聖女様から「悪役令嬢竹生える」と言われた男爵令嬢は、王太子の子を身籠ってしまったので、全力で身を隠すことにしました。

バナナマヨネーズ

文字の大きさ
上 下
12 / 13

第十二話 魔王討伐時の真実

しおりを挟む
 遠い目をしながら、聖女のしでかしを告げたユーリに、ジグは驚くことしかできなかった。
 ジグは、聖女のことを思い出しながら、魔王討伐の最終決戦の時のことを思い出すのだ。
 
 理子は、魔王軍の根城を目の前にして、こう言って走りだったのだ。
 
「よし。それじゃ、私の役目はここまでってことで。私、四天王最弱の推しを救いに行かないといけないから、行くわ~」

 軽い調子でそう言った理子は、あっという間に戦火に紛れて見えなくなっていた。
 もともと、理子は戦力としてではなく、一種のアドバイザーのような役目で旅に同行していたため、いなくなっても戦力的に問題はなかったのだ。
 呆気に取られながらも、理子に教えられた通りに根城の中を進んでいくと、これまた教えられた通りの展開が待っていたのだ。
 そこには、四天王と名乗る魔王の直属の配下がいたのだ。
 しかし、四天王というには一人足りず、ジグたちは首を傾げるのだった。
 それでも、戦いは待ってはくれなかったのだ。
 四天王(一人足りない)は、物凄い勢いでジグたちに襲い掛かってきたのだ。
 事前に、ユーリとジグ以外で四天王を抑えることになっていたため、ここでオーエンたちと別れることになるのだ。
 
 ジグとユーリは、二人で魔王がいると教えられた、城の庭園に移動していた。
 そこで、事前に理子から言われていた手順通りに、ジグが素早く魔法をかけていくのだ。
 出会い頭に、弱体の魔法を放ってから、敢えて高揚の魔法を魔王にかけるのだ。そして、高揚の所為で、魔法がうまく発動できなくなっている魔王に、さらに速度ダウンの魔法をかけるのだ。
 その間に、ユーリが闇魔法で攻撃をかけ続ける。
 しかし、魔王は闇魔法をすべて吸収してしまうのだ。
 だが、それも計算のうちだったのだ。魔法のうまく発動できない魔王は、魔力過多で勝手にオーバーヒートしてしまうのだ。
 体内で、魔力を暴発させているところで、ユーリが剣で止めを刺す。
 
 理子から指示されたときは、こんな方法で倒せるのかと誰もが不安に思っていたのに、あっという間に魔王は崩れ落ちていたのだ。
 
 それは、勝利を確信したユーリとジグが気を緩めた一瞬のことだった。
 魔王の体が、塵になって崩れ落ちるその時、魔王は、最後の力で呪いを発動させていたのだ。
 それは、すぐ近くにいたユーリに命中したのだ。
 
 呪いが体に触れた瞬間、ユーリは抑えきれないほどの凶暴な心に支配されていたのだ。
 近くにいたジグに襲い掛かったユーリだったが、微かに理性が残っていたのか、荒い息を繰り返すだけで、ジグに傷をつけることはなかったのだ。
 
 ユーリに床に押し倒されていたジグは、理子に出会った時のことを何故か思い出していたのだ。
 


「うわ~。かわいい~。もしここかR18同人ゲームの方だと、同行した魔法使いって、ユーリに犯されるシナリオがあったはず? あれ、オーエンだっけ?」


 ユーリに押し倒されながら、ジグは理解したのだ。あの時、理子が言っていたのはこのことだったのだと。
 つまり、ユーリの状態を治すには、体を差し出せばいいのだと考えたジグは、苦しそうなユーリを抱きしめていたのだ。
 
「殿下……。大丈夫です。大丈夫ですから」

 それから起こったことについて、ジグはあまり覚えていなかった。
 それでも、薄ぼんやりとした意識の中で、体を引き裂かれるような痛みだけは、しっかりと感じたのだ。
 そして、必死にユーリの呪いを解くために解除呪文を口にし続けたのだ。
 
 どのくらいそうしていたのか、ジグの持っている膨大な魔力が尽きたころ、ユーリは静かな寝息を立てていたのだ。
 そして、魔王の呪いを解いた影響なのか、ジグの髪と目はその後少しずつ変化していき、今の灰色の髪と右目だけが菫色に変化していくこととなるのだ。
 
 体中の痛みを堪えて、ユーリの身を綺麗にして、服を着せたジグは、お腹の奥の熱に淡い期待をするのだ。
 
「殿下は、国に戻ったら、聖女様を探し出して結婚されるんだろうな……。でも、わたしには、この子がいる……。きっと、ここに宿ってくれるはず……。うん。逃げなくちゃ……。この子のことが知られたら、きっと引き離されてしまう……」

 ユーリのモノを沢山注がれた自覚のあるジグは、子供が出来ていることをなんとなく確信したのだ。
 だから、この宝だけを持って、逃げようとこの時決めたのだ。
 
 それが、後々、ややこしいことになるなど、想像もしなかったのだ。
 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】攻略を諦めたら騎士様に溺愛されました。悪役でも幸せになれますか?

