこともできず、意識が遠くなっていった。
◆◇◆◇
誰かの怒鳴るような声で秋護は目を覚ました。
何を言っているのかは全く分からないが、ものすごく怒っているのが分かるほどだ。
(やばいやばいやばい、なんかすげー怒ってる?)
一人震えあがっていた秋護だったが、何を話しているのか分からない以上どうすることもできなかった。
その後も、話声は聞こえてきたが、じっとしていると秋護に向かって話しかける可愛らしい声が聞こえた。しかも日本語で。
「こんにちは、ボクは―――」
「日本語だーーーー!!」
昨日ぶりの日本語に、思わずベッドから飛び出してその人物に抱きつこうとしたが、その人はそれをひらりと避けてかわした。
秋護は、勢いよく床にダイブした。
眼鏡を直しつつ、顔を上げていると再度日本語で話しかけられた。
「すみません。思わずよけてしまいました。大丈夫ですか?」
秋護は、声の主を見上げた。そこには、燃える様な赤い髪をショートカットにし、長いまつげに縁取られた少しつり上がり気味の茶色の大きな瞳の美少女が秋護を心配そうに見つめていたのだった。
(ここが天国か!!)
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