5 / 36
第一章④
しおりを挟む
現在、わたしの教育のおかげ……、いいえ、違うわね。
旦那様の努力の賜物で、立派な男性に成長したアルトラーディ。
誰が見ても美麗! 筋肉! 華美! 筋肉!! の美しすぎる姿に成長を遂げていたわ。
艶やかな黒髪。キリリとした形のいい眉。高い鼻梁。形のいい薄い唇。剣士としても優秀な旦那様は、程よく付いた筋肉が最高にセクシーで、すべての女性を魅了することでしょうね。
お声だって、低音の甘く色気がダダ洩れで、耳元でささやかれた日には腰が砕けてしまう。
涼やかな切れ長の目元、宝石のように輝くルビーのような美しい瞳。
まさに、美の結晶のごとき旦那様!!
そして、その隣に並ぶわたし……。
貧相オブ貧相!!
ははっ!!
結婚当初は、わたしよりも小さかった旦那様だったけれど、衣食住の改善でみるみるうちに年相応に育ち、五歳差の年齢設定だったにもかかわらず、すぐにわたしの方が年下に見られるようになってしまったわ。
結婚して十年だった今は……。
完全に旦那様の妻ではなく妹のような見目になってしまったわ……。
高身長の旦那様の隣に並ぶと、頭二つ分は背が低いわたしは、知らない人が見れば妹のような存在に見えてしまうことでしょうね。
顔立ちも幼いころのままで、当然胸もペタンよ。
どうせわたしなんてロリババアよ!!
白髪と紫色の瞳の所為もあって、ババア感マシマシよ!!
だからなのか、最近は旦那様に介護されているような気分になってしまうのよね。
身長差の所為で歩く歩幅が違いすぎて……。それを見かねた旦那様に抱っこされてしまうし、食事だって、喉に食べ物を詰まらす老人を介護するがごとく、旦那様が小さく切った肉や野菜を口元に運ばれてしまう始末。
ふぇぇ……。介護にはまだ早いってば旦那様。
だけど、最近の旦那様の様子がどうにもおかしい。
まぁ、今までも様子がおかしいことなんて数えきれないほどあったけれど。
それに輪をかけておかしいのよね。
顔を赤らめて、瞳を潤ませて、何かを言いたげな……。
あっ……。
そうか、そういうことね。
それなら決断は早い方がいいわね。
必要な書類にサインをしたわたしは、騎士団の訓練所にいるはずの旦那様のもとに向かった。
訓練所には、旦那様の他にも数人の騎士たちがいたのだけれど……。
おかしいの。何故か全員が車座になって頭を突き合わせるようにしてひそひそとしていたのよ。
駄目だとは思いつつも、無意識のうちにわたしは気配を魔術で遮断したうえで忍び足で旦那様たちの側に近づいていた。
「閣下、そこは正直に言った方がいいですって」
「いやいや、ストレートすぎても女性に嫌がられますよ。そういった雰囲気づくりをしたうえでですね」
「閣下……。ポンコツ。拗らせすぎ」
「お……。お前たち! 俺だって好きでこうなったんじゃない! これは惚れた弱みと言うか……。なぁ、俺たち相思相愛に見えるだろ?」
「まぁ……。可もなく不可もなく?」
「同感です」
「右に同じ」
なるほど……。やっぱりそうなのね。旦那様にも春が来たということで間違いないわね。
でも、お相手は?
公爵城に勤める者は現在既婚者のみのはず……。
あの清廉潔白な旦那様が、不貞を働くなんて絶対にないから除外するとして……。
心当たりは数人ね。
部下たちに何度か連れて行かれた食堂の看板娘。
取引先の商会のご息女たち。
食堂の看板娘は会ったことがないから分からないけれど、取引先の紹介のご息女たちには何度か会ったことがあったわ。
旦那様と年頃も違い可愛らしいお嬢さんたち。
旦那様と並んだ姿を想像して……なんだか胸がモヤモヤした。
まるで、大切に育てた息子を嫁にとられる母親のような、そんな心境ね……。
ううん。決めたじゃない。わたしは、旦那様の幸せを第一に考えるって。
旦那様が幸せならわたしは最高にハッピーなのよ。
だから大丈夫……。あれ? 何が大丈夫なんだろう?
うぅん。なんだか胸のモヤモヤがムカムカに進化したわ。
うん。これはきっと、お昼に食べ過ぎてしまったのよ。それしかないわ。
旦那様の努力の賜物で、立派な男性に成長したアルトラーディ。
誰が見ても美麗! 筋肉! 華美! 筋肉!! の美しすぎる姿に成長を遂げていたわ。
艶やかな黒髪。キリリとした形のいい眉。高い鼻梁。形のいい薄い唇。剣士としても優秀な旦那様は、程よく付いた筋肉が最高にセクシーで、すべての女性を魅了することでしょうね。
お声だって、低音の甘く色気がダダ洩れで、耳元でささやかれた日には腰が砕けてしまう。
涼やかな切れ長の目元、宝石のように輝くルビーのような美しい瞳。
まさに、美の結晶のごとき旦那様!!
そして、その隣に並ぶわたし……。
貧相オブ貧相!!
ははっ!!
結婚当初は、わたしよりも小さかった旦那様だったけれど、衣食住の改善でみるみるうちに年相応に育ち、五歳差の年齢設定だったにもかかわらず、すぐにわたしの方が年下に見られるようになってしまったわ。
結婚して十年だった今は……。
完全に旦那様の妻ではなく妹のような見目になってしまったわ……。
高身長の旦那様の隣に並ぶと、頭二つ分は背が低いわたしは、知らない人が見れば妹のような存在に見えてしまうことでしょうね。
顔立ちも幼いころのままで、当然胸もペタンよ。
どうせわたしなんてロリババアよ!!
白髪と紫色の瞳の所為もあって、ババア感マシマシよ!!
だからなのか、最近は旦那様に介護されているような気分になってしまうのよね。
身長差の所為で歩く歩幅が違いすぎて……。それを見かねた旦那様に抱っこされてしまうし、食事だって、喉に食べ物を詰まらす老人を介護するがごとく、旦那様が小さく切った肉や野菜を口元に運ばれてしまう始末。
ふぇぇ……。介護にはまだ早いってば旦那様。
だけど、最近の旦那様の様子がどうにもおかしい。
まぁ、今までも様子がおかしいことなんて数えきれないほどあったけれど。
それに輪をかけておかしいのよね。
顔を赤らめて、瞳を潤ませて、何かを言いたげな……。
あっ……。
そうか、そういうことね。
それなら決断は早い方がいいわね。
必要な書類にサインをしたわたしは、騎士団の訓練所にいるはずの旦那様のもとに向かった。
訓練所には、旦那様の他にも数人の騎士たちがいたのだけれど……。
おかしいの。何故か全員が車座になって頭を突き合わせるようにしてひそひそとしていたのよ。
駄目だとは思いつつも、無意識のうちにわたしは気配を魔術で遮断したうえで忍び足で旦那様たちの側に近づいていた。
「閣下、そこは正直に言った方がいいですって」
「いやいや、ストレートすぎても女性に嫌がられますよ。そういった雰囲気づくりをしたうえでですね」
「閣下……。ポンコツ。拗らせすぎ」
「お……。お前たち! 俺だって好きでこうなったんじゃない! これは惚れた弱みと言うか……。なぁ、俺たち相思相愛に見えるだろ?」
「まぁ……。可もなく不可もなく?」
「同感です」
「右に同じ」
なるほど……。やっぱりそうなのね。旦那様にも春が来たということで間違いないわね。
でも、お相手は?
公爵城に勤める者は現在既婚者のみのはず……。
あの清廉潔白な旦那様が、不貞を働くなんて絶対にないから除外するとして……。
心当たりは数人ね。
部下たちに何度か連れて行かれた食堂の看板娘。
取引先の商会のご息女たち。
食堂の看板娘は会ったことがないから分からないけれど、取引先の紹介のご息女たちには何度か会ったことがあったわ。
旦那様と年頃も違い可愛らしいお嬢さんたち。
旦那様と並んだ姿を想像して……なんだか胸がモヤモヤした。
まるで、大切に育てた息子を嫁にとられる母親のような、そんな心境ね……。
ううん。決めたじゃない。わたしは、旦那様の幸せを第一に考えるって。
旦那様が幸せならわたしは最高にハッピーなのよ。
だから大丈夫……。あれ? 何が大丈夫なんだろう?
うぅん。なんだか胸のモヤモヤがムカムカに進化したわ。
うん。これはきっと、お昼に食べ過ぎてしまったのよ。それしかないわ。
9
あなたにおすすめの小説
君を愛す気はない?どうぞご自由に!あなたがいない場所へ行きます。
みみぢあん
恋愛
貧乏なタムワース男爵家令嬢のマリエルは、初恋の騎士セイン・ガルフェルト侯爵の部下、ギリス・モリダールと結婚し初夜を迎えようとするが… 夫ギリスの暴言に耐えられず、マリエルは神殿へ逃げこんだ。
マリエルは身分違いで告白をできなくても、セインを愛する自分が、他の男性と結婚するのは間違いだと、自立への道をあゆもうとする。
そんなマリエルをセインは心配し… マリエルは愛するセインの優しさに苦悩する。
※ざまぁ系メインのお話ではありません、ご注意を😓
【完結】婚約者を譲れと言うなら譲ります。私が欲しいのはアナタの婚約者なので。
海野凛久
恋愛
【書籍絶賛発売中】
クラリンス侯爵家の長女・マリーアンネは、幼いころから王太子の婚約者と定められ、育てられてきた。
しかしそんなある日、とあるパーティーで、妹から婚約者の地位を譲るように迫られる。
失意に打ちひしがれるかと思われたマリーアンネだったが――
これは、初恋を実らせようと奮闘する、とある令嬢の物語――。
※第14回恋愛小説大賞で特別賞頂きました!応援くださった皆様、ありがとうございました!
※主人公の名前を『マリ』から『マリーアンネ』へ変更しました。
戦場から帰らぬ夫は、隣国の姫君に恋文を送っていました
Mag_Mel
恋愛
しばらく床に臥せていたエルマが久方ぶりに参加した祝宴で、隣国の姫君ルーシアは戦地にいるはずの夫ジェイミーの名を口にした。
「彼から恋文をもらっていますの」。
二年もの間、自分には便りひとつ届かなかったのに?
真実を確かめるため、エルマは姫君の茶会へと足を運ぶ。
そこで待っていたのは「身を引いて欲しい」と別れを迫る、ルーシアの取り巻きたちだった。
※小説家になろう様にも投稿しています
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
婚約者を妹に譲ったら、婚約者の兄に溺愛された
みみぢあん
恋愛
結婚式がまじかに迫ったジュリーは、幼馴染の婚約者ジョナサンと妹が裏庭で抱き合う姿を目撃する。 それがきっかけで婚約は解消され、妹と元婚約者が結婚することとなった。 落ち込むジュリーのもとへ元婚約者の兄、ファゼリー伯爵エドガーが謝罪をしに訪れた。 もう1人の幼馴染と再会し、ジュリーは子供の頃の初恋を思い出す。
大人になった2人は……
あなたに嘘を一つ、つきました
小蝶
恋愛
ユカリナは夫ディランと政略結婚して5年がたつ。まだまだ戦乱の世にあるこの国の騎士である夫は、今日も戦地で命をかけて戦っているはずだった。彼が戦地に赴いて3年。まだ戦争は終わっていないが、勝利と言う戦況が見えてきたと噂される頃、夫は帰って来た。隣に可愛らしい女性をつれて。そして私には何も告げぬまま、3日後には結婚式を挙げた。第2夫人となったシェリーを寵愛する夫。だから、私は愛するあなたに嘘を一つ、つきました…
最後の方にしか主人公目線がない迷作となりました。読みづらかったらご指摘ください。今さらどうにもなりませんが、努力します(`・ω・́)ゞ
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる