欠陥姫の嫁入り~花嫁候補と言う名の人質だけど結構楽しく暮らしています~

バナナマヨネーズ

文字の大きさ
上 下
64 / 97
本編

第八章 欠陥姫の嫁入り(3)

しおりを挟む
 心を取り戻したミリアリアから愛の言葉を聞いたジークフリートは、紫色の瞳を甘く揺らめかせた。
 そして、ミリアリアの細い体をぎゅっと抱きしめてその耳に甘い言葉を囁いたのだ。
 
「ああ、ミリアリア。俺のミリアリア。心から君を愛しているよ。柔らかく甘く香る金の髪も、白くきめ細かい陶器のような肌も。晴れやかな日の青空を思わせる綺麗な瞳も。小さくさくらんぼの様に可愛い唇も、小さな鼻も、甘そうな耳も。全てが愛おしい。自分のことよりも誰かを思う優しい心も、恥ずかしがりやなところも。花のような笑顔も。月の雫のような綺麗な涙も。甘いものが好きなところが可愛い。意外と食いしん坊なところも可愛い。お寝坊さんなところも可愛い。ミリアリアの全てが好きだ」

 目覚めてすぐに沢山の愛を注がれたミリアリアは、悶絶しそうになっていた。
 というか、悶絶を通り越してきゅん死にしそうになっていた。
 
 今まで、なんとなくこんな顔だろうと思っていたジークフリートは、ミリアリアの想像の優に百倍は美しい顔をしていたからだ。
 さらさらと流れる銀の髪は、今はセットされずにいるが、無造作な髪型でも美しかった。
 甘い蜜の様に揺らめく神秘的な紫の瞳は、ミリアリアを欲するように見つめていた。
 形のいい鼻と、少し薄い唇、高い身長と、それに見合った均整の取れた美しい体。
 剣だこのある硬い手は、ミリアリアの小さな手を包み込めるほど大きかったのだ。
 
 昔読んだ小説の王子様のようなルックスを前にして胸がこれでもかと高鳴るところに、甘すぎる愛の言葉が止めとなっていた。
 ミリアリアは、耳まで真っ赤に染めた状態で、小さな声で言ったのだ。
 
「反則です……。リートさま……凄く格好いい。王子様みたい……。どうしよう。胸がドキドキして、苦しいよう……」

 そんなミリアリアの小さな呟き声が聞こえていたジークフリートは、心配そうにミリアリアの真っ赤になった顔を覗き込んで言ったのだ。
 
「胸が苦しいのか? それに顔も赤い。熱があるようだ……。大変だ、医者を、医者を呼ばなければ! ミリアリアのメイド!! すぐに医者を呼べ、大至急だ!!」

 部屋の外に待機していたシューニャは、ジークフリートの大きな声を聴いて、ミリアリアの容態が急変したのだと勘違いしてしまい、扉の外から「わかった!!」というだけで、中の状態も確認せずに走り出していたのだ。
 
 そして、息を乱す医者を引きずるようにしてミリアリアの部屋に戻ってきたのだ。
 
「連れてきたぞ!! おひめさ―――。あれ? お…お姫様ーーーー!!」

 シューニャは、そこでようやくミリアリアが心を取り戻したことを知るのだった。
 そんな、驚くシューニャにミリアリアは、頬を赤らめた状態で微笑んで言ったのだ。
 
「あなたがシューニャ? わぁ、想像よりも何倍も可愛いわ。くすくす。メイド服もすごく似合ってる。男の子には思えないわね。本当に可愛いわ」

 のんびりとそんなことを言うミリアリアの爆弾発言に一番最初に反応したのは、医者を引きずるシューニャを追いかけてきたセドルだった。
 
「えっ? えーーーーー!! シューニャさんが、お…おおおおおおおお男ぅ?! 私のシューニャさんが? えっ? えええーーーー!!!」

「いつから俺は、お前のもんになった!! うぜぇ!!」

「男でも問題ありません!! 私はシューニャさんを愛してます!! 諦めて私のところにお嫁に来てください!!」

「行くかよ!!」

 そんな賑わいを他所に、ジークフリートは、駆けつけた医者にミリアリアが胸が苦しいと言っていたことを伝えて、ミリアリアの容態を聞くのに必死でそれどころではなかったのだ。


しおりを挟む
感想 182

あなたにおすすめの小説

いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!

夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。 しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。 ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。 愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。 いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。 一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ! 世界観はゆるいです! カクヨム様にも投稿しております。 ※10万文字を超えたので長編に変更しました。

【完結】さようなら、婚約者様。私を騙していたあなたの顔など二度と見たくありません

ゆうき
恋愛
婚約者とその家族に虐げられる日々を送っていたアイリーンは、赤ん坊の頃に森に捨てられていたところを、貧乏なのに拾って育ててくれた家族のために、つらい毎日を耐える日々を送っていた。 そんなアイリーンには、密かな夢があった。それは、世界的に有名な魔法学園に入学して勉強をし、宮廷魔術師になり、両親を楽させてあげたいというものだった。 婚約を結ぶ際に、両親を支援する約束をしていたアイリーンだったが、夢自体は諦めきれずに過ごしていたある日、別の女性と恋に落ちていた婚約者は、アイリーンなど体のいい使用人程度にしか思っておらず、支援も行っていないことを知る。 どういうことか問い詰めると、お前とは婚約破棄をすると言われてしまったアイリーンは、ついに我慢の限界に達し、婚約者に別れを告げてから婚約者の家を飛び出した。 実家に帰ってきたアイリーンは、唯一の知人で特別な男性であるエルヴィンから、とあることを提案される。 それは、特待生として魔法学園の編入試験を受けてみないかというものだった。 これは一人の少女が、夢を掴むために奮闘し、時には婚約者達の妨害に立ち向かいながら、幸せを手に入れる物語。 ☆すでに最終話まで執筆、予約投稿済みの作品となっております☆

ハズレ嫁は最強の天才公爵様と再婚しました。

光子
恋愛
ーーー両親の愛情は、全て、可愛い妹の物だった。 昔から、私のモノは、妹が欲しがれば、全て妹のモノになった。お菓子も、玩具も、友人も、恋人も、何もかも。 逆らえば、頬を叩かれ、食事を取り上げられ、何日も部屋に閉じ込められる。 でも、私は不幸じゃなかった。 私には、幼馴染である、カインがいたから。同じ伯爵爵位を持つ、私の大好きな幼馴染、《カイン=マルクス》。彼だけは、いつも私の傍にいてくれた。 彼からのプロポーズを受けた時は、本当に嬉しかった。私を、あの家から救い出してくれたと思った。 私は貴方と結婚出来て、本当に幸せだったーーー 例え、私に子供が出来ず、義母からハズレ嫁と罵られようとも、義父から、マルクス伯爵家の事業全般を丸投げされようとも、私は、貴方さえいてくれれば、それで幸せだったのにーーー。 「《ルエル》お姉様、ごめんなさぁい。私、カイン様との子供を授かったんです」 「すまない、ルエル。君の事は愛しているんだ……でも、僕はマルクス伯爵家の跡取りとして、どうしても世継ぎが必要なんだ!だから、君と離婚し、僕の子供を宿してくれた《エレノア》と、再婚する!」 夫と妹から告げられたのは、地獄に叩き落とされるような、残酷な言葉だった。 カインも結局、私を裏切るのね。 エレノアは、結局、私から全てを奪うのね。 それなら、もういいわ。全部、要らない。 絶対に許さないわ。 私が味わった苦しみを、悲しみを、怒りを、全部返さないと気がすまないーー! 覚悟していてね? 私は、絶対に貴方達を許さないから。 「私、貴方と離婚出来て、幸せよ。 私、あんな男の子供を産まなくて、幸せよ。 ざまぁみろ」 不定期更新。 この世界は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。

婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します

けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」  五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。  他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。 だが、彼らは知らなかった――。 ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。 そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。 「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」 逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。 「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」 ブチギレるお兄様。 貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!? 「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!? 果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか? 「私の未来は、私が決めます!」 皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!

牢で死ぬはずだった公爵令嬢

鈴元 香奈
恋愛
婚約していた王子に裏切られ無実の罪で牢に入れられてしまった公爵令嬢リーゼは、牢番に助け出されて見知らぬ男に託された。 表紙女性イラストはしろ様(SKIMA)、背景はくらうど職人様(イラストAC)、馬上の人物はシルエットACさんよりお借りしています。 小説家になろうさんにも投稿しています。

絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので

ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。 しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。 異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。 異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。 公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。 『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。 更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。 だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。 ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。 モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて―― 奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。 異世界、魔法のある世界です。 色々ゆるゆるです。

【コミカライズ決定】婚約破棄され辺境伯との婚姻を命じられましたが、私の初恋の人はその義父です

灰銀猫
恋愛
両親と妹にはいない者として扱われながらも、王子の婚約者の肩書のお陰で何とか暮らしていたアレクシア。 顔だけの婚約者を実妹に奪われ、顔も性格も醜いと噂の辺境伯との結婚を命じられる。 辺境に追いやられ、婚約者からは白い結婚を打診されるも、婚約も結婚もこりごりと思っていたアレクシアには好都合で、しかも婚約者の義父は初恋の相手だった。 王都にいた時よりも好待遇で意外にも快適な日々を送る事に…でも、厄介事は向こうからやってきて… 婚約破棄物を書いてみたくなったので、書いてみました。 ありがちな内容ですが、よろしくお願いします。 設定は緩いしご都合主義です。難しく考えずにお読みいただけると嬉しいです。 他サイトでも掲載しています。 コミカライズ決定しました。申し訳ございませんが配信開始後は削除いたします。

婚約者様は大変お素敵でございます

ましろ
恋愛
私シェリーが婚約したのは16の頃。相手はまだ13歳のベンジャミン様。当時の彼は、声変わりすらしていない天使の様に美しく可愛らしい少年だった。 あれから2年。天使様は素敵な男性へと成長した。彼が18歳になり学園を卒業したら結婚する。 それまで、侯爵家で花嫁修業としてお父上であるカーティス様から仕事を学びながら、嫁ぐ日を指折り数えて待っていた── 設定はゆるゆるご都合主義です。

処理中です...