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15 思いが通じ合う喜びと恥ずかしさ
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甘いキスから解放されたとき、ティーゼリラはレインの言っていた「どんなに奥手な方でも、男性は男性なのよ」という言葉の意味がなんとなく理解できていた。
今回はキスだけで済んだが、この次に起こることを想像して悶絶しそうになっていた。
それでも、ディーディラインに求められればきっとそれがどんなに恥ずかしいことでも受け入れてしまうだろうなと思うティーゼリラがいた。
お互いに何もい合わず、服越しの体温を感じているとディーディラインが名残惜しそうに口を開いた。
「そろそろ夕餉の時間ですね……。一度お部屋にお送りしますから、身支度を整えた後に向かいましょう」
そういわれたティーゼリラは、このままでも問題ないと一瞬思ったが、一度顔を洗った方がよさそうだと考え、それが無意識に口に出ていた。
「そうね。ディーのキスで唇がふやけるかと思ったし、こんな顔をディー以外に見られるのは恥ずかしいかも……」
不意打ちのようなティーゼリラの言葉に、「ティーゼリラ様が可愛すぎてキスがやめられなくてごめんなさい」などと心の中で思いつつも、それを表情に出さないように顔を引き締めたディーディラインは、その態勢のまま立ち上がった。
横抱きにされているティーゼリラは、「きゃっ」と小さな悲鳴を上げてぎゅっとディーディラインにしがみつく。
「ディー、わたし、自分で……」
「歩けますか?」
自分で歩けると言おうとして、腰が砕けて歩けなさそうなことに気が付いたティーゼリラは、余りの恥ずかしさに全身を真っ赤に染めた後に、ぽすっと、ディーディラインの胸に身を委ねた。
部屋まで送ってもらう間、何故かすれ違う人がいないことにホッとしながらも、ティーゼリラはこれからのことについて頭を悩ませていた。
自室に着いたティーゼリラは、さっと顔を洗ってから鏡を見つめる。
少し唇が赤くなっているような気がして、恥ずかしくなる。
そっと唇に触れた後、先ほどまでの深い口づけを思い出してその場を転がりそうになるも何とか踏みとどまった。
両の頬を軽く叩いて自分に活を入れる。
姿見で全身を確認してから、部屋を出るとディーディラインがにこりと微笑みを向けてきて、ティーゼリラは、胸がドキドキして堪らなかった。
その日は、何を食べたのか分からないうちに食事が終わっていた。
ぼんやりとするティーゼリラの様子に、ソフィエラとアルティス以外は何があったのか察したが、特に何かを言うことはなかった。
翌日、珍しく父王から執務室に来るようにと指示を受けたティーゼリラは、約束の時間通りに執務室を訪れていた。
執務室には、父王の他に宰相とディーディラインの姿があった。
室内の面々から、これから何が起こるのかなんとなく察しの付いたティーゼリラは、瞳に力を込めて父王を見つめた。
そんなティーゼリラを見た父王は、苦笑いの表情でティーゼリラに座るように勧めた。
用意してあったお茶を一口飲んだ後に、父王は思いもかけないことを口にしたのだ。
「ティーゼリラ、結婚のことだが、ディーディラインが正式に宰相の座に就いた後でもいいかな?」
「えっ? 反対しないのですか?」
てっきり反対されるものだと思っていたティーゼリラ呆気に取られるようにそう返していた。
それを見た父王は、面白くなさそうにではあるがきちんと答えを返していたのだ。
「ああ。もともと、こ奴が留学に行く前からそういう話は出ていたのだ。だが、こ奴はどうしても自信を付けてからでないと宰相職などつけないと我儘を言ってな……」
そんな前から、ディーディラインとの仲を認められていたことを知り、後ろに控えているディーディラインを見つめると、恥ずかしそうな表情になっていた。
父王は付け加えるようにさらに言ったのだ。
「ティーゼリラは知らないと思うが、こ奴からティーゼリラと結婚したいと熱烈にアピールされていてなぁ。ティーゼリラもこ奴のことを好いていたようだったし、もともと、何れは宰相として起用することも考えていたのだから、反対する理由はないんだよ」
まさか、ディーディラインから父王に結婚の申し込みをしていたことなど知りもしなかったティーゼリラは、嬉しさから後ろにいるディーディラインに抱き着いていた。
それを見た父王も宰相も柔らかい笑みで受け入れていたが、ティーゼリラのうっかり発言に慌てて言葉を発していた。
「ディー! わたしたち結婚できるなんて嬉しい! それなら、キスの先に進んでも大丈夫ね!」
「ちょっ!! ティーゼリラ? そ……、駄目だからな? 婚儀が済むまでは、ティーゼリラに手出しは許さんぞディーディライン!!」
慌てふためく父王を他所に、ティーゼリラは、ディーディラインにさらにぎゅっと抱き着く。
嬉しそうに微笑むディーディラインもぎゅっとティーゼリラを愛おし気に抱きしめ返す。
「はい。一生大切にいたします。私のティーゼリラ様」
「うん。ディー大好きよ!」
「はい。私もです」
全く周囲が見えていない二人に対して、父王を慰めるように宰相はぽつりと言ったのだ。
「陛下……、できるだけ引継ぎは時間をかけますので……、どうかお心の準備を……」
「そ、そんな……。やっぱり駄目だ! 私の愛娘が~~!」
その後、なんだかんだと時間はかかったものの、ティーゼリラとディーディラインの結婚式は盛大に行われ、国中が知ることとなるのだ。
第二王女と宰相がお互いを心から好きあっていることを。
そして、その仲睦まじい姿は、微笑ましくもあり、見ていて恥ずかしくもなるほどでもあった。それは、お互いがお互いを心から愛し合っていることが一目見て分かるほどだったからだ。
『引き籠りでニートなプリンセスは地味でデブな幼馴染に恋をする?』 おわり
今回はキスだけで済んだが、この次に起こることを想像して悶絶しそうになっていた。
それでも、ディーディラインに求められればきっとそれがどんなに恥ずかしいことでも受け入れてしまうだろうなと思うティーゼリラがいた。
お互いに何もい合わず、服越しの体温を感じているとディーディラインが名残惜しそうに口を開いた。
「そろそろ夕餉の時間ですね……。一度お部屋にお送りしますから、身支度を整えた後に向かいましょう」
そういわれたティーゼリラは、このままでも問題ないと一瞬思ったが、一度顔を洗った方がよさそうだと考え、それが無意識に口に出ていた。
「そうね。ディーのキスで唇がふやけるかと思ったし、こんな顔をディー以外に見られるのは恥ずかしいかも……」
不意打ちのようなティーゼリラの言葉に、「ティーゼリラ様が可愛すぎてキスがやめられなくてごめんなさい」などと心の中で思いつつも、それを表情に出さないように顔を引き締めたディーディラインは、その態勢のまま立ち上がった。
横抱きにされているティーゼリラは、「きゃっ」と小さな悲鳴を上げてぎゅっとディーディラインにしがみつく。
「ディー、わたし、自分で……」
「歩けますか?」
自分で歩けると言おうとして、腰が砕けて歩けなさそうなことに気が付いたティーゼリラは、余りの恥ずかしさに全身を真っ赤に染めた後に、ぽすっと、ディーディラインの胸に身を委ねた。
部屋まで送ってもらう間、何故かすれ違う人がいないことにホッとしながらも、ティーゼリラはこれからのことについて頭を悩ませていた。
自室に着いたティーゼリラは、さっと顔を洗ってから鏡を見つめる。
少し唇が赤くなっているような気がして、恥ずかしくなる。
そっと唇に触れた後、先ほどまでの深い口づけを思い出してその場を転がりそうになるも何とか踏みとどまった。
両の頬を軽く叩いて自分に活を入れる。
姿見で全身を確認してから、部屋を出るとディーディラインがにこりと微笑みを向けてきて、ティーゼリラは、胸がドキドキして堪らなかった。
その日は、何を食べたのか分からないうちに食事が終わっていた。
ぼんやりとするティーゼリラの様子に、ソフィエラとアルティス以外は何があったのか察したが、特に何かを言うことはなかった。
翌日、珍しく父王から執務室に来るようにと指示を受けたティーゼリラは、約束の時間通りに執務室を訪れていた。
執務室には、父王の他に宰相とディーディラインの姿があった。
室内の面々から、これから何が起こるのかなんとなく察しの付いたティーゼリラは、瞳に力を込めて父王を見つめた。
そんなティーゼリラを見た父王は、苦笑いの表情でティーゼリラに座るように勧めた。
用意してあったお茶を一口飲んだ後に、父王は思いもかけないことを口にしたのだ。
「ティーゼリラ、結婚のことだが、ディーディラインが正式に宰相の座に就いた後でもいいかな?」
「えっ? 反対しないのですか?」
てっきり反対されるものだと思っていたティーゼリラ呆気に取られるようにそう返していた。
それを見た父王は、面白くなさそうにではあるがきちんと答えを返していたのだ。
「ああ。もともと、こ奴が留学に行く前からそういう話は出ていたのだ。だが、こ奴はどうしても自信を付けてからでないと宰相職などつけないと我儘を言ってな……」
そんな前から、ディーディラインとの仲を認められていたことを知り、後ろに控えているディーディラインを見つめると、恥ずかしそうな表情になっていた。
父王は付け加えるようにさらに言ったのだ。
「ティーゼリラは知らないと思うが、こ奴からティーゼリラと結婚したいと熱烈にアピールされていてなぁ。ティーゼリラもこ奴のことを好いていたようだったし、もともと、何れは宰相として起用することも考えていたのだから、反対する理由はないんだよ」
まさか、ディーディラインから父王に結婚の申し込みをしていたことなど知りもしなかったティーゼリラは、嬉しさから後ろにいるディーディラインに抱き着いていた。
それを見た父王も宰相も柔らかい笑みで受け入れていたが、ティーゼリラのうっかり発言に慌てて言葉を発していた。
「ディー! わたしたち結婚できるなんて嬉しい! それなら、キスの先に進んでも大丈夫ね!」
「ちょっ!! ティーゼリラ? そ……、駄目だからな? 婚儀が済むまでは、ティーゼリラに手出しは許さんぞディーディライン!!」
慌てふためく父王を他所に、ティーゼリラは、ディーディラインにさらにぎゅっと抱き着く。
嬉しそうに微笑むディーディラインもぎゅっとティーゼリラを愛おし気に抱きしめ返す。
「はい。一生大切にいたします。私のティーゼリラ様」
「うん。ディー大好きよ!」
「はい。私もです」
全く周囲が見えていない二人に対して、父王を慰めるように宰相はぽつりと言ったのだ。
「陛下……、できるだけ引継ぎは時間をかけますので……、どうかお心の準備を……」
「そ、そんな……。やっぱり駄目だ! 私の愛娘が~~!」
その後、なんだかんだと時間はかかったものの、ティーゼリラとディーディラインの結婚式は盛大に行われ、国中が知ることとなるのだ。
第二王女と宰相がお互いを心から好きあっていることを。
そして、その仲睦まじい姿は、微笑ましくもあり、見ていて恥ずかしくもなるほどでもあった。それは、お互いがお互いを心から愛し合っていることが一目見て分かるほどだったからだ。
『引き籠りでニートなプリンセスは地味でデブな幼馴染に恋をする?』 おわり
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