上 下
12 / 19

うんうん。責任取ってね。好きスキィ

しおりを挟む
 ジオラルドが脳内に直接語りかけてきてから、ダンジョンでの過ごし方が少し変わっていた。
 子狼だけど、ジオラルドはとても賢くて、いろいろなことを教えてくれた。
 ここが、オウラル王国とジルニトラ王国の間に存在するダンジョンだということ。
 今いる場所が、そのダンジョンの最下層だということ。
 ここを出るには、上層に向かうか、ダンジョンボスを攻略するかのどちらかだということ。
 ジオラルドからダンジョンを抜ける方法を聞いた私は即座に上層行きを提案していた。
 
「ボス攻略なんて、命がいくつあっても足りないからパスで。地道に上層に向かった方がいいと思う」

『ああ。僕もそう思う。僕たち二人ともまともに戦えないしね』

「異議あり!!」

『はいどうぞ』

「ジオラルドは、美味しいお肉を狩ってくれるでしょ? 実は、めっちゃ強い! ってことは?」

『ないない。それだったら、こんなとこに居ないよ。まぁ……。チヤが応援してくれればどうにかなるかもだけど』

「え? ないない」

『それがあり得るかもよ?』

 やっぱり……。ジオラルドのこと天才犬……じゃなくて天才狼だと思っていたけど、やっぱり獣ね。ふっ。私には何の力もないのよ?
 私が応援したからって、どうこうなる訳がないのよ。
 だから、私はやれやれって感じで、ジオラルドに言ってやったわ。
 
「そんな訳ないでしょ? 応援一つでどうにかなってるのなら、私はここにいないわ」

 私がそう言うと、ムッとしたような声でジオラルドは言うのよ。
 
『それはどうかな? 今までチヤのお陰でここまで生き残れたんだ。僕がご飯を狩れるのも、言葉を話せるのも、偶然安全エリアに行き当たるのも。全部、チヤのお陰なんだよ?』

「まさかぁ~。そんなに私のこと持ち上げても、ちゅーしかしてあげないわよ」

『ちょっ! キスは駄目だって言ってるだろうが!! 僕は、こう見えて……いや、見られてるけど、男なんだぞ! 簡単に唇を許すだなんてはしたないぞ! まぁ、チヤがそんなに僕にキスしたいなら、責任取らないでもない……』

「もぉ~。ジオラルドは可愛いなぁ。キスくらいで動揺しちゃってぇ~。それに責任って~。大げさねぇ。まぁ、ジオラルドが意外と初心なところが可愛いんだけど」

 そう言って、懲りない私はジオラルドの鼻先にキスをしまくる。
 ついでとばかりに、鼻先をかぷって噛んでみる。
 すると、子狼のくせにジオラルドは一端のことを言うのよね。
 うん。そこがかわゆい!!
 
『チヤ! 絶対に責任取ってやるからな!! だから、君は俺に惚れろ!!』

「きゃ~~、ジオラルド、かわいいぃ~。うんうん。責任取ってね。好きスキィ」

『くっ……全然本気にされていない。だが、チヤがそう言っていられるのも今のうちだ。僕が…………』

「ん? 僕がどうしたの?」

『何でもない。それよりも、ボスについてだけど、攻略する当てはある。だから、僕を信じて、チヤの力を貸してほしい』

 結構真剣そうな声でそう言ったジオラルドに私も掛けてみることにした。
 だって、今までジオラルドが起こしてきた奇跡を考えれば、ボス攻略も出来そうな気がするもんね。
 
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

自宅が全焼して女神様と同居する事になりました

皐月 遊
恋愛
如月陽太(きさらぎようた)は、地元を離れてごく普通に学園生活を送っていた。 そんなある日、公園で傘もささずに雨に濡れている同じ学校の生徒、柊渚咲(ひいらぎなぎさ)と出会う。 シャワーを貸そうと自宅へ行くと、なんとそこには黒煙が上がっていた。 「…貴方が住んでるアパートってあれですか?」 「…あぁ…絶賛燃えてる最中だな」 これは、そんな陽太の不幸から始まった、素直になれない2人の物語。

勇者パーティーから追放された魔法戦士ディックは何も知らない~追放した勇者パーティが裏で守り続けてくれていたことを僕は知らない~

うにたん
恋愛
幼馴染五人で構成された勇者パーティを追放されてしまった魔法戦士ディック。 追放を決断したやむを得ない勇者パーティの事情とは? 真の追放事情を知らない追放された魔法戦士ディックはこれからどうなるのか? 彼らが再度交わる時は来るのか? これは勇者パーティを追放された魔法戦士ディックに事情を知られない様に勇者パーティが裏でディックを守り続ける真の勇者の物語

【完結】お見合いに現れたのは、昨日一緒に食事をした上司でした

楠結衣
恋愛
王立医務局の調剤師として働くローズ。自分の仕事にやりがいを持っているが、行き遅れになることを家族から心配されて休日はお見合いする日々を過ごしている。 仕事量が多い連休明けは、なぜか上司のレオナルド様と二人きりで仕事をすることを不思議に思ったローズはレオナルドに質問しようとするとはぐらかされてしまう。さらに夕食を一緒にしようと誘われて……。 ◇表紙のイラストは、ありま氷炎さまに描いていただきました♪ ◇全三話予約投稿済みです

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

波間柏
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

そんなに聖女になりたいなら、譲ってあげますよ。私は疲れたので、やめさせてもらいます。

木山楽斗
恋愛
聖女であるシャルリナ・ラーファンは、その激務に嫌気が差していた。 朝早く起きて、日中必死に働いして、夜遅くに眠る。そんな大変な生活に、彼女は耐えられくなっていたのだ。 そんな彼女の元に、フェルムーナ・エルキアードという令嬢が訪ねて来た。彼女は、聖女になりたくて仕方ないらしい。 「そんなに聖女になりたいなら、譲ってあげると言っているんです」 「なっ……正気ですか?」 「正気ですよ」 最初は懐疑的だったフェルムーナを何とか説得して、シャルリナは無事に聖女をやめることができた。 こうして、自由の身になったシャルリナは、穏やかな生活を謳歌するのだった。 ※この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」にも掲載しています。 ※下記の関連作品を読むと、より楽しめると思います。

嫌われ貧乏令嬢と冷酷将軍

バナナマヨネーズ
恋愛
貧乏男爵令嬢のリリル・クロケットは、貴族たちから忌み嫌われていた。しかし、父と兄に心から大切にされていたことで、それを苦に思うことはなかった。そんなある日、隣国との戦争を勝利で収めた祝いの宴で事件は起こった。軍を率いて王国を勝利に導いた将軍、フェデュイ・シュタット侯爵がリリルの身を褒美として求めてきたのだ。これは、勘違いに勘違いを重ねてしまうリリルが、恋を知り愛に気が付き、幸せになるまでの物語。 全11話

転生したので猫被ってたら気がつけば逆ハーレムを築いてました

市森 唯
恋愛
前世では極々平凡ながらも良くも悪くもそれなりな人生を送っていた私。 ……しかしある日突然キラキラとしたファンタジー要素満載の異世界へ転生してしまう。 それも平凡とは程遠い美少女に!!しかも貴族?!私中身は超絶平凡な一般人ですけど?! 上手くやっていけるわけ……あれ?意外と上手く猫被れてる? このままやっていけるんじゃ……へ?婚約者?社交界?いや、やっぱり無理です!! ※小説家になろう様でも投稿しています

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...