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第二十七話

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 あの日、ラヴィリオ皇子殿下に触れてから数日。
 わたしをマルクトォス帝国まで連れてきてくれたジーン様と親しくなっていた。
 きっかけは、本当にちょっとしたことだった。
 ラヴィリオ皇子殿下は、公務の間を縫って、わたしに会いに来てくれたわ。
 それでも、お忙しい殿下が顔を見せに来られないことも何度かあったの。
 その時、決まって代理としてわたしの元にやってきたのがジーン様だった。
 
 ジーン様はラヴィリオ皇子殿下の幼馴染だそうで、他に人のいないときには、砕けた様子でラヴィリオ皇子殿下と話されているのを見かけた。
 そんなジーン様はとても高身長な方のようで、彼の声はとても高いところから聞こえてきていた。
 
 ジーン様は、とても寡黙で誠実な人となりをしていた。

「妃殿下、本日はどのようにいたしますか?」

「ジーン様……。わたしは……」

「いいえ、もう数週間後にはそうなるのですから」

「でも……」

「今からそう呼ばれることに慣れていただくのも良いと思いますよ?」

「でも……」

「ふふ。妃殿下は本当にお可愛らしい人ですね」

「んなぁっ……。はぁ、ジーン様? もしかしてわたしを揶揄って楽しんでいるのですか?」

「いいえ、滅相もないです。俺は、ラヴィリオ様が妃殿下への気持ちに気が付いてから、ずっと見守っていたのです。話に聞く思い出の中の妃殿下もお可愛らしい印象でしたが、今の妃殿下は想像の何倍もお可愛らしいです。いろいろと拗らせていた我が主にようやく春が来たと思うと、部下として、友人として、とても喜ばしいです」

「はぁ……。そうなのですか? ジーン様、いつもよりもとても饒舌ですが、何かいいことでもあったのですか?」

「ふふ。ええ、とてもいいものが手に入ったのです」

 楽し気にそう言うジーン様は、懐をガサガサと探った後、何かを取り出したのだ。
 そして、小さな声でわたしを誘惑するの。
 
「妃殿下もこれがお好きですよね? どうです?」

 そう言われたわたしは、微かに香るアレの香りに唾を飲んでいたわ。
 でも、我慢しなくちゃ。アレを貰ったら、わたし……。わたし……。

「大丈夫ですよ。ちょっとだけなら負担も少ないはずです」

「でも……」

「そう言いつつも、欲しがっているのはお見通しですよ?」

「でも……、駄目です。だって、わたしにはラヴィリオ皇子殿下から頂いたものがまだあるんです」

「分かりました。では、これは俺が責任を持って処分しますね」

 処分……。その言葉を聞いた瞬間、わたしは急にアレが惜しくなってしまった。
 いつからだろう……、何かに執着を覚えたのは。
 最初は、ラヴィリオ皇子殿下に対して、彼の傍に居たいと思ったこと。
 そして、次に抱いたのはアレを……、だめだめ。アレはわたしにとって毒みたいなものよ……。
 でも、欲しいと一度思ってしまうと、体がアレを求めてしまうの……。
 
「せっ……、折角ジーン様がわたしに持ってきてくれたのですし、ちょっとだけ。先っちょだけ頂こうかしら……」

「ふふ。分かっていますよ。ラヴィリオ様には秘密にしますし、絶対にバレないように対処しますよ」

 まるでいけないことをしているようでドキドキしてしまうわたしがいた。
 だって、この事を知られたらラヴィリオ皇子殿下になんて思われるか……。
 だからこの秘密は、絶対に彼には知られないようにしないと。
 
「はい……。それではジーン様。アレを下さい」

「分かりました。それでは、今回のアレは、ちょっと刺激が強いので本当にちょっと舐めて見て、駄目そうなら吐き出してくださいね?」

「はい……」

「ああ。触ると匂いが付きますので……」

「あっ。そうだったわね。それじゃあ、ジーン様お願いします」

「ええ、分かっていますよ。それでは、妃殿下」

 あっ、すごい……。鼻先に感じる匂いで、わたしはアレへの期待が大きく膨らんでいた。
 わたしがベールを少しだけまくって、口を開けると、アレがわたしの唇に触れた。
 そのとたん、わたしはその刺激に胸が激しい鼓動を打つのを感じた。
 
「あっ……。ちゅっぱ……。す……すごいです……。今までで一番すごいかもしれないです……」

 舌先でアレを舐めて、少しだけ先っぽを口に含んだ。
 
「っん! はぁ、はぁ……。んっ……。すごいです……。でも、これ以上は……わたし……」

 余りの刺激にわたしは、唇が腫れてしまいそうだと思ったわ。 
 それでも、ついついアレを口にするのを止められなかったの。
 
「ちょっ、妃殿下。これ以上は不味いです。俺がラヴィリオ様に叱られます。もうこれ以上は駄目です」

「あっ……。ご、ごめんなさい。わたしったら、つい夢中になってしまって……。でも、とてもよかったです」

「はい。それならよかったです。ラヴィリオ様に内緒で、こっそり用意した甲斐がありました」

「ほう……。俺に内緒で、ナニをしていたんだ?」

 今日は来られないはずのラヴィリオ皇子殿下のとても低い声にわたしは、血の気が引いていくのを感じた。
 
 
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