21 / 40
第二十一話 sideラヴィリオ
しおりを挟む
当時の俺は、自分がとても秀でた存在なのだと思い込んでいた。
思い上がった考えの俺は、何でも思う様にうまくいくなどと思い込んだのだ。
そんな訳はなかった。
その後、再び少女に会うことは叶わないまま、マルクトォス帝国に戻ることとなった。
国に戻った俺は、周囲の大人たちの思惑に気付かずに、いいように動かされていたことに中々気がつかなかった。
それに気が付いた時、俺は自分のバカさ加減と、少女の言葉の裏を初めて知ったのだ。
つまり少女は、俺の話を聞いて、「思う上がるな。お前のような凡庸な人間など吐いて捨てるほどいるんだ」と、そう言われていたことに気が付いたのだ。
それからの俺は、自分の本心を隠し、周囲には何も考えていない皇子だと思させたまま過ごすことに決めたのだ。
そして、幼少期に母上オモチャにされてから苦手意識を持っていた女性に対しても考えを改めることにした。
攻撃は最大の防御と誰かが言っていたが、まさにこの考え方のお陰で俺は少しだけ生きやすくなった気がした。
それまでは、女性から逃げるか無視を決め込んでいた。
しかし、そうすると追いかけられたり、酷いときにはしつこく付きまとわれて公務どころではなくなったこともあったのだ。
それなら、適度に相手をし、時には甘い言葉で惑わせる。
その作戦は面白いほどに成功したのだ。
瞳を合わせ、甘い言葉を口にすれば女性は黄色い声を上げて、恥ずかしそうに俺から距離を取る令嬢が増えたのだ。
身を護るために、身を切る思いで苦手な女性の手を握り、見つめ合い、甘い言葉を吐き出す。
いつしかそれが身に付き、何も考えずとも自然に甘い言葉を吐き出すようになっていた。
そんな中、婚約者候補の令嬢に言われたことで俺は気が付く。
「あーあ、本当にバカバカしいですわ。貴方、自覚がないなんて。はぁ、阿保らしいですわ」
最初は、何のことか分からなかった。
だから、俺のことを良く知る部下であり友人でもあるジーンに相談したのだ。
すると、ジーンは目を丸くさせた後に、盛大に笑いこけたのだ。
そして、声を震わせながらジーンは呆れたように言った。
「お前、初恋拗らせすぎ……。くっ、くく!!」
何のことか俺には理解できなかった。
全く理解できていない俺に気が付いたジーンは、心底呆れたように言い放ったのだ。
「お前に熱を上げている令嬢は全く気が付いていないと思うが、俺やソレイユ伯爵令嬢、他にも気が付いている者は結構いるぞ?」
「何が言いたい?」
「お前のその軟派な性格が作り物で、本当は令嬢たちのことどうとも思っていないからこそ、歯の浮くようなセリフを次から次に吐き出せるって。そして、お前は、お前を変えるきっかけになった誰かと、お前に媚びる令嬢たちを比べては、落胆している」
「なんだそれは? 俺を変えるきっかけになった誰か? そんなの……」
ジーンの言葉を否定しようとした俺は、途中で言葉を詰まらせていた。
いつからだろう、菫色の服や小物で着飾るようになったのは。
その瞬間俺は昔にあった少女のことを思い出していた。
無礼で、可愛くて、初めて目を奪われた少女……。
菫色の瞳が鮮明に頭に浮かんだ。その瞬間、胸が大きく跳ねた気がした。
思い上がった考えの俺は、何でも思う様にうまくいくなどと思い込んだのだ。
そんな訳はなかった。
その後、再び少女に会うことは叶わないまま、マルクトォス帝国に戻ることとなった。
国に戻った俺は、周囲の大人たちの思惑に気付かずに、いいように動かされていたことに中々気がつかなかった。
それに気が付いた時、俺は自分のバカさ加減と、少女の言葉の裏を初めて知ったのだ。
つまり少女は、俺の話を聞いて、「思う上がるな。お前のような凡庸な人間など吐いて捨てるほどいるんだ」と、そう言われていたことに気が付いたのだ。
それからの俺は、自分の本心を隠し、周囲には何も考えていない皇子だと思させたまま過ごすことに決めたのだ。
そして、幼少期に母上オモチャにされてから苦手意識を持っていた女性に対しても考えを改めることにした。
攻撃は最大の防御と誰かが言っていたが、まさにこの考え方のお陰で俺は少しだけ生きやすくなった気がした。
それまでは、女性から逃げるか無視を決め込んでいた。
しかし、そうすると追いかけられたり、酷いときにはしつこく付きまとわれて公務どころではなくなったこともあったのだ。
それなら、適度に相手をし、時には甘い言葉で惑わせる。
その作戦は面白いほどに成功したのだ。
瞳を合わせ、甘い言葉を口にすれば女性は黄色い声を上げて、恥ずかしそうに俺から距離を取る令嬢が増えたのだ。
身を護るために、身を切る思いで苦手な女性の手を握り、見つめ合い、甘い言葉を吐き出す。
いつしかそれが身に付き、何も考えずとも自然に甘い言葉を吐き出すようになっていた。
そんな中、婚約者候補の令嬢に言われたことで俺は気が付く。
「あーあ、本当にバカバカしいですわ。貴方、自覚がないなんて。はぁ、阿保らしいですわ」
最初は、何のことか分からなかった。
だから、俺のことを良く知る部下であり友人でもあるジーンに相談したのだ。
すると、ジーンは目を丸くさせた後に、盛大に笑いこけたのだ。
そして、声を震わせながらジーンは呆れたように言った。
「お前、初恋拗らせすぎ……。くっ、くく!!」
何のことか俺には理解できなかった。
全く理解できていない俺に気が付いたジーンは、心底呆れたように言い放ったのだ。
「お前に熱を上げている令嬢は全く気が付いていないと思うが、俺やソレイユ伯爵令嬢、他にも気が付いている者は結構いるぞ?」
「何が言いたい?」
「お前のその軟派な性格が作り物で、本当は令嬢たちのことどうとも思っていないからこそ、歯の浮くようなセリフを次から次に吐き出せるって。そして、お前は、お前を変えるきっかけになった誰かと、お前に媚びる令嬢たちを比べては、落胆している」
「なんだそれは? 俺を変えるきっかけになった誰か? そんなの……」
ジーンの言葉を否定しようとした俺は、途中で言葉を詰まらせていた。
いつからだろう、菫色の服や小物で着飾るようになったのは。
その瞬間俺は昔にあった少女のことを思い出していた。
無礼で、可愛くて、初めて目を奪われた少女……。
菫色の瞳が鮮明に頭に浮かんだ。その瞬間、胸が大きく跳ねた気がした。
10
お気に入りに追加
117
あなたにおすすめの小説
離縁してくださいと言ったら、大騒ぎになったのですが?
ネコ
恋愛
子爵令嬢レイラは北の領主グレアムと政略結婚をするも、彼が愛しているのは幼い頃から世話してきた従姉妹らしい。夫婦生活らしい交流すらなく、仕事と家事を押し付けられるばかり。ある日、従姉妹とグレアムの微妙な関係を目撃し、全てを諦める。
異世界で王城生活~陛下の隣で~
遥
恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。
グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます!
※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。
※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
男装令嬢の恋の行方
バナナマヨネーズ
恋愛
十二歳の時、フェルルカ・アーデン侯爵令嬢は、ある事件が切っ掛けとなり、マティウス・ディアドラ王太子との婚約を破棄されてしまう。
その後、領地に引き籠るようにして過ごすも、今度は双子の弟が謎の呪いをその身に受けて自由を奪われてしまったのだ。
双子の弟の未来を守りたいフェルルカは、弟のシュナイゼルの呪いが解けるまで、身代わりとなって生きることを決意する。
しかし、シュナイゼルの身代わりとして騎士団に所属するも、第三王子のベルナルドゥズに気に入られてしまって?
愛しき冷血宰相へ別れの挨拶を
川上桃園
恋愛
「どうかもう私のことはお忘れください。閣下の幸せを、遠くから見守っております」
とある国で、宰相閣下が結婚するという新聞記事が出た。
これを見た地方官吏のコーデリアは突如、王都へ旅立った。亡き兄の友人であり、年上の想い人でもある「彼」に別れを告げるために。
だが目当ての宰相邸では使用人に追い返されて途方に暮れる。そこに出くわしたのは、彼と結婚するという噂の美しき令嬢の姿だった――。
これは、冷血宰相と呼ばれた彼の結婚を巡る、恋のから騒ぎ。最後はハッピーエンドで終わるめでたしめでたしのお話です。
完結まで執筆済み、毎日更新
もう少しだけお付き合いください
第22回書き出し祭り参加作品
2025.1.26 女性向けホトラン1位ありがとうございます
兄にいらないと言われたので勝手に幸せになります
毒島醜女
恋愛
モラハラ兄に追い出された先で待っていたのは、甘く幸せな生活でした。
侯爵令嬢ライラ・コーデルは、実家が平民出の聖女ミミを養子に迎えてから実の兄デイヴィッドから冷遇されていた。
家でも学園でも、デビュタントでも、兄はいつもミミを最優先する。
友人である王太子たちと一緒にミミを持ち上げてはライラを貶めている始末だ。
「ミミみたいな可愛い妹が欲しかった」
挙句の果てには兄が婚約を破棄した辺境伯家の元へ代わりに嫁がされることになった。
ベミリオン辺境伯の一家はそんなライラを温かく迎えてくれた。
「あなたの笑顔は、どんな宝石や星よりも綺麗に輝いています!」
兄の元婚約者の弟、ヒューゴは不器用ながらも優しい愛情をライラに与え、甘いお菓子で癒してくれた。
ライラは次第に笑顔を取り戻し、ベミリオン家で幸せになっていく。
王都で聖女が起こした騒動も知らずに……
獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。
真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。
狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。
私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。
なんとか生きてる。
でも、この世界で、私は最低辺の弱者。
悪役令嬢カテリーナでございます。
くみたろう
恋愛
………………まあ、私、悪役令嬢だわ……
気付いたのはワインを頭からかけられた時だった。
どうやら私、ゲームの中の悪役令嬢に生まれ変わったらしい。
40歳未婚の喪女だった私は今や立派な公爵令嬢。ただ、痩せすぎて骨ばっている体がチャームポイントなだけ。
ぶつかるだけでアタックをかます強靭な骨の持ち主、それが私。
40歳喪女を舐めてくれては困りますよ? 私は没落などしませんからね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる