軟派チャラ皇子はバケモノ王女を溺愛中!?

バナナマヨネーズ

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第十一話

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 眠ってしまっていたのは、ほんの僅かな時間だったみたいだけど、わたしの頭は今までにない位、スッキリとしていた。
 全身をローザ様の手で揉み解されたわたしはがぼんやりとしている間に服を着せられて、気が付いた時には身支度が整えられてしまっていた。
 わたしが元々着ていた服ではない、質のよさそうな手触りの服と、ベール。
 流石に顔に巻く布の用意はされていないので、どうにかして布を用意しなければならない。
 ローザ様は、約束を守ってくれたようで、わたしのベールを被せた後に目隠しを外している様子が伝わってきた。
 
「ありがとうございます……。でも……」

 お礼を口にしつつも、ついつい疑問の声が口を衝いて出てしまった。
 そんなわたしの疑問にローザ様は、何でもないことのように説明してくれたんだけど、その返答はちょっと……? ううん。全然普通じゃなかったわ。
 
「大丈夫です。私はどんな状況下でも動けるように訓練を積んでいますので、視界を奪われていても問題なく動けます。なので、何時如何なる時でもお任せください」

 訓練でどうにかなる問題なのか無知な私には分からないけれど、ローザ様がそう言うのならそうなのだろう。
 そうだ、訓練でどうにか出来る問題なのであれば、わたしもその技術を身に着けられるのだろうか?
 両目を奪われ、なにも見ることのできないわたしにその技術があればと考えてしまう。
 今のわたしは、体に残っている魔力を周囲に広げて、その魔力の広がり具合で周囲の状況を確認しているけど、それも万能ではないのだ。
 そんなことを考えているうちに、ローザ様が皇子殿下を室内にお連れてしていたようだった。
 
 
「ああ、なんて可憐なんだ! ローザ、よくやったぞ!」

「お褒めに預かり光栄に存じます」

「うんうん。薄桃色のドレスがよく似合っている。ローザがサイズを少し直してくれたみたいだが……。ローザ、明日、ドレスサロンのオーナーを呼んでおいてくれ」

「かしこまりました」

「ツインテールも最高だ! ベールから見える銀色の髪がいい感じだ!」

 ラヴィリオ皇子殿下は、そう言いながらわたしの周りをぐるぐる歩いていた。
 気が済んだようで、わたしの周囲を歩くのを止めたラヴィリオ皇子殿下は、わたしの手を引いてソファーに座るように促してきた。
 
「さあ、ティアリア。座って。渡したいものがあるんだ。ローザは、部屋を出ていてくれ」

「かしこまりました」

 ローザ様が部屋を出て行く音をぼんやりと聞いていたわたしは、ラヴィリオ皇子殿下の声にびくりと反応してしまった。
 
「ティアリア」

「ひゃい……」

 はずかしい……。ひゃいって何よ……。
 この場所は、温かくて、優しくて、調子が狂う。普段のわたしだったら、こんな醜態を晒すような真似はしない。
 えい、そもそもディスポーラ王国にいた時は、わたしに話しかける人なんていなかったから、比較する対象がなかったわね……。
 はぁ……。なんて間抜けなの。
 
「可愛い……。恥ずかしそうなティアリアもいいな……。っん。ゴホン。それで、ティアリア。改めてなんだけど、君に受け取ってもらいたいものがあるんだ。急遽用意したものだから、ちょっとあれなんだけど。明日、改めて、サロンのオーナーを呼んだ時にちゃんとしたものを贈るから、今はこれを」

 そう言ってラヴィリオ皇子殿下は、わたしに何かを出しだしたの。
 どうしたらいいのか分からないわたしが、固まっていると、ラヴィリオ皇子殿下は、わたしに触れると告げた後にわたしの手に何かを握らせたのだ。
 それは、柔らかくて、すべすべで、空気のように軽かった。
 首を傾げるわたしに向かって、ラヴィリオ皇子殿下は言ったの。
 
「これを使って欲しい」

 そう言われたわたしは、手にある物の用途がようやくわかったのだ。
 これは、眼帯だ。
 ラヴィリオ皇子殿下の気遣い。
 やっぱり、あの時見られてたんだ。
 ベールの下の左右の眼球がない目元を隠すためのボロボロの布切れが巻かれたわたしの醜い素顔……。
 それなのに、こんな気遣いをしてくれる優しい人。
 普通なら、好奇心だったり、興味本位で目のことを聞きたいでしょうに、このお方は何も聞かずにこうやって、わたしを気遣ってくれる。
 なんて優しい人なんだろう……。
 悩んだのはほんの数秒だった。
 
「……。ありがとうございます。大切に使わせていただきますね」

「うん。さあ、俺は目を瞑って、下だけを見ているから」

「はい……。ありがとうございます」

 ラヴィリオ皇子殿下が下を向く気配を感じたわたしは、急いでもらった眼帯で目元を覆った。
 柔らかで、そして甘い香りに、なんとなくラヴィリオ皇子殿下を思い浮かべる。
 そんなことを考えている自分が恥ずかしくなって、わたしはそれを誤魔化すように急いでベールで顔を覆っていた。
 
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