10 / 13
第十話 結婚
しおりを挟む
リビングにジグが戻ると、その場は微妙な空気が漂っていたのだ。
残してしまったイヴァンが心配になったジグは、小さな体を抱きしめるのだ。
「イヴァン。ただいま。いい子にしてた?」
「うん。イヴいいこしてた。おじちゃが、わるいしないか、みはってた!!」
イヴァンの言いように、ジグの後をついてきたオーエンが噴き出していた。
しかし、ジグはそんなことを気にするそぶりもなく、イヴァンの頭を撫でたのだ。
「そっか。もう遅い時間だし、お風呂に入って寝ましょうね」
「うん。まぁま、あひるさんもいっしょにはいる~」
「そうだね。それじゃ、準備しようか」
「は~い」
イヴァンが自分のパジャマを取りに行くのを見送ったジグは、ユーリたちを振り向いて言うのだ。
「もし……、よろしければ、今日はここに泊まっていってください……。それで、少しお話をさせて欲しいことが……」
ジグがそう言うと、ユーリが答える前にオーエンが答えたのだ。
「おう。それじゃ、厄介になるよ。その前に、今日泊まる予定だった家の奥さんに、ジグリールの家で厄介になるって伝えてくるから、ジグリールは、息子とゆっくり風呂に入ってろな。てことで、ユーリ、行くぞ」
「えっ?」
「おいおい。俺らがいたら、ジグリールが風呂に入りづらいだろうが。そういうところ、本当にお前は駄目だなぁ」
呆れたようにそう言うオーエンをど突くようにしてユーリは、家の外に出たのだ。
そして、赤くなった顔を隠すように言い捨てたのだ。
「俺たちが出たら、ちゃんと鍵を掛けろ。時間をおいてまた来る。オーエン、行くぞ!!」
「じゃ、ジグリール。また後でな」
二人の後ろ姿を見送ったジグは、覚悟を決めた後に、イヴァンと風呂に入ったのだ。
そして、イヴァンを寝かしつけたころ、戻ってきたユーリたちを家に招き入れたのだ。
二人にお茶を出したジグは、少し悩んだ後に口を開いていた。
「オーエン様から聞きました。殿下の妻が書類上わたしになっているというおかしな話をです……」
ジグがそう問いかけると、お茶を思いっきりユーリが噴き出していた。
まさかそんなことになるとは思っていなかったジグは、慌ててタオルをユーリに渡していた。
渡されたタオルで口元を拭ったユーリは、隣に座るオーエンを睨みつけた後に、大きなため息を吐いたのだ。
「そうだ……。はぁ……。こんなの格好悪いよな。よし! ジグリール。オーエンのことはデカい置物だと考えろ」
「えっ?」
どう見ても、オーエンを置物と考えられないジグは、困惑気味にユーリとオーエンを交互に見つめる。しかし、オーエンは、諦めたように肩を竦めるだけだった。
しかし、そんなジグを他所に、ユーリはジグの側に移動して、その両手を取って真剣な声で言うのだ。
「ジグリール。君を愛している」
「え? あ、あいし? え?」
混乱するジグに構うことなく、ユーリは言葉を連ねるのだ。
「君が十二の時、魔法教育のために王宮に来た時、一目惚れだった。だけど、俺は自分で言うのもあれだが、いろいろと素直になれず、君につれない態度を取ってしまった。俺は、そのことを後悔していた。魔王討伐後、君に気持ちを告げようと思っていたのに……。目が覚めたら君が消えていた……。だから、無茶だと知りつつも、書類上の君と結婚した……」
「えっ? 言っている意味が良く分からないんですけど……」
目をぱちくりとするジグの両手を握ったユーリは、頬を赤くして言うのだ。
「だから、俺は君が好きすぎて、逃げられたことがショックで、権力を使って、書類婚をしたんだ!!」
ユーリのとんでもない告白に、ジグがどう反応していいのか分からないでいると、置物だったはずのオーエンが爆笑のあまり、呼吸困難に陥っていたが、それを助けられるものはその場にはいなかったのだった。
残してしまったイヴァンが心配になったジグは、小さな体を抱きしめるのだ。
「イヴァン。ただいま。いい子にしてた?」
「うん。イヴいいこしてた。おじちゃが、わるいしないか、みはってた!!」
イヴァンの言いように、ジグの後をついてきたオーエンが噴き出していた。
しかし、ジグはそんなことを気にするそぶりもなく、イヴァンの頭を撫でたのだ。
「そっか。もう遅い時間だし、お風呂に入って寝ましょうね」
「うん。まぁま、あひるさんもいっしょにはいる~」
「そうだね。それじゃ、準備しようか」
「は~い」
イヴァンが自分のパジャマを取りに行くのを見送ったジグは、ユーリたちを振り向いて言うのだ。
「もし……、よろしければ、今日はここに泊まっていってください……。それで、少しお話をさせて欲しいことが……」
ジグがそう言うと、ユーリが答える前にオーエンが答えたのだ。
「おう。それじゃ、厄介になるよ。その前に、今日泊まる予定だった家の奥さんに、ジグリールの家で厄介になるって伝えてくるから、ジグリールは、息子とゆっくり風呂に入ってろな。てことで、ユーリ、行くぞ」
「えっ?」
「おいおい。俺らがいたら、ジグリールが風呂に入りづらいだろうが。そういうところ、本当にお前は駄目だなぁ」
呆れたようにそう言うオーエンをど突くようにしてユーリは、家の外に出たのだ。
そして、赤くなった顔を隠すように言い捨てたのだ。
「俺たちが出たら、ちゃんと鍵を掛けろ。時間をおいてまた来る。オーエン、行くぞ!!」
「じゃ、ジグリール。また後でな」
二人の後ろ姿を見送ったジグは、覚悟を決めた後に、イヴァンと風呂に入ったのだ。
そして、イヴァンを寝かしつけたころ、戻ってきたユーリたちを家に招き入れたのだ。
二人にお茶を出したジグは、少し悩んだ後に口を開いていた。
「オーエン様から聞きました。殿下の妻が書類上わたしになっているというおかしな話をです……」
ジグがそう問いかけると、お茶を思いっきりユーリが噴き出していた。
まさかそんなことになるとは思っていなかったジグは、慌ててタオルをユーリに渡していた。
渡されたタオルで口元を拭ったユーリは、隣に座るオーエンを睨みつけた後に、大きなため息を吐いたのだ。
「そうだ……。はぁ……。こんなの格好悪いよな。よし! ジグリール。オーエンのことはデカい置物だと考えろ」
「えっ?」
どう見ても、オーエンを置物と考えられないジグは、困惑気味にユーリとオーエンを交互に見つめる。しかし、オーエンは、諦めたように肩を竦めるだけだった。
しかし、そんなジグを他所に、ユーリはジグの側に移動して、その両手を取って真剣な声で言うのだ。
「ジグリール。君を愛している」
「え? あ、あいし? え?」
混乱するジグに構うことなく、ユーリは言葉を連ねるのだ。
「君が十二の時、魔法教育のために王宮に来た時、一目惚れだった。だけど、俺は自分で言うのもあれだが、いろいろと素直になれず、君につれない態度を取ってしまった。俺は、そのことを後悔していた。魔王討伐後、君に気持ちを告げようと思っていたのに……。目が覚めたら君が消えていた……。だから、無茶だと知りつつも、書類上の君と結婚した……」
「えっ? 言っている意味が良く分からないんですけど……」
目をぱちくりとするジグの両手を握ったユーリは、頬を赤くして言うのだ。
「だから、俺は君が好きすぎて、逃げられたことがショックで、権力を使って、書類婚をしたんだ!!」
ユーリのとんでもない告白に、ジグがどう反応していいのか分からないでいると、置物だったはずのオーエンが爆笑のあまり、呼吸困難に陥っていたが、それを助けられるものはその場にはいなかったのだった。
51
お気に入りに追加
377
あなたにおすすめの小説
無双する天然ヒロインは皇帝の愛を得る
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕「強運」と云う、転んでもただでは起きない一風変わった“加護”を持つ子爵令嬢フェリシティ。お人好しで人の悪意にも鈍く、常に前向きで、かなりド天然な令嬢フェリシティ。だが、父である子爵家当主セドリックが他界した途端、子爵家の女主人となった継母デラニーに邪魔者扱いされる子爵令嬢フェリシティは、ある日捨てられてしまう。行く宛もお金もない。ましてや子爵家には帰ることも出来ない。そこで訪れたのが困窮した淑女が行くとされる或る館。まさかの女性が春を売る場所〈娼館〉とは知らず、「ここで雇って頂けませんか?」と女主人アレクシスに願い出る。面倒見の良い女主人アレクシスは、庇護欲そそる可憐な子爵令嬢フェリシティを一晩泊めたあとは、“或る高貴な知り合い”ウィルフレッドへと託そうとするも……。
※設定などは独自の世界観でご都合主義。ハピエン🩷
※稚拙ながらも投稿初日(2024.12.24)からHOTランキング入れて頂き、ありがとうございます🙂(最高で29位✨)

気配消し令嬢の失敗
かな
恋愛
ユリアは公爵家の次女として生まれ、獣人国に攫われた長女エーリアの代わりに第1王子の婚約者候補の筆頭にされてしまう。王妃なんて面倒臭いと思ったユリアは、自分自身に認識阻害と気配消しの魔法を掛け、居るかいないかわからないと言われるほどの地味な令嬢を装った。
15才になり学園に入学すると、編入してきた男爵令嬢が第1王子と有力貴族令息を複数侍らかせることとなり、ユリア以外の婚約者候補と男爵令嬢の揉める事が日常茶飯事に。ユリアは遠くからボーッとそれを眺めながら〘 いつになったら婚約者候補から外してくれるのかな? 〙と思っていた。そんなユリアが失敗する話。
※王子は曾祖母コンです。
※ユリアは悪役令嬢ではありません。
※タグを少し修正しました。
初めての投稿なのでゆる〜く読んでください。ご都合主義はご愛嬌ということで見逃してください( *・ω・)*_ _))ペコリン
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

【完結】攻略を諦めたら騎士様に溺愛されました。悪役でも幸せになれますか?
うり北 うりこ@ざまされ書籍化決定
恋愛
メイリーンは、大好きな乙女ゲームに転生をした。しかも、ヒロインだ。これは、推しの王子様との恋愛も夢じゃない! そう意気込んで学園に入学してみれば、王子様は悪役令嬢のローズリンゼットに夢中。しかも、悪役令嬢はおかめのお面をつけている。
これは、巷で流行りの悪役令嬢が主人公、ヒロインが悪役展開なのでは?
命一番なので、攻略を諦めたら騎士様の溺愛が待っていた。

闇黒の悪役令嬢は溺愛される
葵川真衣
恋愛
公爵令嬢リアは十歳のときに、転生していることを知る。
今は二度目の人生だ。
十六歳の舞踏会、皇太子ジークハルトから、婚約破棄を突き付けられる。
記憶を得たリアは前世同様、世界を旅する決意をする。
前世の仲間と、冒険の日々を送ろう!
婚約破棄された後、すぐ帝都を出られるように、リアは旅の支度をし、舞踏会に向かった。
だが、その夜、前世と異なる出来事が起きて──!?
悪役令嬢、溺愛物語。
☆本編完結しました。ありがとうございました。番外編等、不定期更新です。
☆2025年3月4日、書籍発売予定です。どうぞよろしくお願いいたします。
【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす
まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。
彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。
しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。
彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。
他掌編七作品収録。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。
【収録作品】
①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」
②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」
③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」
④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」
⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」
⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」
⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」
⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」
ヒロイン不在だから悪役令嬢からお飾りの王妃になるのを決めたのに、誓いの場で登場とか聞いてないのですが!?
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
ヒロインがいない。
もう一度言おう。ヒロインがいない!!
乙女ゲーム《夢見と夜明け前の乙女》のヒロインのキャロル・ガードナーがいないのだ。その結果、王太子ブルーノ・フロレンス・フォード・ゴルウィンとの婚約は継続され、今日私は彼の婚約者から妻になるはずが……。まさかの式の最中に突撃。
※ざまぁ展開あり

転生悪役令嬢は冒険者になればいいと気が付いた
よーこ
恋愛
物心ついた頃から前世の記憶持ちの悪役令嬢ベルティーア。
国の第一王子との婚約式の時、ここが乙女ゲームの世界だと気が付いた。
自分はメイン攻略対象にくっつく悪役令嬢キャラだった。
はい、詰んだ。
将来は貴族籍を剥奪されて国外追放決定です。
よし、だったら魔法があるこのファンタジーな世界を満喫しよう。
国外に追放されたら冒険者になって生きるぞヒャッホー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる