58 / 71
第二部
第58話 変質者の正体
しおりを挟む
変質者が現れたと思ったら、今度はファニスさん達が頭を下げる事態に発展したことに私達は困惑した。
何やら訳ありのようで、話を聞かないことにはこの状況から抜け出せないと判断した私達は、ファニスさん達に訳を聞くことにした。
「頭を上げて下さい。言える範囲で良いので訳を話して下さいませんか?」
「そうですね。団長、宰相、私から説明しても?」
「頼む」
「お願いします」
二人の許可を得たファニスさんは私達に変質者について説明してくれた。
「こいつは、フィーニス・リムという。残念ながら、私の実の弟にして、聖女研究の第一人者だ」
「「「えーーー!!」」」
ファニスさんから変質者の素性を聞いた私達三人は驚いて声を上げてしまった。
ファニスさんは、苦笑いで話を続けた。
「こいつは、昔から聖女の事が好きで、聖女の研究ばかりしていた。今回の召喚についても、こいつの助力があって初めて成し得たことなんだ。しかし、聖女好きが行き過ぎているのもあって、度々周りに多大なる迷惑をかけている」
そこまでファニスさんが話すと、今度はジョエルさんが引き続き説明をしてくれた。
「実は、異世界からの召喚について不明な点があって、今まで出来なかったのだが、フィーニスのお陰で謎が解明されて、今回儀式を数百年ぶりに行うことが出来たのだ。失われた、召喚の儀式について解明してくれた、この世界のある意味救世主なのだが……。この言動のため、あまり表沙汰には出来ない人物なのだ」
確かに、見知らぬ女性に構わず抱きつく救世主だなんて表に出せないわね。そんなことを考えていると、フィーニスさんが私の顔を凝視していたことに気づくのが遅れてしまった。
「ねえ、召喚された聖女さん?君の目はもしかして?」
そう言って、フィーニスさんは手を伸ばしてきた。もう少しで私に届くというところで、駆君がその手を叩き落したのだ。
「おい、変質者。こいつは錬金術師だ。聖女は奥にいる二人だ」
そう言って、私を背中に隠すようにフィーニスさんとの間に移動して、武藤さん達を指示した。
「ちょっ!東堂、その変態がこっちに来たらどうすんのよ!!」
武藤さんは、自分達が生贄にされたと、駆君を非難しながら、ガルドさんの近くに移動した。鈴木さんも一緒にガルドさんの背中に隠れるようにしながら、駆君を睨んでいた。
鼻をひくつかせたフィーニスさんは首をかしげながら、「おかしいな?変だな?」とぶつぶつ言っていたけど、ファニスさんに「おい!お前は反省も出来ないのか!!」と叱られて、ようやく私達に向かって謝罪したと思ったけど、そうでもなかった。
「申し訳ない。ボクは聖女について研究をしている、フィーニスと言います。先ほどは申し訳ございませんでした。聖女の事になると、ほんの少し我を忘れてしまうものでして。ただ、不思議なことに、そちらの二人よりも、眼帯の少女から馨しい香りがするものでして、もっと嗅いでも?というか舐めてもいいですか?舐めたいです。ちょっとでいいので!これは、研究の一環です。ただ、趣味で舐めたいのと訳が違います。ボクのこの欲求は崇高な―――」
そこまで一気に話したフィーニスさんは駆君とタイガ君の二人に無言で回し蹴りと踵落としをされて床に沈み込んでしまった。
それを見たファニスさん達は、「この変態が申し訳ございません!!」と話が降り出しに戻ってしまったけど、これはフィーニスさんの自業自得だと思うの。
何やら訳ありのようで、話を聞かないことにはこの状況から抜け出せないと判断した私達は、ファニスさん達に訳を聞くことにした。
「頭を上げて下さい。言える範囲で良いので訳を話して下さいませんか?」
「そうですね。団長、宰相、私から説明しても?」
「頼む」
「お願いします」
二人の許可を得たファニスさんは私達に変質者について説明してくれた。
「こいつは、フィーニス・リムという。残念ながら、私の実の弟にして、聖女研究の第一人者だ」
「「「えーーー!!」」」
ファニスさんから変質者の素性を聞いた私達三人は驚いて声を上げてしまった。
ファニスさんは、苦笑いで話を続けた。
