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第十五話 sideラヴィリオ
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何だこの可愛い生き物は……。
俺の用意したケーキを俺に食べさせようとしているティアリアを見た俺の正直な感想だ。
大き目に掬われたケーキを差し出された俺は、誘われるようにそれを口にしていた。
いつもよりも甘くて、美味しいと俺は感じた。
ケーキの甘さを噛み締めていると、ティアリアが小さな声で申し出た。
「ラヴィリオ皇子殿下……。どうしてわたしなんかに優しくしてくれるのですか? わたしは、皇子殿下の利益になるような存在ではありません」
心から申し訳なさそうにそういう彼女が痛々しくて、俺は彼女を抱きしめたくて仕方なかった。
「利益とかそんなの関係ないよ。俺は、ただ君が好きなんだ。だから優しくしたいし、甘やかしたい。ただそれだけだよ」
「ですが……」
「う~ん。なら、確かめてみる?」
「確かめる? 何をですか?」
「それは、俺がどれくらい君が好きなのかをだよ」
「え? そんなの……」
戸惑う彼女が可愛くて、さっきケーキを食べさせた時にちらっと見えた、可愛らしい唇を思い出してしまった俺は、理性を総動員させて彼女を口説く。
正直、今すぐ抱きしめて、キスして、それ以上のことだってしたい。
だけど、彼女の気持ちを無視してそんなことは出来ない。
だから俺は、彼女自身に確かめてもらうことにしたのだ。
「ティアリア、どうかな?」
「手に伝わってきます」
「どんな感じ?」
「すごく早くて、手のひらに伝わってきます」
「うん。君が好きだから俺の鼓動は凄くドキドキしてるんだよ」
俺は、自らの胸にティアリアの手のひらを当てさせていた。
心臓の音は誤魔化しようがないからね。
まぁ、一流の詐欺師は違うみたいだけど。
それに、ティアリアの可愛い手が俺に触れているのに、胸が高鳴らないわけがないんだ。
彼女の存在が、俺の恋慕を募らせる。
「どうかな? 俺が君にドキドキしていることは伝わったかな?」
「…………。あの……もっと近づいてもいいですか?」
「え? あ……ああ。いいよ?」
「はい。それでは、失礼いたします」
そう言ったティアリアは、俺の胸を撫でた後に顔を近づけた。
俺の胸に顔を埋めるようにしたティアリアは気が付いているのだろうか?
俺の体に、ティアリアの細すぎる体が密着していた。
心臓は胸を突き破ってしまいそうだと思った。
「ドクンドクンって。音が大きくなりました。でも、なんだかあんしんしますぅ…………」
そう言ったティアリアは、そのまま寝落ちしていた。
すぅすぅと可愛い寝息が聞こえてきていた。
起こさないように彼女をベッドに運ぼうとしたが、そこで気が付く。
彼女が俺のシャツを強く握っていることにだ。
ティアリアへの恋を自覚する前の俺だったら、シャツを脱いでその場から立ち去っていただろう。
でも、彼女からの甘えるような行動に、そんなもったいないことなど出来なかった。
そう、これは仕方なかったんだ。
言い訳だと知っている。だが、それでもこのチャンスを逃したくなかった。
彼女を抱きしめるような格好でベッドに沈んだ俺は、彼女が俺の胸の音で安心して眠ってくれることが嬉しい反面、男として見られていないことがはっきりしてがっかりする。
「ティアリア。好きだよ。君の言葉で俺は救われた。そして、愚かな俺は目が覚めたんだ……。君が好きだ。だから、これから少しずつ俺のことを知っていって、出来れば少しでも好きになってくれ……」
俺の用意したケーキを俺に食べさせようとしているティアリアを見た俺の正直な感想だ。
大き目に掬われたケーキを差し出された俺は、誘われるようにそれを口にしていた。
いつもよりも甘くて、美味しいと俺は感じた。
ケーキの甘さを噛み締めていると、ティアリアが小さな声で申し出た。
「ラヴィリオ皇子殿下……。どうしてわたしなんかに優しくしてくれるのですか? わたしは、皇子殿下の利益になるような存在ではありません」
心から申し訳なさそうにそういう彼女が痛々しくて、俺は彼女を抱きしめたくて仕方なかった。
「利益とかそんなの関係ないよ。俺は、ただ君が好きなんだ。だから優しくしたいし、甘やかしたい。ただそれだけだよ」
「ですが……」
「う~ん。なら、確かめてみる?」
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「え? そんなの……」
戸惑う彼女が可愛くて、さっきケーキを食べさせた時にちらっと見えた、可愛らしい唇を思い出してしまった俺は、理性を総動員させて彼女を口説く。
正直、今すぐ抱きしめて、キスして、それ以上のことだってしたい。
だけど、彼女の気持ちを無視してそんなことは出来ない。
だから俺は、彼女自身に確かめてもらうことにしたのだ。
「ティアリア、どうかな?」
「手に伝わってきます」
「どんな感じ?」
「すごく早くて、手のひらに伝わってきます」
「うん。君が好きだから俺の鼓動は凄くドキドキしてるんだよ」
俺は、自らの胸にティアリアの手のひらを当てさせていた。
心臓の音は誤魔化しようがないからね。
まぁ、一流の詐欺師は違うみたいだけど。
それに、ティアリアの可愛い手が俺に触れているのに、胸が高鳴らないわけがないんだ。
彼女の存在が、俺の恋慕を募らせる。
「どうかな? 俺が君にドキドキしていることは伝わったかな?」
「…………。あの……もっと近づいてもいいですか?」
「え? あ……ああ。いいよ?」
「はい。それでは、失礼いたします」
そう言ったティアリアは、俺の胸を撫でた後に顔を近づけた。
俺の胸に顔を埋めるようにしたティアリアは気が付いているのだろうか?
俺の体に、ティアリアの細すぎる体が密着していた。
心臓は胸を突き破ってしまいそうだと思った。
「ドクンドクンって。音が大きくなりました。でも、なんだかあんしんしますぅ…………」
そう言ったティアリアは、そのまま寝落ちしていた。
すぅすぅと可愛い寝息が聞こえてきていた。
起こさないように彼女をベッドに運ぼうとしたが、そこで気が付く。
彼女が俺のシャツを強く握っていることにだ。
ティアリアへの恋を自覚する前の俺だったら、シャツを脱いでその場から立ち去っていただろう。
でも、彼女からの甘えるような行動に、そんなもったいないことなど出来なかった。
そう、これは仕方なかったんだ。
言い訳だと知っている。だが、それでもこのチャンスを逃したくなかった。
彼女を抱きしめるような格好でベッドに沈んだ俺は、彼女が俺の胸の音で安心して眠ってくれることが嬉しい反面、男として見られていないことがはっきりしてがっかりする。
「ティアリア。好きだよ。君の言葉で俺は救われた。そして、愚かな俺は目が覚めたんだ……。君が好きだ。だから、これから少しずつ俺のことを知っていって、出来れば少しでも好きになってくれ……」
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