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第九話
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ラヴィリオ皇子殿下の話を聞きながら馬車に揺られているうちに、いつの間にか皇城に着いていた。
「着いたよ。さあ、ティアリア行こうか。うん。ちょっと失礼するよ」
そう言ったラヴィリオ皇子殿下が、わたしの手をきゅっと握ったと思ったら、次の瞬間体がふわりと浮いたように感じた。
驚いていると、わたしの頭上からラヴィリオ皇子殿下の声が聞こえてきて、わたしの今の状態がとんでもないことになっていることに気が付いてしまった。
「軽い……。あっ、ごめんね。でも、俺は花嫁殿をドロドロに甘やかして大切にしたいんだ。だから、大人しく抱っこさせてね?」
だ……抱っこ……。
だだだだだだ抱っこぉぉぉぉぉ!!!
確か、抱っことは恋人同士がイチャイチャするときにやるアレよね?
まさか抱っこされるとは思っていなかったわたしは、完全に体がカチコチに固まっていた。
わたしを軽々と抱き上げたラヴィリオ皇子殿下の逞しい腕を背中と、膝裏に感じたわたしは多分ベールで隠れて見えないと思うけど、確実に赤くなっている顔を両手で覆っていた。
そんなわたしの様子を見ていたのだろう、ラヴィリオ皇子殿下はくすりと笑ってまたしても軽い調子で言うのだ。
「ああ、俺のお嫁さんはなんて可愛いんだ。好き。好きだよティアリア」
なんとなくこの言葉は本心な気がした。
だって、ラヴィリオ皇子殿下の胸の鼓動は凄くドキドキと大きな音がしていたのだもの。
好意の現われのようなその音がもっと聞きたくなったわたしは、無意識に彼の胸に顔を埋めていた。
その鼓動を確かめるようにラヴィリオ皇子殿下の胸に手を当てて、優しい鼓動に聴き入る。
そうしていると、鼓動はドンドン速く、大きくなっていったわ。
「くぅ~~。駄目だ俺、ティアリアは無意識。そんな気は全然ないんだから、勘違いしたら駄目だ。耐えろ俺」
わたしの頭上で何かをぶつぶつ呟くラヴィリオ皇子殿下だったけど、すぐにいつもの様子に戻っていた。
「ティアリア。最初に用意した部屋に案内するね。そこで身支度を整えた後に父上に挨拶に行こう」
身支度!
駄目……。すぐに断らないと。ああ、でも皇帝陛下にご挨拶するのに今のわたしの格好は相応しくないことは分かっているけど……。
どうしよう……。
「ティアリア? 大丈夫だ。信頼のおける侍女を付けるから。だから大丈夫。ここは、君に酷いことをする者はいない。俺がそんなこと絶対に許さないから。だから大丈夫」
怖い声になったのは一瞬で、いつもの軽い調子に戻ったラヴィリオ皇子殿下は、そう言ってぎゅっとわたしのことを抱きしめてくれた。
それでも、怖いものは怖かった。
ラヴィリオ皇子殿下に抱っこされたまま案内された部屋は、とても広い部屋だった。
ソファーに優しく降ろされたわたしは、こんな広すぎる部屋に居心地の悪さを感じていた。
そんなわたしに気が付いたラヴィリオ皇子殿下は、楽しそうに言うの。
「大丈夫。そんなに緊張しないで? あっ、お茶とお菓子も用意させるね。ああ、来たね」
ラヴィリオ皇子殿下がそう言うのと同時に扉がノックされた。
「入って」
入室を許された誰かは、音もなく静かな仕草で入室してきて言ったわ。
「失礼いたします。皇子殿下。ローザ・シュニッツァ参りました。これから、王女殿下に誠心誠意お仕えいたします。王女殿下、ローザと申します。何なりとお申し付けください」
丁寧な口調でそう言った女性は深々と頭を下げる気配を感じたわたしはどうしていいのか分からなかった。
未だかつてこんなに丁寧な仕草で挨拶なんてされたことがなかった。
わたしをここまで連れてきてくれた男性。ジーン様も丁寧な感じだったけど、その比ではなかった。
わたしが戸惑っていると、ローザ様が優しく、それでいて有無を言わせない口調で言ったの。
「では、皇子殿下は自室でお待ちくださいませ」
「なっ! 嫌だ! 俺はティアリアと離れたくない!」
「駄目ですよ。皇子殿下。これから、王女殿下には身支度をしていただくのですから、男性は退室願います」
「……。わかった……。だが、これだけは譲れない。ティアリアの衣装は、薄桃色で頼む。それと、フリルが付いていて裾がふんわりとしているものを希望する。それと、絶対にツインテールで頼む!!」
今までの軽い調子が嘘のような真剣な声音で言い放たれた内容にわたしは頭を傾げていた。
ついんてーるってなんのことかしら? 二つの尻尾? でも、ラヴィリオ皇子殿下の感じからとても重要な何かなことは理解できたわ。
うん。この身に何が起きても受け入れよう。
「着いたよ。さあ、ティアリア行こうか。うん。ちょっと失礼するよ」
そう言ったラヴィリオ皇子殿下が、わたしの手をきゅっと握ったと思ったら、次の瞬間体がふわりと浮いたように感じた。
驚いていると、わたしの頭上からラヴィリオ皇子殿下の声が聞こえてきて、わたしの今の状態がとんでもないことになっていることに気が付いてしまった。
「軽い……。あっ、ごめんね。でも、俺は花嫁殿をドロドロに甘やかして大切にしたいんだ。だから、大人しく抱っこさせてね?」
だ……抱っこ……。
だだだだだだ抱っこぉぉぉぉぉ!!!
確か、抱っことは恋人同士がイチャイチャするときにやるアレよね?
まさか抱っこされるとは思っていなかったわたしは、完全に体がカチコチに固まっていた。
わたしを軽々と抱き上げたラヴィリオ皇子殿下の逞しい腕を背中と、膝裏に感じたわたしは多分ベールで隠れて見えないと思うけど、確実に赤くなっている顔を両手で覆っていた。
そんなわたしの様子を見ていたのだろう、ラヴィリオ皇子殿下はくすりと笑ってまたしても軽い調子で言うのだ。
「ああ、俺のお嫁さんはなんて可愛いんだ。好き。好きだよティアリア」
なんとなくこの言葉は本心な気がした。
だって、ラヴィリオ皇子殿下の胸の鼓動は凄くドキドキと大きな音がしていたのだもの。
好意の現われのようなその音がもっと聞きたくなったわたしは、無意識に彼の胸に顔を埋めていた。
その鼓動を確かめるようにラヴィリオ皇子殿下の胸に手を当てて、優しい鼓動に聴き入る。
そうしていると、鼓動はドンドン速く、大きくなっていったわ。
「くぅ~~。駄目だ俺、ティアリアは無意識。そんな気は全然ないんだから、勘違いしたら駄目だ。耐えろ俺」
わたしの頭上で何かをぶつぶつ呟くラヴィリオ皇子殿下だったけど、すぐにいつもの様子に戻っていた。
「ティアリア。最初に用意した部屋に案内するね。そこで身支度を整えた後に父上に挨拶に行こう」
身支度!
駄目……。すぐに断らないと。ああ、でも皇帝陛下にご挨拶するのに今のわたしの格好は相応しくないことは分かっているけど……。
どうしよう……。
「ティアリア? 大丈夫だ。信頼のおける侍女を付けるから。だから大丈夫。ここは、君に酷いことをする者はいない。俺がそんなこと絶対に許さないから。だから大丈夫」
怖い声になったのは一瞬で、いつもの軽い調子に戻ったラヴィリオ皇子殿下は、そう言ってぎゅっとわたしのことを抱きしめてくれた。
それでも、怖いものは怖かった。
ラヴィリオ皇子殿下に抱っこされたまま案内された部屋は、とても広い部屋だった。
ソファーに優しく降ろされたわたしは、こんな広すぎる部屋に居心地の悪さを感じていた。
そんなわたしに気が付いたラヴィリオ皇子殿下は、楽しそうに言うの。
「大丈夫。そんなに緊張しないで? あっ、お茶とお菓子も用意させるね。ああ、来たね」
ラヴィリオ皇子殿下がそう言うのと同時に扉がノックされた。
「入って」
入室を許された誰かは、音もなく静かな仕草で入室してきて言ったわ。
「失礼いたします。皇子殿下。ローザ・シュニッツァ参りました。これから、王女殿下に誠心誠意お仕えいたします。王女殿下、ローザと申します。何なりとお申し付けください」
丁寧な口調でそう言った女性は深々と頭を下げる気配を感じたわたしはどうしていいのか分からなかった。
未だかつてこんなに丁寧な仕草で挨拶なんてされたことがなかった。
わたしをここまで連れてきてくれた男性。ジーン様も丁寧な感じだったけど、その比ではなかった。
わたしが戸惑っていると、ローザ様が優しく、それでいて有無を言わせない口調で言ったの。
「では、皇子殿下は自室でお待ちくださいませ」
「なっ! 嫌だ! 俺はティアリアと離れたくない!」
「駄目ですよ。皇子殿下。これから、王女殿下には身支度をしていただくのですから、男性は退室願います」
「……。わかった……。だが、これだけは譲れない。ティアリアの衣装は、薄桃色で頼む。それと、フリルが付いていて裾がふんわりとしているものを希望する。それと、絶対にツインテールで頼む!!」
今までの軽い調子が嘘のような真剣な声音で言い放たれた内容にわたしは頭を傾げていた。
ついんてーるってなんのことかしら? 二つの尻尾? でも、ラヴィリオ皇子殿下の感じからとても重要な何かなことは理解できたわ。
うん。この身に何が起きても受け入れよう。
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