「こいつは、昔から聖女の事が好きで、聖女の研究ばかりしていた。今回の召喚についても、こいつの助力があって初めて成し得たことなんだ。しかし、聖女好きが行き過ぎているのもあって、度々周りに多大なる迷惑をかけている」
そこまでファニスさんが話すと、今度はジョエルさんが引き続き説明をしてくれた。
「実は、異世界からの召喚について不明な点があって、今まで出来なかったのだが、フィーニスのお陰で謎が解明されて、今回儀式を数百年ぶりに行うことが出来たのだ。失われた、召喚の儀式について解明してくれた、この世界のある意味救世主なのだが……。この言動のため、あまり表沙汰には出来ない人物なのだ」
確かに、見知らぬ女性に構わず抱きつく救世主だなんて表に出せないわね。そんなことを考えていると、フィーニスさんが私の顔を凝視していたことに気づくのが遅れてしまった。
「ねえ、召喚された聖女さん?君の目はもしかして?」
そう言って、フィーニスさんは手を伸ばしてきた。もう少しで私に届くというところで、駆君がその手を叩き落したのだ。
「おい、変質者。こいつは錬金術師だ。聖女は奥にいる二人だ」
そう言って、私を背中に隠すようにフィーニスさんとの間に移動して、武藤さん達を指示した。
「ちょっ!東堂、その変態がこっちに来たらどうすんのよ!!」
武藤さんは、自分達が生贄にされたと、駆君を非難しながら、ガルドさんの近くに移動した。鈴木さんも一緒にガルドさんの背中に隠れるようにしながら、駆君を睨んでいた。
鼻をひくつかせたフィーニスさんは首をかしげながら、「おかしいな?変だな?」とぶつぶつ言っていたけど、ファニスさんに「おい!お前は反省も出来ないのか!!」と叱られて、ようやく私達に向かって謝罪したと思ったけど、そうでもなかった。
「申し訳ない。ボクは聖女について研究をしている、フィーニスと言います。先ほどは申し訳ございませんでした。聖女の事になると、ほんの少し我を忘れてしまうものでして。ただ、不思議なことに、そちらの二人よりも、眼帯の少女から馨しい香りがするものでして、もっと嗅いでも?というか舐めてもいいですか?舐めたいです。ちょっとでいいので!これは、研究の一環です。ただ、趣味で舐めたいのと訳が違います。ボクのこの欲求は崇高な―――」
そこまで一気に話したフィーニスさんは駆君とタイガ君の二人に無言で回し蹴りと踵落としをされて床に沈み込んでしまった。
それを見たファニスさん達は、「この変態が申し訳ございません!!」と話が降り出しに戻ってしまったけど、これはフィーニスさんの自業自得だと思うの。
5
お気に入りに追加
133
あなたにおすすめの小説
そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
笑顔の花は孤高の断崖にこそ咲き誇る
はんぺん千代丸
恋愛
私は侯爵家の令嬢リリエッタ。
皆様からは笑顔が素敵な『花の令嬢』リリエッタと呼ばれています。
私の笑顔は、婚約者である王太子サミュエル様に捧げるためのものです。
『貴族の娘はすべからく笑って男に付き従う『花』であるべし』
お父様のその教えのもと、私は『花の令嬢』として笑顔を磨き続けてきました。
でも、殿下が選んだ婚約者は、私ではなく妹のシルティアでした。
しかも、私を厳しく躾けてきたお父様も手のひらを返して、私を見捨てたのです。
全てを失った私は、第二王子のもとに嫁ぐよう命じられました。
第二王子ラングリフ様は、生来一度も笑ったことがないといわれる孤高の御方。
決して人を寄せ付けない雰囲気から、彼は『断崖の君』と呼ばれていました。
実は、彼には笑うことができない、とある理由があったのです。
作られた『笑顔』しか知らない令嬢が、笑顔なき王子と出会い、本当の愛を知る。
異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ
トール
恋愛
会社帰り、駅までの道程を歩いていたはずの北野 雅(36)は、いつの間にか森の中に佇んでいた。困惑して家に帰りたいと願った雅の前に現れたのはなんと実家を模した家で!?
