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第三十六話 sideラヴィリオ

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「今、なんと言ったのですか?」
 
「俺が次の皇帝になります。そして、全てを手に入れるといったのです」

「ほう? して、お前のいう全てとは?」

「我が帝国の繁栄。それには、ディスポーラ王国の魔鉱山が必要です。今なら攻め入る理由がある」

「…………。証拠はあるのでしょう。はぁ……。お前はいつも判断が遅いのです! 大義名分は大切です。ですが、お前はティアリアが一番なのでしょう? 急ぎなさい。いつあの子がどうなるか分からないのです」

 母上にはお見通しのようだ。ティアリアを救うために侵攻しようと思っていることを。
 だが、やはり大義は必要だ。それでも、母上の言葉は俺にとってありがたいものだった。
 
「はい。ありがとうございます」

「ふふ。色々と聞いたところによると、あの国は根っこから腐りきっているようなのよね。貴方の思う様にしないさ。陛下が全てを許してくれるわ」

「……はぁ。ああ、好きにしなさい。すべての責は負ってやる」

 ため息交じりにそう父上から許可を得た俺は、すぐに騎士団の編成を命じて出立する。
 武装した姿で、国を出る前に眠ったままのティアリアの元に向かった。
 
 ティアリアの部屋には、ローザが詰めていた。
 
「ローザ。ティアリアのことを頼む」

「御意に」

「ティアリア。必ずお前を救うよ。だから待っていてくれ」

 そう言って、黒く染まった髪に触れて必ず救うと誓いを立てた。
 
 そしてすぐに大規模転移魔法でディスポーラ王国との国境に向かった。
 騎馬で国境の砦まで進行すると、少しだが違和感を感じた。
 
 偵察隊を向かわせると、砦の中に人の気配がないということだった。
 それを不思議に思いつつもこのチャンスを逃すことはしなかった。
 誰もいないのなら、今のうちに兄上が用意してくれた掘削用魔法道具で結界をこじ開けるだけだった。
 
 現在、ディスポーラ王国に一番の憎悪を抱いているのは俺だという自身があった。だからこそ、結界の境目を探るのに俺が一番適任だと自覚していた。
 右手に剣を持ち、左手を前に突き出して結界の境を探る。
 しかし、不思議なことにどれだけ進んでも俺を阻む結界に触れることがなかった。
 砦を越えた時、多少の違和感を感じなくはなかったが、気が付けば砦を越えてディスポーラ王国内に俺はいたのだ。
 
「結界が消えているのか?」

 悩んだのは数秒もなかった。
 
「全軍に次ぐ、このまま一気に王都まで進軍する。途中にある村や街は出来るだけ素通りし、民を傷つけることはするな!」

「「「「おおおおおおおおーーーーー!!!!」」」」

「では、全軍前進!!」


 馬を進めて確信した。
 理由は分からないがディスポーラ王国を守っていた結界が消えていることに。
 しかし、それなら他にディスポーラ王国に隣接している国が進軍していないことに違和感を感じる。
 魔鉱山を狙っているのは、我が帝国だけではなかったからだ。
 
 だが、今はそんなこと関係なかった。
 全軍を進め王都まで全速で進むことだけを考える。
 
 その途中、村や街を抜けたが、ディスポーラ王国への不信感は増すばかりだった。
 民たちは疲弊し、誰も俺たち帝国軍の侵攻を防ごうとする者がいなかったのだ。
 そればかりではなかった。
 街を避けて野営をしようとしたが、何故か街の民たちは俺たちを街に迎え入れたのだ。
 ただ、街の様子は異常だった。
 街全体が活気を失い、すべての民が飢えていたのだ。
 俺たちを迎え入れた理由も納得できた。
 そこまで多くの物資を持ってきたわけではなかったが、想像以上に早く侵攻出来ているため、そこそこの余裕はあった。
 だからこそ、飢えた民たちを見捨てることは出来ずに炊き出しをしながら王都まで進んだのだ。
 
 
 そして、いつしかディスポーラ王国の民たちの手引きもあって、予想よりも早く王都にある王城を包囲することができたのだ。
 しかし、王都に着いた俺たち帝国の者はその異常な光景に言葉が出なかった。

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