うり北 うりこ@ざまされ書籍化決定
恋愛
メイリーンは、大好きな乙女ゲームに転生をした。しかも、ヒロインだ。これは、推しの王子様との恋愛も夢じゃない! そう意気込んで学園に入学してみれば、王子様は悪役令嬢のローズリンゼットに夢中。しかも、悪役令嬢はおかめのお面をつけている。 これは、巷で流行りの悪役令嬢が主人公、ヒロインが悪役展開なのでは? 命一番なので、攻略を諦めたら騎士様の溺愛が待っていた。

王子好きすぎ拗らせ転生悪役令嬢は、王子の溺愛に気づかない

エヌ
恋愛
私の前世の記憶によると、どうやら私は悪役令嬢ポジションにいるらしい 最後はもしかしたら全財産を失ってどこかに飛ばされるかもしれない。 でも大好きな王子には、幸せになってほしいと思う。

気配消し令嬢の失敗

かな
恋愛
ユリアは公爵家の次女として生まれ、獣人国に攫われた長女エーリアの代わりに第1王子の婚約者候補の筆頭にされてしまう。王妃なんて面倒臭いと思ったユリアは、自分自身に認識阻害と気配消しの魔法を掛け、居るかいないかわからないと言われるほどの地味な令嬢を装った。 15才になり学園に入学すると、編入してきた男爵令嬢が第1王子と有力貴族令息を複数侍らかせることとなり、ユリア以外の婚約者候補と男爵令嬢の揉める事が日常茶飯事に。ユリアは遠くからボーッとそれを眺めながら〘 いつになったら婚約者候補から外してくれるのかな? 〙と思っていた。そんなユリアが失敗する話。 ※王子は曾祖母コンです。 ※ユリアは悪役令嬢ではありません。 ※タグを少し修正しました。 初めての投稿なのでゆる〜く読んでください。ご都合主義はご愛嬌ということで見逃してください( *・ω・)*_ _))ペコリン

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

平和的に婚約破棄したい悪役令嬢 vs 絶対に婚約破棄したくない攻略対象王子

深見アキ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢・シェリルに転生した主人公は平和的に婚約破棄しようと目論むものの、何故かお相手の王子はすんなり婚約破棄してくれそうになくて……? タイトルそのままのお話。 (4/1おまけSS追加しました) ※小説家になろうにも掲載してます。 ※表紙素材お借りしてます。

醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます

ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。 そして前世の私は… ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。 とある侯爵家で出会った令嬢は、まるで前世のとあるホラー映画に出てくる貞◯のような風貌だった。 髪で顔を全て隠し、ゆらりと立つ姿は… 悲鳴を上げないと、逆に失礼では?というほどのホラーっぷり。 そしてこの髪の奥のお顔は…。。。 さぁ、お嬢様。 私のゴットハンドで世界を変えますよ? ********************** 『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』の続編です。 続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。 前作も読んでいただけるともっと嬉しいです! 転生侍女シリーズ第二弾です。 短編全4話で、投稿予約済みです。 よろしくお願いします。

悪役令嬢は皇帝の溺愛を受けて宮入りする~夜も放さないなんて言わないで~

sweetheart
恋愛
公爵令嬢のリラ・スフィンクスは、婚約者である第一王子セトから婚約破棄を言い渡される。 ショックを受けたリラだったが、彼女はある夜会に出席した際、皇帝陛下である、に見初められてしまう。 そのまま後宮へと入ることになったリラは、皇帝の寵愛を受けるようになるが……。

婚約破棄された悪役令嬢は王子様に溺愛される

白雪みなと
恋愛
「彼女ができたから婚約破棄させてくれ」正式な結婚まであと二年というある日、婚約破棄から告げられたのは婚約破棄だった。だけど、なぜか数時間後に王子から溺愛されて!?

処理中です...