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第二十二話 sideラヴィリオ
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あの出会いが俺の初恋だったことに気が付いた俺は、すぐにあの少女のことを調べ始めた。
しかし、少女の情報を中々掴むことができないまま、時間だけが過ぎて行った。
そして、時間はかかったものの、彼女のことを突き止めた俺は、すぐに父上の元に向かっていた。
もちろん、それらしい言い訳も用意してだ。
そして、父上を説得した俺は、彼女と再会することができたのだ。
思い上がった恥ずかしい過去も彼女に包み隠さずに話した俺は、何も言わずにただ黙って俺の長い話を聞いてくれたティアリアの様子が気になった。
「ティアリア。俺は、お前が好きなんだ。これだけは信じて欲しい」
俺がそう言うと、ティアリアは肩を震わせたのだ。
「あはは……。ラヴィリオ皇子殿下は、わたしの事情を少しはご存じなんですね……。そうですね、わたしも、わたしが言える範囲でわたしのことをお話しします……」
そう言ったティアリアは、今まで頑なに外そうとしなかったベールを脱いでいた。
細く艶やかな銀糸のような髪。
柔らかそうな唇は、少しだけカサついていた。
小さく形の整った鼻、少しだけこけた頬。
細い首、薄い体。
俺よりも頭二つ分も小さなティアリア。
そして、両目を隠すように巻かれた布は、俺が彼女に渡したものだった。
細い指が顔に巻かれた布に触れた後、ティアリアは唇を強く噛む。
「やめろ!」
血が出そうなほど強く噛むティアリアに俺は静止の声を掛けたが、それでも彼女は何かに耐えるように唇を噛むのをやめなかった。
彼女自身であっても、ティアリアを傷つける行為はして欲しくなかった。
だから俺は、手を伸ばして彼女の唇に触れていた。
「やめるんだ。そんなに噛みたいなら俺の指を噛め」
そう言って彼女の唇に触れると、ティアリアははっとしたように口を小さく開けたのだ。
そうして、小さく言うのだ。
「皇子殿下の指を噛むなんてできません。それに、このくらいの傷なんて舐めておけばそのうち治りますから、放っておいてください……」
プイっとそっぽを向くティアリアが可愛くて、憎たらしくて、俺はつい意地悪な言い方をしてしまう。
「ふむ。なるほど、ではその傷が治るように俺が舐めよう」
「んなぁっ!?」
「くくっ……。冗談ではないからな。今回は見逃すが、次にお前が傷付いた時は、容赦なく舐めるからな」
「んなぁぁっ!!」
首まで真っ赤にさせて口をパクパクとさせる姿が可愛くて、俺は彼女の小さな手を取り、その甲に唇を落としていた。
「今日は、手の甲にキスするだけで勘弁してやるが、次は本当にするからな。くくっ」
俺がそう言うと、彼女はさらに真っ赤になってしまうが、それがまた可愛くて、愛おしくて。
だから、彼女からどんな話が飛び出しても、俺は彼女の味方でいると固く誓った。
しかし、少女の情報を中々掴むことができないまま、時間だけが過ぎて行った。
そして、時間はかかったものの、彼女のことを突き止めた俺は、すぐに父上の元に向かっていた。
もちろん、それらしい言い訳も用意してだ。
そして、父上を説得した俺は、彼女と再会することができたのだ。
思い上がった恥ずかしい過去も彼女に包み隠さずに話した俺は、何も言わずにただ黙って俺の長い話を聞いてくれたティアリアの様子が気になった。
「ティアリア。俺は、お前が好きなんだ。これだけは信じて欲しい」
俺がそう言うと、ティアリアは肩を震わせたのだ。
「あはは……。ラヴィリオ皇子殿下は、わたしの事情を少しはご存じなんですね……。そうですね、わたしも、わたしが言える範囲でわたしのことをお話しします……」
そう言ったティアリアは、今まで頑なに外そうとしなかったベールを脱いでいた。
細く艶やかな銀糸のような髪。
柔らかそうな唇は、少しだけカサついていた。
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そして、両目を隠すように巻かれた布は、俺が彼女に渡したものだった。
細い指が顔に巻かれた布に触れた後、ティアリアは唇を強く噛む。
「やめろ!」
血が出そうなほど強く噛むティアリアに俺は静止の声を掛けたが、それでも彼女は何かに耐えるように唇を噛むのをやめなかった。
彼女自身であっても、ティアリアを傷つける行為はして欲しくなかった。
だから俺は、手を伸ばして彼女の唇に触れていた。
「やめるんだ。そんなに噛みたいなら俺の指を噛め」
そう言って彼女の唇に触れると、ティアリアははっとしたように口を小さく開けたのだ。
そうして、小さく言うのだ。
「皇子殿下の指を噛むなんてできません。それに、このくらいの傷なんて舐めておけばそのうち治りますから、放っておいてください……」
プイっとそっぽを向くティアリアが可愛くて、憎たらしくて、俺はつい意地悪な言い方をしてしまう。
「ふむ。なるほど、ではその傷が治るように俺が舐めよう」
「んなぁっ!?」
「くくっ……。冗談ではないからな。今回は見逃すが、次にお前が傷付いた時は、容赦なく舐めるからな」
「んなぁぁっ!!」
首まで真っ赤にさせて口をパクパクとさせる姿が可愛くて、俺は彼女の小さな手を取り、その甲に唇を落としていた。
「今日は、手の甲にキスするだけで勘弁してやるが、次は本当にするからな。くくっ」
俺がそう言うと、彼女はさらに真っ赤になってしまうが、それがまた可愛くて、愛おしくて。
だから、彼女からどんな話が飛び出しても、俺は彼女の味方でいると固く誓った。
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