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第二十三話

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 ラヴィリオ皇子殿下があの時の少年だったことを知ったわたしは、彼に思われる資格なんてないのだと、改めて実感した。
 ラヴィリオ皇子殿下は、勘違いをしている。
 わたしはあの時、皇子殿下のことを思っての助言などしていないのだから。
 自惚れた考えの少年に苛立ちを覚えただけなのだから。そして、少年が愚かな行動を取って自滅すればいいくらいの考えだったのだ。
 だから、彼の気持ちはとても受け止めきれそうになかった。
 だけど、彼から示された誠意に対して、何も返さないわけにはいかなかった。
 だから、わたしは、わたしの言える範囲でわたしのことを話す決意を固めた。
 
「御覧の通り、わたしの両目はディスポーラ王国に捧げました。両目を失ったわたしは、魔力を使って、周囲の状況を感じることで、目の代わりにしています」

 これが、わたしがディスポーラ王国の人たちにバケモノだと恐れられる理由の一つだった。
 わたしから広がる魔力に人々は嫌悪を感じる様なのだ。
 だけど、マルクトォス帝国の人々は違った。
 どうしてなのか、わたしの魔力を感じているはずなのに優しくしてくれる。
 
「今、ティアリアが不思議に思っているだろう内容の答えを俺は知っている」

「え?」

「ティアリアは王国の人々と帝国の人々との違いに困惑しているのだろう?」

「はい……。どうしてここの人たちはわたしに優しくしてくれるのかとても不思議です……」

「簡単な話だ。ティアリアは、気が付いていないみたいだが、王国と帝国の人間で大きな違いがあるんだ」

「大きな違い……ですか?」

「ああ。それは、王国の人間は魔力を持っている人間がほとんどいないことだ。帝国の人間は生まれながらに大なり小なりの魔力を持って生まれる。だが、王国の人間は魔力を持っている者の方が圧倒的に少ないんだ。魔力に免疫がない。だから、ティアリアから流れる魔力に嫌悪感を抱く」

「そ……んな……」

 そんな事って、あるのだろうか?
 でも、ラヴィリオ皇子殿下が嘘を言う理由がないわ。
 そう……なのね。わたしの魔力が原因……。でもそれだけではないはず。
 この両目のない、醜いわたしの顔に嫌悪していることだって、わたしがバケモノである理由の一つのはず。
 
「でも、それだけではなく、わたしの―――」

「違う。お前は愛らしいよ。たとえ両目がなくとも、俺はお前のことが愛おしいんだ。ティアリア、お前を見て醜いだなんて思う訳がない。こんなにも美しいお前を俺は、誰にも見せたくないと思う」

「そんな……。ラヴィリオ皇子殿下はお優しいのですね」

「ふむ。なら俺の本心なのだとティアリアに分かってもらえるまで、俺は行動で示すことにしよう」

「え?」

 行動で示すとは?
 ラヴィリオ皇子殿下の言葉に内心首を傾げていると、彼がぐっと距離を縮めてきたの。
 そして、「触るぞ」って、わたしに言ったあとのことだった。
 わたしは、ラヴィリオ皇子殿下に拘束されていた……。
 いえ、これは拘束ではなく、抱きしめられたのだ。
 頬に感じる、皇子殿下の堅い胸板。
 そこからは、鼓動が早鐘のように鳴っていたわ。
 
 ドクドクって、大きな音が聞こえてくる。
 その音に聞き入っていると、ラヴィリオ皇子殿下に髪を優しく撫でられていた。
 髪を撫でられるのがこんなに気持ちがいいものだなんて、わたしは初めて知ったわ。
 くすぐったいような、もっと撫でて欲しいような。
 そんな不思議な感覚だった。
 気が付くと、わたしはラヴィリオ皇子殿下の硬い太ももの上に座らされて、さらにぎゅっと抱きしめられてしまっていた。
 だけど、嫌じゃなかった。
 ううん。むしろ、ずっとこうしてくっついて居たいとさえ思っているわたしがいたわ。

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