異世界に転移したけど、パーティーメンバーが全員総受けってことは僕が攻めればいいんだよね?

バナナマヨネーズ

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第五話 異世界だったみたい

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 聖堂の中を進むと見事なステンドグラスが目に入ってきた。
 キラキラと輝くそれに目を奪われている間に真っ白な髭を蓄えた司祭と思われる格好のおじいさんが現れた。
 
 好々爺とした表情の司祭のおじいさんは、僕たちを見て痛ましそうな表情をした後に、胸の前で手を組んで神に祈りでも捧げるように祈ったのだ。
 そして、優し気な表情で僕たちに驚くべきことを話したのだ。
 
 
 司祭のおじいさん曰、ここは異世界だというのだ。
 理由は未だに分かっていないらしいのだが、数十年、数百年のうちに稀に異世界から迷い込んでくる人がいるそうなのだ。
 迷い込んだ人で元の世界に帰れた人はいないのだという。
 というよりも、誰も帰り方が分からなかったからどうしようもなかったそうだ。
 そしていつしか、迷い込んだ人を「迷い人」と呼ぶようになり、その人を保護するようになっていったというのだ。
 
 今回は、王都警備隊が野外演習帰りに近道のため森を突っ切ろうとして僕たちを見つけてくれたというのだ。
 偶然が重なってこうして僕たちは、早々に保護されることとなった。
 
 
 そして、司祭のおじいさんは言った。
 このまま国教会の保護の元ここで暮らすか、外で暮らすかと。
 と言っても、いつでも国教会での暮らしを止めて外で暮らすことを選んでもいいということだった。
 
 バスの運転手とサラリーマンは、とりあえず国教会でお世話になると言っていた。
 二人とも元の世界に残してきた家族や仕事のことを思い出しているのか暗い顔をしていた。
 
 一方大学生のグループはというと、「異世界ヒャッハー!!」と言って、最低限の知識を得たうえで外の世界で暮らすことを嬉々として選んでいた。
 
 かく言う僕と一生も、このまま国教会で暮らすのは息苦しそうだと考えた結果、外の世界での生活を選んだのだけどね。
 
 僕も元の世界に帰れないと聞いた時は、一瞬だけ悲しくなった。せっかく仲良くなった料理部の先輩や、高校に入って仲良くなった友人のこと、自室に置いてある作りかけのぬいぐるみを思い出してだ。
 脳筋の父と脳筋の鬼姉から逃げられたことにほっとする気持ちもあって、僕は軽く「なるようになるさと」と気持ちを切り替えて、この世界で生きることに前向きになっていた。
 一生はというと、何を考えているのかさっぱりだった。
 若干嬉しそうにも見えたので、もしかすると、大学生のグループと同じ「異世界ヒャッハー!!」な考えだったのだろうと納得することにした。
 
 
 そして、この世界で暮らすためにと司祭のおじいさんは、僕たちに魔法について教えてくれた。
 何とこの世界は、魔法がありな世界だというのだ。
 そして、数日国教会で世話になりながら、生活魔法の使い方を教えてもらった。
 
 生活魔法とは、火、水、風、土。この四属性の簡単な魔法のことを指すのだという。
 こっちの世界では、文明の利器はないと思いきや、魔具と言う魔法で動く道具があるというのだ。
 その道具を使うのに、初歩的な四属性の魔法の施行は必須事項なのだかと。
 と言っても、魔具はそこそこ高価なものなので、庶民には手が出せない代物で、料理をするのには普通に竈を使うらしい。
 でも、その竈に火をつけるには火属性の魔法がいるというのだ。
 
 魔法の使い方は結構簡単だった。
 全てはイメージ力で解決できた。
 火の魔法は、火が燃えるイメージで使えたし、水や風、土も「あーしたい」「こーしたい」という明確なイメージさえ出来ていれば問題なく使えたのだ。
 
 次に、この世界で暮らすための身分証については、大学生のグループの発言で解決した。
 
「なあなあ、ここがファンタジー世界なら冒険者ギルドとかある?」

「ふぁんたじー? それが何かは分からないですが、冒険者ギルドならありますよ」

「よっしゃぁ! それなら、ギルドに入れば身分証の問題も解決する?」

「そうですね。冒険者ギルド登録をしていただく際に、冒険者カードが発行されますので、それが身分証の代わりになります」

 大学生のグループは、僕たちよりも先に国教会から出て冒険者登録をしに行った。
 僕はというと、魔法の使い方を教えてもらった時に、アイテムボックスとアイテムボックス内複写いう便利なスキルを持っていることが分かって、持っていた食料をアイテムボックスに突っ込んだうえで、それを複写で増やすことに成功していた。
 なんでそんなことしているのかというと、この世界の飯が不味過ぎて自炊するためだよ。
 
 それと、お世話になった司祭のおじいさんにお礼として、ご飯を作っていたらなんだかそれが評判になってしまって、なかなか国教会を離れられなかったのだ。
 司祭のおじいさんが、美味しいって僕の作ったご飯を食べてくれるのが、僕が小さい頃に死んだじーちゃんとばーちゃんが喜んでくれてるみたいで、一瞬このままここでおさんどんしててもいいかもなんて思ってしまったのだ。
 だけど、僕の料理が大好きだと言って憚らない一生が何故か日増しに不機嫌になっていって、最後には早く外で暮らそうって急かすもんだから、司祭のおじいさんにはたまに遊びに来ると言って、大学生のグループよりも数日遅れで国教会を後にしたのだった。
 
 でも、僕が数日国教会でご飯を作ったことで、国からもらった助成金の他にお金をもらえて、懐は温かかったので結果オーライだろう?

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