39 / 40
第三十九話
しおりを挟む「静粛に」
ビリビリと響くような声で国王陛下が言葉を発すると、周りの官僚はピタッと静かになる。
「私はSランク冒険者の枠組み自体を変えようと思っている。今まではSランク冒険者は各々の街や周辺の地域を守る一つの役職であった。しかし国防を一個人に任せるのは国の怠慢であると皆思っていたことであろう」
陛下はこの玉座の間に集まった人たちをゆっくりと見回していく。
「Sランク冒険者が国防を担うというのは今このときをもってやめにする。これからはSランク冒険者の称号は王国が実力を認めた者に与えることとする。是に則り、コルネとアドレアの二人にはSランク冒険者の称号を与える」
なるほどSランク冒険者の定義が「実力を認めた者」になるのならば、俺やアドレアがSランク冒険者になることは問題ないだろう。
「その上で、三人とは国防を担うという取り決めを改めて交わした。そして此度のテロにより、ラムハは個人での防衛体制では不十分だということが他国にも露呈した。ゆえに、ロンドの他にラムハには軍の者を常に駐在させる」
つまりこういうことだろうか──Sランク冒険者に防衛の義務はなくなるが、レオンさんとサラさんはこれまで通り自身と道場にいるお弟子さんで引き続き防衛を担う。師匠も引き続き防衛に参加するが、王国騎士団と魔法師団から派遣されてくる、と。
師匠以外に戦力が増えれば、おそらく師匠がラムハを離れるときの手続きはとても簡素なものになるだろう。今までは師匠一人でラムハを守っていたから、どこかに行く度に代わりの軍の人員を派遣してもらう必要があったが、元から駐在しているのならその必要はない。
これは師匠が自由に動けるになる──師匠が自由に旅をできるようにするという俺の目的が果たされるということだろうか。
俺がSランク冒険者になったことが直接の要因ではない気がするが、なんにせよ師匠がやりたいことができるようになるのはいいことだ。
「最後に、Sランク冒険者は国が実力を認めた者──すなわち国の宝だ。これに仇なす者は以前と同じように王国への叛逆とみなす」
そこまで陛下が続けざまに言い終わると、もうひそひそと喋る人はいなかった。それを確かめてから司会の人が口を開く。
「褒賞拝受者が退場されます」
俺たちは奇異の視線に晒されながらぞろぞろと玉座の間を後にし、こうして贈呈式は特にハプニングもなく幕を閉じたのだった。
ビリビリと響くような声で国王陛下が言葉を発すると、周りの官僚はピタッと静かになる。
「私はSランク冒険者の枠組み自体を変えようと思っている。今まではSランク冒険者は各々の街や周辺の地域を守る一つの役職であった。しかし国防を一個人に任せるのは国の怠慢であると皆思っていたことであろう」
陛下はこの玉座の間に集まった人たちをゆっくりと見回していく。
「Sランク冒険者が国防を担うというのは今このときをもってやめにする。これからはSランク冒険者の称号は王国が実力を認めた者に与えることとする。是に則り、コルネとアドレアの二人にはSランク冒険者の称号を与える」
なるほどSランク冒険者の定義が「実力を認めた者」になるのならば、俺やアドレアがSランク冒険者になることは問題ないだろう。
「その上で、三人とは国防を担うという取り決めを改めて交わした。そして此度のテロにより、ラムハは個人での防衛体制では不十分だということが他国にも露呈した。ゆえに、ロンドの他にラムハには軍の者を常に駐在させる」
つまりこういうことだろうか──Sランク冒険者に防衛の義務はなくなるが、レオンさんとサラさんはこれまで通り自身と道場にいるお弟子さんで引き続き防衛を担う。師匠も引き続き防衛に参加するが、王国騎士団と魔法師団から派遣されてくる、と。
師匠以外に戦力が増えれば、おそらく師匠がラムハを離れるときの手続きはとても簡素なものになるだろう。今までは師匠一人でラムハを守っていたから、どこかに行く度に代わりの軍の人員を派遣してもらう必要があったが、元から駐在しているのならその必要はない。
これは師匠が自由に動けるになる──師匠が自由に旅をできるようにするという俺の目的が果たされるということだろうか。
俺がSランク冒険者になったことが直接の要因ではない気がするが、なんにせよ師匠がやりたいことができるようになるのはいいことだ。
「最後に、Sランク冒険者は国が実力を認めた者──すなわち国の宝だ。これに仇なす者は以前と同じように王国への叛逆とみなす」
そこまで陛下が続けざまに言い終わると、もうひそひそと喋る人はいなかった。それを確かめてから司会の人が口を開く。
「褒賞拝受者が退場されます」
俺たちは奇異の視線に晒されながらぞろぞろと玉座の間を後にし、こうして贈呈式は特にハプニングもなく幕を閉じたのだった。
10
お気に入りに追加
117
あなたにおすすめの小説

初恋の還る路
みん
恋愛
女神によって異世界から2人の男女が召喚された。それによって、魔導師ミューの置き忘れた時間が動き出した。
初めて投稿します。メンタルが木綿豆腐以下なので、暖かい気持ちで読んでもらえるとうれしいです。
毎日更新できるように頑張ります。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛
らがまふぃん
恋愛
こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。この作品の前作が、お気に入り登録をしてくださった方が、ありがたいことに200を超えておりました。感謝を込めて、前作の方に一話、近日中にお届けいたします。よろしかったらお付き合いください。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。※R6.5/18お気に入り登録300超に感謝!一話書いてみましたので是非是非!
*らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。 ※R7.2/22お気に入り登録500を超えておりましたことに感謝を込めて、一話お届けいたします。本当にありがとうございます。

追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。

どなたか私の旦那様、貰って下さいませんか?
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
私の旦那様は毎夜、私の部屋の前で見知らぬ女性と情事に勤しんでいる、だらしなく恥ずかしい人です。わざとしているのは分かってます。私への嫌がらせです……。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
政略結婚で、離縁出来ないけど離縁したい。
無類の女好きの従兄の侯爵令息フェルナンドと伯爵令嬢のロゼッタは、結婚をした。毎晩の様に違う女性を屋敷に連れ込む彼。政略結婚故、愛妾を作るなとは思わないが、せめて本邸に連れ込むのはやめて欲しい……気分が悪い。
彼は所謂美青年で、若くして騎士団副長であり兎に角モテる。結婚してもそれは変わらず……。
ロゼッタが夜会に出れば見知らぬ女から「今直ぐフェルナンド様と別れて‼︎」とワインをかけられ、ただ立っているだけなのに女性達からは終始凄い形相で睨まれる。
居た堪れなくなり、広間の外へ逃げれば元凶の彼が見知らぬ女とお楽しみ中……。
こんな旦那様、いりません!
誰か、私の旦那様を貰って下さい……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる