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第二十一話 sideラヴィリオ

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 当時の俺は、自分がとても秀でた存在なのだと思い込んでいた。
 思い上がった考えの俺は、何でも思う様にうまくいくなどと思い込んだのだ。
 そんな訳はなかった。
 その後、再び少女に会うことは叶わないまま、マルクトォス帝国に戻ることとなった。
 
 国に戻った俺は、周囲の大人たちの思惑に気付かずに、いいように動かされていたことに中々気がつかなかった。
 それに気が付いた時、俺は自分のバカさ加減と、少女の言葉の裏を初めて知ったのだ。
 つまり少女は、俺の話を聞いて、「思う上がるな。お前のような凡庸な人間など吐いて捨てるほどいるんだ」と、そう言われていたことに気が付いたのだ。
 それからの俺は、自分の本心を隠し、周囲には何も考えていない皇子だと思させたまま過ごすことに決めたのだ。
 そして、幼少期に母上オモチャにされてから苦手意識を持っていた女性に対しても考えを改めることにした。
 攻撃は最大の防御と誰かが言っていたが、まさにこの考え方のお陰で俺は少しだけ生きやすくなった気がした。
 それまでは、女性から逃げるか無視を決め込んでいた。
 しかし、そうすると追いかけられたり、酷いときにはしつこく付きまとわれて公務どころではなくなったこともあったのだ。
 それなら、適度に相手をし、時には甘い言葉で惑わせる。
 その作戦は面白いほどに成功したのだ。
 瞳を合わせ、甘い言葉を口にすれば女性は黄色い声を上げて、恥ずかしそうに俺から距離を取る令嬢が増えたのだ。
 
 身を護るために、身を切る思いで苦手な女性の手を握り、見つめ合い、甘い言葉を吐き出す。
 いつしかそれが身に付き、何も考えずとも自然に甘い言葉を吐き出すようになっていた。
 
 そんな中、婚約者候補の令嬢に言われたことで俺は気が付く。
 
「あーあ、本当にバカバカしいですわ。貴方、自覚がないなんて。はぁ、阿保らしいですわ」

 最初は、何のことか分からなかった。
 だから、俺のことを良く知る部下であり友人でもあるジーンに相談したのだ。
 すると、ジーンは目を丸くさせた後に、盛大に笑いこけたのだ。
 そして、声を震わせながらジーンは呆れたように言った。
 
「お前、初恋拗らせすぎ……。くっ、くく!!」

 何のことか俺には理解できなかった。
 全く理解できていない俺に気が付いたジーンは、心底呆れたように言い放ったのだ。
 
「お前に熱を上げている令嬢は全く気が付いていないと思うが、俺やソレイユ伯爵令嬢、他にも気が付いている者は結構いるぞ?」

「何が言いたい?」

「お前のその軟派な性格が作り物で、本当は令嬢たちのことどうとも思っていないからこそ、歯の浮くようなセリフを次から次に吐き出せるって。そして、お前は、お前を変えるきっかけになった誰かと、お前に媚びる令嬢たちを比べては、落胆している」

「なんだそれは? 俺を変えるきっかけになった誰か? そんなの……」

 ジーンの言葉を否定しようとした俺は、途中で言葉を詰まらせていた。
 いつからだろう、菫色の服や小物で着飾るようになったのは。
 
 その瞬間俺は昔にあった少女のことを思い出していた。
 無礼で、可愛くて、初めて目を奪われた少女……。
 
 菫色の瞳が鮮明に頭に浮かんだ。その瞬間、胸が大きく跳ねた気がした。
 
 
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