錬金術師の恋

バナナマヨネーズ

文字の大きさ
上 下
2 / 71
第一部

第2話 異世界に来てしまったそうです

しおりを挟む
 私達を包んだ強烈な光が治まったところで私は目を開けた。
 目の前に広がる光景に私は驚きに目を丸くしていたと思うの。
 だって、さっきまでいた教室とは全く異なる場所だったのだから。

 頭上は雲ひとつない快晴。
 足元は、石畳の上に何かの呪文?が描かれた魔法陣のようなものがあったのだ。
 私たちは、見たこともない見知らぬ開けた場所に座り込んでいた。
 クラスメイトたちがざわつきだしたそのタイミングで、数人のローブを羽織った男性が近づいてきた。
 その中で、ただ一人ローブを羽織っていない若い男性が口を開いたのだ。

「皆さま、突然のことで大変驚かれたと思いますが、落ち着いて私の話を聞いてください」

 そう言って、私たちを見わたした後に再度口を開いたのだ。
 そして、男性が語る驚くべき内容に、私たちは何一つ口をはさむことが出来なかった。

「私は、ステイル聖王国第一王子、エルンスト・ステイルです。私たちの国は、魔の森と呼ばれる場所と隣接した場所にあります。国は、巫女の力で張られた結界により魔物から守られていました。しかし、年々巫女の資格を持つ者の出生が減少しており、結界の維持が困難となっています。そのため、過去にも同様の危機が迫った際に行われた異世界から力あるものを召喚する儀式を執り行ったのが今の現状です」

 そう言って、第一王子は私たちに向かって頭を下げた。
 第一王子の後ろに控えていたローブの人たちは更に、頭を下げたうえに膝をついたのだ。
 そう、DO・GE・ZAですよ。

「私たちの国の事情に巻き込んでしまったこと、心から申し訳なく思う。しかし、私たちに力を貸してほしいのです」

 更に、頭を下げて第一王子は話を続けた。

「この儀式は、一度使用すると100年は再使用出来ない。そのため、あなた達を元の場所に戻すことはできない。あなた達の身の安全は保証する。身勝手な事だとは思うが、なにとぞお力をお貸しください」


 話を聞いたクラス全体がしんと静まり返った。
 青い顔をする者、何を思ってか喜びの表情を浮かべる者、全く自体が理解できないという顔をする者。
 私は、たぶん青い顔をしていたと思う。

 だって、もう家には帰れないと言われたのだ。全く知らない世界でこれから生きて行かないといけないのだ。
 喜んでいる人の気が知れない。
 ただでさえ、クラスでお友達の一人も出来なかった私が、異世界で生きていけるとは思えない。
 孤独は人を殺すのだ。
 私は、楽しく生きて行きたいのだ。

「やったぜ!!これが夢にまで見た異世界召喚!魔法は?魔法は使えるのか?」

 そんな中、喜んだ表情をしていた内の一人が突然はしゃぎだしたのだ。
 それは、クラスの中心グループの男子だった。
 たしか、田中?中田?田村?村田?
 まぁ、何でもいいか。

「はい。魔法は存在します。この世界は誰しも魔法を使えます。というより、生活魔法が使えないと不便ですからね」

 そう言って、第一王子は困った顔をして見せた。
 第一王子は、所謂イケメンと言われる顔立ちなので、女の子たちはその困り顔に赤くなっていた。
 そんな女の子たちを可愛いと私は思った。
 うぅぅっ……、女の子のお友達急募です。


 第一王子の話を要約すると、この世界では、生活魔法と呼ばれる必須魔法があるそうです。

 魔法其の一・水魔法
 これは、書いて字の如く水を出す魔法。飲み水として利用可能だそうだ。

 魔法其の二・火魔法
 これも、書いて字の如し火を出す魔法。ライターいらずで便利。

 魔法其の三・風魔法
 風を出せるらしいが、いまいち有用な使い方が分からなそうだ。洗濯物を乾かせそうな魔法でいいと私は思うわ。

 以上、この三つが生活魔法と言われる誰にでも使える魔法なのだとか。

 そしてこれから私たちは、職業適性検査とやらを受けたうえで、今後の方針を決めることになったのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?

