上 下
12 / 22

第十二話 休みが欲しい

しおりを挟む
 それから僕たちは、コボルトやホーンラビットと言った、初心者向けの魔物の討伐を数回達成していた。
 そして、最初に約束した通り、一生が魔物を引き付けて、僕が攻撃するという展開にな……らなかった。
 一生のやつ、僕が攻撃しようと魔物に近づいたとたんに、その魔物を釣って、更には一瞬で止めを刺してしまうのだ。
 
「一生! 約束が違うぞ!」

「破ってないし。偶然だ。偶然、魔物がこっちに来たんだ」

「ぐぬぬ」

 確かに、咆哮のスキルは使っていなかった。
 だけど、明らかに魔物は直前で方向転換をしていたように思えたんだよ。
 きっと、何かしらのスキルで魔物を釣っているはずだ。
 
 そう言う訳で、僕は討伐系の依頼を受けるようになってから、依頼達成に全く貢献が出来ていなかった。
 だからと言う訳ではないけど、魔物の解体は一生よりも多くこなすように心がけている。
 
 そんな毎日を送っていた僕と一生だったけど、そろそろ休みが欲しかった。
 毎日の生活費を稼ぐのと、宿屋を出て家を借りるための貯金のために、休みなしで働いていたけど、そろそろ疲れも溜まってきていた。
 
 と言う訳で僕は、一生に休みの提案をすることにしたのだ。
 
「なぁ、明日は休みにしないか?」

「ん? 疲れたか?」

「うん。正直、疲れた。一日ゆっくりしたい。だめか?」

 ぶっちゃけ、僕よりも一生の方が疲れが溜まってると思うけど、正直に言う。僕は休みが欲しい。
 こっちに来て、毎日毎日働いてばかりで、疲れていた。
 だからと言う訳ではないけど、趣味の時間が欲しかった。料理をしたい。裁縫で何かを作りたい。
 まぁ、趣味の時間を作るなんて贅沢なことだとはわかってるけど……。

 でも、一生が明日も依頼を受けに行こうというのであれば、僕はそれに従うつもりだった。
 ほら、僕って、戦いで全く役に立ってないしね……。あはは……。
 だけど、一生は一瞬何かを考えた後に、笑顔で言ったのだ。
 
「う~ん。うん。いいよ。明日は一日休みにしよう」

「えっ? いいのか? 本当にいいんだな?」

「なんで驚いてんだよ。こっちに来てずっと働きっぱなしだったし。休みは必要だ。最近は魔物の素材を売ったりして、余裕も出てきたしな」

「よっしゃぁ!! ふっふふ~ん。明日は何して過ごそうかなぁ。あっ、そうだ。解体に失敗して売り物にならなかった毛皮があったっけ……。そうだ、それで久しぶりにぬいぐるみ作るのもいいなぁ。ああ、でも綿が無い。針と糸は何とかなりそうだけど……」

 そんなことを考えていた僕は、久しぶりに司祭のおじいさんのところに顔を出すのもいいかもと思い至った。
 それに、聖堂の台所を借りて料理をするのもいいかもしれない。
 うん。ちょっと一生に提案してみよう。
 
「なあ。明日、久しぶりにじーちゃんのところに顔出さないか?」

「そうだな。元気にやってるって、顔を出すのもいいかもな」

「うんうん。それに、聖堂の台所借りて、久しぶりに料理したい」

「それ! 名案だ。うん。行こう行こう」

 満場一致で、明日の予定が決まった。
 一世は、顔見せよりも、料理の方が本命っぽいけど、久しぶりに一生に美味いもん食わせてやりたいしな。
 
 
 こうして、僕たちは久しぶりに聖堂に向かうことになったのだった。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?

寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。 ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。 ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。 その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。 そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。 それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。 女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。 BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。 このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう! 男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!? 溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

異世界ぼっち暮らし(神様と一緒!!)

藤雪たすく
BL
愛してくれない家族から旅立ち、希望に満ちた一人暮らしが始まるはずが……異世界で一人暮らしが始まった!? 手違いで人の命を巻き込む神様なんて信じません!!俺が信じる神様はこの世にただ一人……俺の推しは神様です!!

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

淫愛家族

箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。 事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。 二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。 だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――

強制悪役令息と4人の聖騎士ー乙女ハーレムエンドー

チョコミント
BL
落ちこぼれ魔法使いと4人の聖騎士とのハーレム物語が始まる。 生まれてから病院から出た事がない少年は生涯を終えた。 生まれ変わったら人並みの幸せを夢見て… そして生前友人にもらってやっていた乙女ゲームの悪役双子の兄に転生していた。 死亡フラグはハーレムエンドだけだし悪い事をしなきゃ大丈夫だと思っていた。 まさか無意識に悪事を誘発してしまう強制悪役の呪いにかかっているなんて… それになんでヒロインの個性である共魔術が使えるんですか? 魔力階級が全てを決める魔法の世界で4人の攻略キャラクターである最上級魔法使いの聖戦士達にポンコツ魔法使いが愛されています。 「俺なんてほっといてヒロインに構ってあげてください」 執着溺愛騎士達からは逃げられない。 性描写ページには※があります。

処理中です...