自身が願った事が現実になる能力を手に入れた雅が望んだのは冒険ではなく、“森に引きこもって生きる! ”だった。
果たして雅は独りで生きていけるのか!?
実は神様になっていたズボラ女と、それに巻き込まれる人々(神々)とのドタバタラブ? コメディ。
※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています
公爵令嬢 メアリの逆襲 ~魔の森に作った湯船が 王子 で溢れて困ってます~
薄味メロン
恋愛
HOTランキング 1位 (2019.9.18)
お気に入り4000人突破しました。
次世代の王妃と言われていたメアリは、その日、すべての地位を奪われた。
だが、誰も知らなかった。
「荷物よし。魔力よし。決意、よし!」
「出発するわ! 目指すは源泉掛け流し!」
メアリが、追放の準備を整えていたことに。
二度目の召喚なんて、聞いてません!
みん
恋愛
私─神咲志乃は4年前の夏、たまたま学校の図書室に居た3人と共に異世界へと召喚されてしまった。
その異世界で淡い恋をした。それでも、志乃は義務を果たすと居残ると言う他の3人とは別れ、1人日本へと還った。
それから4年が経ったある日。何故かまた、異世界へと召喚されてしまう。「何で!?」
❋相変わらずのゆるふわ設定と、メンタルは豆腐並みなので、軽い気持ちで読んでいただけると助かります。
❋気を付けてはいますが、誤字が多いかもしれません。
❋他視点の話があります。
「お前を愛するつもりはない」な仮面の騎士様と結婚しました~でも白い結婚のはずなのに溺愛してきます!~
卯月ミント
恋愛
「お前を愛するつもりはない」
絵を描くのが趣味の侯爵令嬢ソールーナは、仮面の英雄騎士リュクレスと結婚した。
だが初夜で「お前を愛するつもりはない」なんて言われてしまい……。
ソールーナだって好きでもないのにした結婚である。二人はお互いカタチだけの夫婦となろう、とその夜は取り決めたのだが。
なのに「キスしないと出られない部屋」に閉じ込められて!?
「目を閉じてくれるか?」「えっ?」「仮面とるから……」
書き溜めがある内は、1日1~話更新します
それ以降の更新は、ある程度書き溜めてからの投稿となります
*仮面の俺様ナルシスト騎士×絵描き熱中令嬢の溺愛ラブコメです。
*ゆるふわ異世界ファンタジー設定です。
*コメディ強めです。
*hotランキング14位行きました!お読みいただき&お気に入り登録していただきまして、本当にありがとうございます!
【完結】公爵令嬢に転生したので両親の決めた相手と結婚して幸せになります!
永倉伊織
恋愛
ヘンリー・フォルティエス公爵の二女として生まれたフィオナ(14歳)は、両親が決めた相手
ルーファウス・ブルーム公爵と結婚する事になった。
だがしかし
フィオナには『昭和・平成・令和』の3つの時代を生きた日本人だった前世の記憶があった。
貴族の両親に逆らっても良い事が無いと悟ったフィオナは、前世の記憶を駆使してルーファウスとの幸せな結婚生活を模索する。
嫌われ貧乏令嬢と冷酷将軍
バナナマヨネーズ
恋愛
貧乏男爵令嬢のリリル・クロケットは、貴族たちから忌み嫌われていた。しかし、父と兄に心から大切にされていたことで、それを苦に思うことはなかった。そんなある日、隣国との戦争を勝利で収めた祝いの宴で事件は起こった。軍を率いて王国を勝利に導いた将軍、フェデュイ・シュタット侯爵がリリルの身を褒美として求めてきたのだ。これは、勘違いに勘違いを重ねてしまうリリルが、恋を知り愛に気が付き、幸せになるまでの物語。
全11話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる