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第二話 楽しい夏休みの始まり?
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じりじりと太陽が照りつける、そんな暑い日のことだった。
僕は、親友の一生の誘いで、一生の家が所有するという別荘に行くことになったのだ。
別荘と聞いて、「お前はどこのボンボンだ!!」と突っ込んだ僕に対して、一生はいたって普通なことのように言ったのだ。
「えっ? 今日行く別荘は大した大きさじゃないから、逆にがっかりさせちゃうかも」
僕は、敢えて突っ込まなかった。
だってそうだろう?あの口ぶりは、他にも別荘を持ってるってことが窺えた。しかも複数だ。そうなると、大きくないと言った一生の言葉が途端に疑わしくなってくる。
親友と言いつつも僕は、一生の家に遊びに行ったことがなかったりする。
遊ぶときは、僕の家か、それ以外だと買い物をしたり、映画を一緒に見に行ったりだった。
一生は、あまり自分のことを話したがらなかったから、敢えて聞かなかった僕も悪いが、この時初めて、一生がいい所のボンボンなのではないのかという考えが頭を過ったのだ。
だけど、それは一瞬だ。
だって、一生がいい所のボンボンでも、僕の親友ということに変わりはないのだから。
ということで、僕は話題を変更した。
「んで、食材の買い出しはこんなもんでいいか?」
そう言って、カートの中の食材に視線を向けた。
一生も僕の視線に釣られるようにカートの中の食材に視線を向けていた。そして、笑顔を僕に向けて言ったのだ。
「陽騎の作るお菓子も食べたいから、その材料も買おうぜ」
子供のような笑顔を見た僕は、なんとなく一生を喜ばしたいような気がして、素直にお菓子作りに必要な材料もカートに入れていたのだった。
結構な量になった食材を抱えた僕たちは、一生の家の別荘に向かうために、スーパーから出てバス停に向かっていた。
ちょどよく、別荘方向のバスがすぐにやってきた。
僕と一生が乗り込んだバスは、夏休みとは言え平日だったため、ガラガラだった。
乗客は僕たちと同じバス停から乗ってきた大学生と思われるグループと、サラリーマンだけだった。
道も空いていて、バスは順調に走っていた。
「道も空いてるし、この分だと後10分くらいで別荘につくと思うよ」
「そっか。まずは、買い込んだ食材を片付けて、軽く飯にしてから」
「海だね!!」
「いや、寝る」
「えっ? なんでさ! 泳ごうよ!」
「ここまで来るのにもう疲れた。それに、一生には言っただろ? 僕、日焼けしやすいって」
「大丈夫だよ! 俺が日焼け止め塗ってあげるから。ね?」
「いらんわ!! 塗るとしても自分で塗るわ!!」
「遠慮しなくていいよ? 俺が全身くまなく丁寧に塗り込んであげるからね?」
「は? 出てるところだけでよくないか?」
「いやいや、水着の下も念のため塗っておいた方がいいと思うから。ね?」
「ね? じゃねーよ!!」
一生をジロリと睨みつけたものの、それを気にした風もなくあっさりと話を逸らされた。
「あ、あれ! 陽騎、あのトンネルを抜けたらもうすぐだよ」
「おう。楽しみだな」
いつもの軽いノリのやり取り。始まったばかりの夏休みの高揚感。友達との泊りがけの初めての旅行。
僕はとても浮かれていたと思う。
キキキーーーーーーーーーー!!!
突然のブレーキ音。バスが大きく揺れて急停止したのだ。
突然のことに僕は、前の座席にしがみ付いていた。一生は、僕を庇うように覆いかぶさるようにしながら、座席にしがみ付いていた。
一生のお陰で僕は、怪我一つ負うことはなかった。
だけど、バスの外を見た僕と一生は言葉を失っていた。
窓の外に見えた景色は、一面に広がる森だったのだから。
僕は、親友の一生の誘いで、一生の家が所有するという別荘に行くことになったのだ。
別荘と聞いて、「お前はどこのボンボンだ!!」と突っ込んだ僕に対して、一生はいたって普通なことのように言ったのだ。
「えっ? 今日行く別荘は大した大きさじゃないから、逆にがっかりさせちゃうかも」
僕は、敢えて突っ込まなかった。
だってそうだろう?あの口ぶりは、他にも別荘を持ってるってことが窺えた。しかも複数だ。そうなると、大きくないと言った一生の言葉が途端に疑わしくなってくる。
親友と言いつつも僕は、一生の家に遊びに行ったことがなかったりする。
遊ぶときは、僕の家か、それ以外だと買い物をしたり、映画を一緒に見に行ったりだった。
一生は、あまり自分のことを話したがらなかったから、敢えて聞かなかった僕も悪いが、この時初めて、一生がいい所のボンボンなのではないのかという考えが頭を過ったのだ。
だけど、それは一瞬だ。
だって、一生がいい所のボンボンでも、僕の親友ということに変わりはないのだから。
ということで、僕は話題を変更した。
「んで、食材の買い出しはこんなもんでいいか?」
そう言って、カートの中の食材に視線を向けた。
一生も僕の視線に釣られるようにカートの中の食材に視線を向けていた。そして、笑顔を僕に向けて言ったのだ。
「陽騎の作るお菓子も食べたいから、その材料も買おうぜ」
子供のような笑顔を見た僕は、なんとなく一生を喜ばしたいような気がして、素直にお菓子作りに必要な材料もカートに入れていたのだった。
結構な量になった食材を抱えた僕たちは、一生の家の別荘に向かうために、スーパーから出てバス停に向かっていた。
ちょどよく、別荘方向のバスがすぐにやってきた。
僕と一生が乗り込んだバスは、夏休みとは言え平日だったため、ガラガラだった。
乗客は僕たちと同じバス停から乗ってきた大学生と思われるグループと、サラリーマンだけだった。
道も空いていて、バスは順調に走っていた。
「道も空いてるし、この分だと後10分くらいで別荘につくと思うよ」
「そっか。まずは、買い込んだ食材を片付けて、軽く飯にしてから」
「海だね!!」
「いや、寝る」
「えっ? なんでさ! 泳ごうよ!」
「ここまで来るのにもう疲れた。それに、一生には言っただろ? 僕、日焼けしやすいって」
「大丈夫だよ! 俺が日焼け止め塗ってあげるから。ね?」
「いらんわ!! 塗るとしても自分で塗るわ!!」
「遠慮しなくていいよ? 俺が全身くまなく丁寧に塗り込んであげるからね?」
「は? 出てるところだけでよくないか?」
「いやいや、水着の下も念のため塗っておいた方がいいと思うから。ね?」
「ね? じゃねーよ!!」
一生をジロリと睨みつけたものの、それを気にした風もなくあっさりと話を逸らされた。
「あ、あれ! 陽騎、あのトンネルを抜けたらもうすぐだよ」
「おう。楽しみだな」
いつもの軽いノリのやり取り。始まったばかりの夏休みの高揚感。友達との泊りがけの初めての旅行。
僕はとても浮かれていたと思う。
キキキーーーーーーーーーー!!!
突然のブレーキ音。バスが大きく揺れて急停止したのだ。
突然のことに僕は、前の座席にしがみ付いていた。一生は、僕を庇うように覆いかぶさるようにしながら、座席にしがみ付いていた。
一生のお陰で僕は、怪我一つ負うことはなかった。
だけど、バスの外を見た僕と一生は言葉を失っていた。
窓の外に見えた景色は、一面に広がる森だったのだから。
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