10 / 22
第十話 守りたい
しおりを挟む
それから、あっという間に周囲は血の海となっていた。
僕は、惨状に少しだけ頭痛を感じながらも、戦闘を終わらせた一生に怪我がないか確認していた。
「一生……。大丈夫だとは思うけど、怪我は?」
「俺は大丈夫だ。俺よりも、陽騎は大丈夫か? スキルで周囲の魔物を全部釣ったはずだけど」
「僕は大丈夫……って、は? スキルで魔物を釣った?」
「あっ……。てへ」
一生は一瞬、不味ったといった表情をした後に、小さく舌を出してイケメンスマイルで誤魔化そうとした。
だけどそれに引っ掛かる僕ではなかった。
僕は、一生の胸ぐらを掴んでその体を大きく揺さぶっていた。
「どういうことだ? 説明しろ?」
「えっと、俺の持っているスキルに【咆哮】っていうのがあって。それを使うと、周囲の敵を俺に全部引き付けることが出来るんだ」
「この馬鹿! なんて危ない真似するんだよ!!」
僕がそう言って、一生の頭をぽかりと殴ると何故か一生のやつは嬉しそうに頭をさすっていた。
それを見た僕の感想は、「えっ?こいつ大丈夫か?」だったが、敢えてそれを口にはしなかった。
その代わりに、僕は盛大な詰め息を吐いていた。
それを見た一生は、慌てたように言い訳を始めたのだ。
「大丈夫。ほら、俺って強かったでしょ? 風魔法を刀状に固定して、切れ味抜群の武器もあるし! それに、誰も怪我しなかったから結果オーライってことで……」
無言で睨みつけていたけど、一生は「もうしない」とは絶対に言わなかった。
「俺は、陽騎を守りたかったんだよ。お前が大切だからお前に傷一つ付けたくなかったんだよ」
そう言って一生は、僕のことを真剣な表情で見下ろしてきた。
両肩を強い力で掴まれて、その力強さに一生の真剣さは十分伝わった。だけど、僕にだって言い分はある。
僕にとっても一生は大切な親友だ。僕だって一生を守りたいのは同じだ。
だから僕も真剣な顔で一生に言った。
「僕だって大切な親友を守りたいのは一緒だ。もう無茶はしないでくれ。頼むよ」
「親友…………はぁぁぁ。陽騎……。そう思ってくれるのは凄くうれしい。だけど、これだけは譲れない。これからも俺は、陽騎を守るために体を張る。敵の攻撃は全部俺が防いで俺が戦う」
ぐぬぬ。一生は、一度こうだと決めたらそれを曲げない。
それなら……。
「分かった。それなら、こうしよう。これからもお前が敵を引き付けろ。でも、一生に引き付けられた敵は僕が倒す」
「駄目だ」
「無理だ。お前が総受けで、僕が総攻め。これで決まりだ」
僕がそう提案すると、一生は凄く複雑そうな顔になってから小さくぶつぶつと何かを言っていたが無視だ無視。
一生の要望はちゃんと聞いたんだから、僕の要望も通すってもんが筋だ。
「俺が、総受け……。確かに間違っていないけど、間違っている……。言い方?そうだ、言い方が悪いんだ。うん、そうだ。俺は受けじゃない。俺は攻めだ。攻めなんだ」
一人ぶつぶつと言っている一生は放っておいて、僕は討伐したコボルトをどうしようかと頭を悩ませていた。
今回の依頼はコボルトの牙の収集だ。
血まみれで、更にはグロテスクに内臓を晒しているコボルトからさらに牙を取るなんてちょっと無理そうだった。
モザイク必死のグロテスクな光景に少しだけ涙目になっていると、ようやく独り言を終了させた一生が僕に抱き着いてきた。
「陽騎、ごめん。初めてで加減できなかった……。牙以外の素材はダメそうだね。次はもっと頑張る」
僕的にもそうしてくれると助かる。ここまでえぐいことになっている死体はあまり見たくなかった。
依頼達成のために、無事そうなコボルトの牙を手分けして集めた後に、死体を一か所に集めて火魔法で焼いてから、土魔法で埋めて処理した。
死体の片づけが終わった後、僕は戦闘よりも後処理の方が大変なのではと思いつつも、今日はさすがに風呂に入りたくなっていた。
だけど、それは無理そうだったので、重い足を引きずりながら一生と共に街に戻ったのだった。
僕は、惨状に少しだけ頭痛を感じながらも、戦闘を終わらせた一生に怪我がないか確認していた。
「一生……。大丈夫だとは思うけど、怪我は?」
「俺は大丈夫だ。俺よりも、陽騎は大丈夫か? スキルで周囲の魔物を全部釣ったはずだけど」
「僕は大丈夫……って、は? スキルで魔物を釣った?」
「あっ……。てへ」
一生は一瞬、不味ったといった表情をした後に、小さく舌を出してイケメンスマイルで誤魔化そうとした。
だけどそれに引っ掛かる僕ではなかった。
僕は、一生の胸ぐらを掴んでその体を大きく揺さぶっていた。
「どういうことだ? 説明しろ?」
「えっと、俺の持っているスキルに【咆哮】っていうのがあって。それを使うと、周囲の敵を俺に全部引き付けることが出来るんだ」
「この馬鹿! なんて危ない真似するんだよ!!」
僕がそう言って、一生の頭をぽかりと殴ると何故か一生のやつは嬉しそうに頭をさすっていた。
それを見た僕の感想は、「えっ?こいつ大丈夫か?」だったが、敢えてそれを口にはしなかった。
その代わりに、僕は盛大な詰め息を吐いていた。
それを見た一生は、慌てたように言い訳を始めたのだ。
「大丈夫。ほら、俺って強かったでしょ? 風魔法を刀状に固定して、切れ味抜群の武器もあるし! それに、誰も怪我しなかったから結果オーライってことで……」
無言で睨みつけていたけど、一生は「もうしない」とは絶対に言わなかった。
「俺は、陽騎を守りたかったんだよ。お前が大切だからお前に傷一つ付けたくなかったんだよ」
そう言って一生は、僕のことを真剣な表情で見下ろしてきた。
両肩を強い力で掴まれて、その力強さに一生の真剣さは十分伝わった。だけど、僕にだって言い分はある。
僕にとっても一生は大切な親友だ。僕だって一生を守りたいのは同じだ。
だから僕も真剣な顔で一生に言った。
「僕だって大切な親友を守りたいのは一緒だ。もう無茶はしないでくれ。頼むよ」
「親友…………はぁぁぁ。陽騎……。そう思ってくれるのは凄くうれしい。だけど、これだけは譲れない。これからも俺は、陽騎を守るために体を張る。敵の攻撃は全部俺が防いで俺が戦う」
ぐぬぬ。一生は、一度こうだと決めたらそれを曲げない。
それなら……。
「分かった。それなら、こうしよう。これからもお前が敵を引き付けろ。でも、一生に引き付けられた敵は僕が倒す」
「駄目だ」
「無理だ。お前が総受けで、僕が総攻め。これで決まりだ」
僕がそう提案すると、一生は凄く複雑そうな顔になってから小さくぶつぶつと何かを言っていたが無視だ無視。
一生の要望はちゃんと聞いたんだから、僕の要望も通すってもんが筋だ。
「俺が、総受け……。確かに間違っていないけど、間違っている……。言い方?そうだ、言い方が悪いんだ。うん、そうだ。俺は受けじゃない。俺は攻めだ。攻めなんだ」
一人ぶつぶつと言っている一生は放っておいて、僕は討伐したコボルトをどうしようかと頭を悩ませていた。
今回の依頼はコボルトの牙の収集だ。
血まみれで、更にはグロテスクに内臓を晒しているコボルトからさらに牙を取るなんてちょっと無理そうだった。
モザイク必死のグロテスクな光景に少しだけ涙目になっていると、ようやく独り言を終了させた一生が僕に抱き着いてきた。
「陽騎、ごめん。初めてで加減できなかった……。牙以外の素材はダメそうだね。次はもっと頑張る」
僕的にもそうしてくれると助かる。ここまでえぐいことになっている死体はあまり見たくなかった。
依頼達成のために、無事そうなコボルトの牙を手分けして集めた後に、死体を一か所に集めて火魔法で焼いてから、土魔法で埋めて処理した。
死体の片づけが終わった後、僕は戦闘よりも後処理の方が大変なのではと思いつつも、今日はさすがに風呂に入りたくなっていた。
だけど、それは無理そうだったので、重い足を引きずりながら一生と共に街に戻ったのだった。
0
お気に入りに追加
333
あなたにおすすめの小説
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!
音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに!
え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!!
調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

無自覚な
ネオン
BL
小さい頃に母が再婚した相手には連れ子がいた。
1つ上の義兄と1つ下の義弟、どちらも幼いながらに
イケメンで運動もでき勉強もできる完璧な義兄弟だった。
それに比べて僕は周りの同級生や1つ下の義弟よりも小さくて
いじめられやすく、母に教えられた料理や裁縫以外
何をやっても平凡だった。
そんな僕も花の高校2年生、1年生の頃と変わらず平和に過ごしてる
それに比べて義兄弟達は学校で知らない人はいない
そんな存在にまで上り積めていた。
こんな僕でも優しくしてくれる義兄と
僕のことを嫌ってる義弟。
でも最近みんなの様子が変で困ってます
無自覚美少年主人公が義兄弟や周りに愛される話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる