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第三十三話 自己紹介し合う
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春虎は、恥ずかしさのあまり手で顔を覆った。しかし、ウィリアムは穴があくほど凝視していた。見ないでと言われても、珍しく赤くなっている姿が可愛すぎて見るのをやめられなかったのだ。
どの位そうしていただろうか、その空気を壊すように春虎に話しかける声があった。
『あの~、美少女ちゃん?大丈夫?』
青年の声に今の状況を思い出した春虎は、素早く思考を巡らせた。
(今まで、素顔を晒してたし、いまさらだよね。それに、急に隠すのも変だし、開き直ろう。うん、そうしよう。それに、今のところ不便がある訳でもないしいいか。自分から男と偽った訳でもないし、問題ない!はず……。この人はどうしよう?一応今の自分の立場を説明しておけばいいか。隠してる訳じゃないし、女の人も乗っている船もあったし、大丈夫、大丈夫)
結論が出たところで、ウィリアム達に今の挙動不審な行動について説明した。
「ごめんなさい。ちょっと、あの人と話してたら思い出したことがあって、取り乱してしまいました。これから、通訳のお仕事を果たします」
そして、青年に改めて挨拶をした。
『急に取り乱してしまってごめんなさい。改めて自己紹介をしますね。私は、椿春虎と言います。貴方と同じく、日本からここ、イグニス王国に来ました。貴方の名前も教えてもらってもいいですか?』
『俺は、朝比奈秋護。二十歳の大学生だ』
『朝比奈さんですね。これからよろしくお願いしますね』
『おお、よろしく。俺のことは、秋護でいいから。それで、さっきはどうしたんだ?』
『わかりました。えっと、秋護さんと話していて、今まで忘れていたことを思い出したと言いますか、あまり気にしないで下さい』
『わかった。春虎ちゃん。それで、俺はこれからどうなるんだ?』
『秋護さんを呼んだのは、ラジタリウスという国です。今、返答待ちの状態です』
『そっか……。そう言えは、春虎ちゃんはどうしてここに?』
『実は、―――』
そして、春虎は気がついたら無人島にいたこと。通りがかった船に乗せてもらったこと、その船が海賊船で、私掠船に拿捕されたこと。その時からゴールデン・ウルフのクルーになったことを説明した。
『そっか、女の子一人で大変だったね』
『そこまで大変ではなかったです。それに、こちらの人は女の人は長い髪が普通いみたいで、男の子だと勘違いされているので、全然大丈夫でしたよ?』
『えっ?そうなの?』
『はい。それに、訂正するのも面倒だったので、今も男の子として船に乗っています』
『おいおい、それって大丈夫なのか?』
『別に、男の子だと自分で言ったわけではないですし、ただ、誤解を解いていないだけで嘘は言っていませんから』
『ふはは、すげー屁理屈!』
春虎の言い分に、爆笑する秋護だったが、笑いを治めたところに春虎が少し真剣な表情で聞いた。
『私は、帰る為の方法を探しています。それで、参考までに秋護さんがこっちに来る前の行動を教えて欲しいのですが……』
『俺の行動?』
『はい。何か共通点がないかと思って』
『そっか、春虎ちゃんはどうだったんだ?』
『私は、家の手伝いでイギリスにいたんですが、ちょっとした行き違いと言いますか、事故と言いますか、夜の海に投げ飛ばされてしまって、気がついたら無人島にいたんですよ』
春虎の答えに、秋後は瞬きをした。そして、引きつった顔と声で言った。
『それって、やばくないか?』
『そうですね、運が良くても大怪我はすると思っていたら、無傷で無人島に打ち上げられていたので、最初は死んだのかと思ったほどです』
『そっか、それは大変だったな……。俺は……って、その前にあそこにいる銀髪のイケメンがこっちをすげー睨んで来て怖いんですけど』
そう言われて、話に夢中で今まで放っておいていたウィリアムの方をみて首を傾げた。
『どうしたんですかね?ちょっと中断して、何かあったのか聞いてきますね』
そう言って、一旦秋護の側を離れてウィリアム達の方に近づいてどうしたのか尋ねた。
「船長?どうしたんですか?何か気になることでも?」
「べっ、別にハル達が楽しそうで羨ましいとかじゃないから。ただ、話が長いと思っただけだ」
「?」
「ハル坊、気にするな。これは、何と言うか、ウィルの残念が発動しているだけだ。こっちのことは気にしなくていいから」
「分かりました?とりあえず、名前は分かりました。彼は、シューゴ・アサヒナって言います。歳は20歳と言っていました」
「そうか、他には?」
「それについてはこれからいろいろ聞きとります」
「ハル坊それじゃ、引き続き頼んだぞ」
ウィリアムの謎の行動についてはよくわからなかった春虎だったが、ユリウスが気にしなくてもいいというのだから、気にしないようにすることにして、再度秋護から話しを聞くことにした。
どの位そうしていただろうか、その空気を壊すように春虎に話しかける声があった。
『あの~、美少女ちゃん?大丈夫?』
青年の声に今の状況を思い出した春虎は、素早く思考を巡らせた。
(今まで、素顔を晒してたし、いまさらだよね。それに、急に隠すのも変だし、開き直ろう。うん、そうしよう。それに、今のところ不便がある訳でもないしいいか。自分から男と偽った訳でもないし、問題ない!はず……。この人はどうしよう?一応今の自分の立場を説明しておけばいいか。隠してる訳じゃないし、女の人も乗っている船もあったし、大丈夫、大丈夫)
結論が出たところで、ウィリアム達に今の挙動不審な行動について説明した。
「ごめんなさい。ちょっと、あの人と話してたら思い出したことがあって、取り乱してしまいました。これから、通訳のお仕事を果たします」
そして、青年に改めて挨拶をした。
『急に取り乱してしまってごめんなさい。改めて自己紹介をしますね。私は、椿春虎と言います。貴方と同じく、日本からここ、イグニス王国に来ました。貴方の名前も教えてもらってもいいですか?』
『俺は、朝比奈秋護。二十歳の大学生だ』
『朝比奈さんですね。これからよろしくお願いしますね』
『おお、よろしく。俺のことは、秋護でいいから。それで、さっきはどうしたんだ?』
『わかりました。えっと、秋護さんと話していて、今まで忘れていたことを思い出したと言いますか、あまり気にしないで下さい』
『わかった。春虎ちゃん。それで、俺はこれからどうなるんだ?』
『秋護さんを呼んだのは、ラジタリウスという国です。今、返答待ちの状態です』
『そっか……。そう言えは、春虎ちゃんはどうしてここに?』
『実は、―――』
そして、春虎は気がついたら無人島にいたこと。通りがかった船に乗せてもらったこと、その船が海賊船で、私掠船に拿捕されたこと。その時からゴールデン・ウルフのクルーになったことを説明した。
『そっか、女の子一人で大変だったね』
『そこまで大変ではなかったです。それに、こちらの人は女の人は長い髪が普通いみたいで、男の子だと勘違いされているので、全然大丈夫でしたよ?』
『えっ?そうなの?』
『はい。それに、訂正するのも面倒だったので、今も男の子として船に乗っています』
『おいおい、それって大丈夫なのか?』
『別に、男の子だと自分で言ったわけではないですし、ただ、誤解を解いていないだけで嘘は言っていませんから』
『ふはは、すげー屁理屈!』
春虎の言い分に、爆笑する秋護だったが、笑いを治めたところに春虎が少し真剣な表情で聞いた。
『私は、帰る為の方法を探しています。それで、参考までに秋護さんがこっちに来る前の行動を教えて欲しいのですが……』
『俺の行動?』
『はい。何か共通点がないかと思って』
『そっか、春虎ちゃんはどうだったんだ?』
『私は、家の手伝いでイギリスにいたんですが、ちょっとした行き違いと言いますか、事故と言いますか、夜の海に投げ飛ばされてしまって、気がついたら無人島にいたんですよ』
春虎の答えに、秋後は瞬きをした。そして、引きつった顔と声で言った。
『それって、やばくないか?』
『そうですね、運が良くても大怪我はすると思っていたら、無傷で無人島に打ち上げられていたので、最初は死んだのかと思ったほどです』
『そっか、それは大変だったな……。俺は……って、その前にあそこにいる銀髪のイケメンがこっちをすげー睨んで来て怖いんですけど』
そう言われて、話に夢中で今まで放っておいていたウィリアムの方をみて首を傾げた。
『どうしたんですかね?ちょっと中断して、何かあったのか聞いてきますね』
そう言って、一旦秋護の側を離れてウィリアム達の方に近づいてどうしたのか尋ねた。
「船長?どうしたんですか?何か気になることでも?」
「べっ、別にハル達が楽しそうで羨ましいとかじゃないから。ただ、話が長いと思っただけだ」
「?」
「ハル坊、気にするな。これは、何と言うか、ウィルの残念が発動しているだけだ。こっちのことは気にしなくていいから」
「分かりました?とりあえず、名前は分かりました。彼は、シューゴ・アサヒナって言います。歳は20歳と言っていました」
「そうか、他には?」
「それについてはこれからいろいろ聞きとります」
「ハル坊それじゃ、引き続き頼んだぞ」
ウィリアムの謎の行動についてはよくわからなかった春虎だったが、ユリウスが気にしなくてもいいというのだから、気にしないようにすることにして、再度秋護から話しを聞くことにした。
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