旦那様の様子がおかしいのでそろそろ離婚を切り出されるみたいです。

バナナマヨネーズ

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第二章⑦

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 ギネヴィアの口から零れた【童貞】という言葉に、俺は崩れ落ちそうになった。
 だけど、俺の勘が告げたんだ。
 ここは退いてはいけないと。このまま格好構悪くても攻めることが最善策だと、そう告げていた。
 恥ずかしさも、男としての沽券もどうだっていい。
 ギネヴィアの心を手に入れるには、よくわからないが今しかないように見えたのだ。
 
「ああ、童貞だ!! ギネヴィアが俺と寝てくれなければ俺は死ぬまで童貞だ!!」

 俺が童貞と言えば言うほどギネヴィアの顔が赤くなっていった。
 
「俺の童貞は、ギネヴィアに貰って欲しいんだ!!」

「まって! まってぇ!! だって…………、今まで夜に……」 

 そこまで言われた俺はピンときた。
 
「何度か、ダンたちと飲みにはいった。だが、寝てない! ダンたちに聞いてくれてもいい」

「き……聞けるわけ無いでしょう!!」

「俺は、清い体だ! 酒を飲んで、女に誘われたことは数えきれないほどあるが、寝たことはただの一度もない! ここまで来たら正直に言う。俺は、今までギネヴィアでしかしたことがない!」

「ふえぇ? ちょっ! な……ななな……」

「初めて性を自覚したときもギネヴィアが切っ掛けでむせ―――」

「きゃーーーーーーー!! だめぇーーーーーー! それ以上は言わないでぇ―――――!!」

 そう言って、全身を赤くさせたギネヴィアが叫んでいた。
 こうなったら、洗いざらい話す気になっていた俺は、それでも構わずに話を続けていた。
 
「それから、ギネヴィアのことを考えながらいつもして―――」

「やめて!! 分かったから! もうわかったからぁ!! 許してっ! もう許してぇ―――!!」

 そう言うギネヴィアは、ぐったりと横を向いてしまった。
 弱々しくさらされた首筋から甘い香りが漂う。
 よく考えると、結構不味い構図だな……。
 
 薄い胸を激しく上下させて疲れ切った様子のギネヴィアを見た俺は、彼女の上からどいていた。
 そして、彼女を起こしてぎゅっと抱きしめる格好で最後の追い打ちに出た。
 
「ギネヴィアを愛しているんだ。もし、ギネヴィアに……好きな……おとこ……が出来ても……殺さずに……我慢する……。だから、俺の気持ちを否定しないでくれ」

「もう……。どうしてよ……。なんで……」

「どうしようもない。俺は、ギネヴィアが好きなんだ。もし、俺から逃げ出したいというなら、俺を殺してくれ」

「なんで……」

「好きな気持ちは止められないから。なら心臓を止めるしかない。そうだろ?」

「……バカ……。アルトラーディのお馬鹿……」

「!!!!」

 初めてあった時以来に名前を呼ばれた……。
 今まで、ギネヴィアは常に俺のことを【旦那様】と呼んでいた。
 それが、名前で……。しかも敬称もなく……。
 嬉しい! 名前を呼ばれた。たったそれだけのことなのに、嬉しくて仕方なかった。
 
「ギネヴィア。好き。好きだ。愛してる。もっと俺の名前を呼んでくれ。俺に微笑みかけてくれ……」

 俺が縋る様にそう言うと、ギネヴィアは観念したかのようにその身を俺にゆだねて、体の力を抜いて俺の求めていたその言葉を口にしてくれた。
 
「アルトラーディ……」

「ああ。ギネヴィア。もっと」

「アルトラーディ。アルトラーディ!!」

 俺の名前を呼びながら、ギネヴィアが俺の服をぎゅっと掴んで俺の胸に顔を埋めた。
 張り裂けそうなほど心臓が鳴っていること……、きっと知られてしまったな……。
 だけど、俺がどれほどギネヴィアのことが好きなのか知ってほしい。

「ギネヴィア……。キスしたい」

「……」

「お願いだ。また間違ってしまわないように、ギネヴィアの気持ちをちゃんと教えて欲しい。嫌なら俺のこと突きとばして。そうじゃないと、いいって、勘違いしてしまう」

「……」

「了承って受け取ってもいいのかな?」

「…………め」

「え?」

「だめ……。駄目なの……。だから、わたしの話を聞いて、それでもわたしへの気持ちが変わらなかったら……」

 そう言って、俺を見上げたギネヴィアの瞳には何かを覚悟したような、そんな強い意志を感じた。
 
「分かった。でも、話を聞いても俺の気持ちは変わらないよ。それだけは自信がある」

「それじゃ……。明日、公爵城に戻ったらちゃんと全部話すわ……」

「明日?」

「ごめんなさい。どう話していいのか、少し時間が欲しいの。すごく長い話になるから……」

「ああ。分かった。ゆっくりでいいよ。それじゃ、もうすっかり日も暮れてしまったし、宿に戻ろうか」

「ええ」

 こうして、宿に戻った俺だったが、目の前の一つしかないベッドを前に立ちすくんでしまった。
 だが、色々と疲れさせてしまったギネヴィアは、眠たげに俺を誘うのだ。
 
「旦那様……。寝ましょう……。ほら、おいで」

 その夜、日が昇るまで隣でスヤスヤと眠るギネヴィアの可愛い寝息を聞きながら、眠れぬ夜を過ごしたが、数年ぶりに一つのベッドで眠れる幸せを噛み締める俺がいたのは言うまでもなかった。



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