氷雨そら
恋愛
 結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。  そしておそらく旦那様は理解した。  私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。  ――――でも、それだって理由はある。  前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。  しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。 「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。  そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。  お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!  かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。  小説家になろうにも掲載しています。

笑顔の花は孤高の断崖にこそ咲き誇る

はんぺん千代丸
恋愛
 私は侯爵家の令嬢リリエッタ。  皆様からは笑顔が素敵な『花の令嬢』リリエッタと呼ばれています。  私の笑顔は、婚約者である王太子サミュエル様に捧げるためのものです。 『貴族の娘はすべからく笑って男に付き従う『花』であるべし』  お父様のその教えのもと、私は『花の令嬢』として笑顔を磨き続けてきました。  でも、殿下が選んだ婚約者は、私ではなく妹のシルティアでした。  しかも、私を厳しく躾けてきたお父様も手のひらを返して、私を見捨てたのです。  全てを失った私は、第二王子のもとに嫁ぐよう命じられました。  第二王子ラングリフ様は、生来一度も笑ったことがないといわれる孤高の御方。  決して人を寄せ付けない雰囲気から、彼は『断崖の君』と呼ばれていました。  実は、彼には笑うことができない、とある理由があったのです。  作られた『笑顔』しか知らない令嬢が、笑顔なき王子と出会い、本当の愛を知る。

異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ

トール
恋愛
会社帰り、駅までの道程を歩いていたはずの北野 雅(36)は、いつの間にか森の中に佇んでいた。困惑して家に帰りたいと願った雅の前に現れたのはなんと実家を模した家で!? 自身が願った事が現実になる能力を手に入れた雅が望んだのは冒険ではなく、“森に引きこもって生きる! ”だった。 果たして雅は独りで生きていけるのか!? 実は神様になっていたズボラ女と、それに巻き込まれる人々(神々)とのドタバタラブ? コメディ。 ※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています

公爵令嬢 メアリの逆襲 ~魔の森に作った湯船が 王子 で溢れて困ってます~

薄味メロン
恋愛
 HOTランキング 1位 (2019.9.18)  お気に入り4000人突破しました。  次世代の王妃と言われていたメアリは、その日、すべての地位を奪われた。  だが、誰も知らなかった。 「荷物よし。魔力よし。決意、よし!」 「出発するわ! 目指すは源泉掛け流し!」  メアリが、追放の準備を整えていたことに。

二度目の召喚なんて、聞いてません!

みん
恋愛
私─神咲志乃は4年前の夏、たまたま学校の図書室に居た3人と共に異世界へと召喚されてしまった。 その異世界で淡い恋をした。それでも、志乃は義務を果たすと居残ると言う他の3人とは別れ、1人日本へと還った。 それから4年が経ったある日。何故かまた、異世界へと召喚されてしまう。「何で!?」 ❋相変わらずのゆるふわ設定と、メンタルは豆腐並みなので、軽い気持ちで読んでいただけると助かります。 ❋気を付けてはいますが、誤字が多いかもしれません。 ❋他視点の話があります。

「お前を愛するつもりはない」な仮面の騎士様と結婚しました~でも白い結婚のはずなのに溺愛してきます!~

卯月ミント
恋愛
「お前を愛するつもりはない」 絵を描くのが趣味の侯爵令嬢ソールーナは、仮面の英雄騎士リュクレスと結婚した。 だが初夜で「お前を愛するつもりはない」なんて言われてしまい……。 ソールーナだって好きでもないのにした結婚である。二人はお互いカタチだけの夫婦となろう、とその夜は取り決めたのだが。 なのに「キスしないと出られない部屋」に閉じ込められて!? 「目を閉じてくれるか?」「えっ?」「仮面とるから……」 書き溜めがある内は、1日1~話更新します それ以降の更新は、ある程度書き溜めてからの投稿となります *仮面の俺様ナルシスト騎士×絵描き熱中令嬢の溺愛ラブコメです。 *ゆるふわ異世界ファンタジー設定です。 *コメディ強めです。 *hotランキング14位行きました!お読みいただき&お気に入り登録していただきまして、本当にありがとうございます!

【完結】公爵令嬢に転生したので両親の決めた相手と結婚して幸せになります!

永倉伊織
恋愛
ヘンリー・フォルティエス公爵の二女として生まれたフィオナ(14歳)は、両親が決めた相手 ルーファウス・ブルーム公爵と結婚する事になった。 だがしかし フィオナには『昭和・平成・令和』の3つの時代を生きた日本人だった前世の記憶があった。 貴族の両親に逆らっても良い事が無いと悟ったフィオナは、前世の記憶を駆使してルーファウスとの幸せな結婚生活を模索する。

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈 
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

処理中です...